「こんにちは!」
翌日に顔を見せたのは、『バイオリンの君』だった。

「こんにちは…」

「どうしたの?元気ないね…」

「そんなことないですよ…それに、そろそろ退院出来そうです」

「そうなんだ!良かったね!じゃ、三洲くんに報告しないと!」

退院という言葉を告げると、飛び跳ねるほど喜んでくれる。

それと共に、報告を…そう言う先輩。
聞いてないの?

「あの…オレ、三洲先輩に引っ越すことを伝えたんです」

「え?!」

その言葉に『仰天』って言葉がぴったりなほど驚く。

「オレみたいに、足を引っ張る存在が側にいると、迷惑かけちゃうし…オレもなんか、何も出来ないことがストレスになりそうだし…
だから…白紙に…って」

「ダメだよ!!」

今まで聞いたことが無いほどの低音で
ダメだと否定する。

「でも…」

「でもじゃない!もう、なんなんだよ…
三洲くんは何て言ったの?」

「『…わかった…ただ、俺が居ないときに頼む。さすがに手伝えるほど余裕はないから…』って。了承してくれました」

「はぁ…」

体全部の空気を吐き出したのかと言うくらいのため息…

「あ、あの…」

「もう、ほんとに…あのね!ぼくは認めないから!ここに今から三洲くんを呼び出すからね!もしかしたら遅くなるも知れないけど、
それでもぼくは
このままっ、ここでっ、
彼が来るのを待つから!
それまで、白紙のことは一旦ストップだよ!
わかった?」

この人ってこんなにハッキリとものを言う人だったんだ…。

でも、それはオレと彼を心配するがあまりのもので…

「はい…わかりました…」

オレは、後輩と言う立場に位置し
もう一人の、叱咤されるであろう人物を待つことになった。