「三洲くん、聞きたいことがあるんだ…」
ぼくは、病院の帰りに三洲くんに電話をかけて、落ち合うことにした。
「どうした、葉山…困りごとか?」
ぼくよりもずっと悩んでいるのは三洲くんなのに…
それでもぼくの悩みを聞こうとしてくれる。
「あのね、悩みと言うか…ちょっと確認したくて…」
「何を?あまり回りくどく言わず、ハッキリと聞いてくれないか」
そう、三洲くんはこういう人。
時間を無駄に使わない…
だからきっと、未来を見ているのかも…
「あ、あのね…真行寺くんって、昔彼女が居たことあるの?」
あまりにも直球だったかな…
それでも聞かないで居られなかった…
「いや…俺が知っている限りは居なかったはずだ。だが、真行寺が言ってない可能性もあるから、言いきることは出来ないな…それがどうかしたのか?」
そっか…真行寺くんが三洲くんに隠し事をするとは思えない…でも…あれはどう見ても女の子だった…しかも、あんなに、切なく泣くほどに大事にしていたもの。
「ううん…変なこと聞いてごめんね…ちょっと気になったから…」
「変なヤツだな…それが聞きたかったのか?慌てて呼んだわりに、呆気ないものだったな…」
呆気ないなんて、失礼な!
ぼくはね、キミのために…
でも、これって余計なお世話なのかな…
「そうだね…ほんと、ごめん…」
よく考えてみれば、真行寺くんに彼女が過去に居たって…今は三洲くん一筋な訳だし…
「それより、今日行ってきたんだろ?」
それだよ…だからこんなことになってるんじなないか…
「うん、行ってきた。あ、そうだ!屋上庭園を散歩してたよ。空気が美味しかったってさ!真行寺くんらしいよね…いきなり外の空気吸いに行くなんてさ」
「そうか…なら、退院間近ってことか…」
「え?記憶がそのままなのに?」
「葉山…お前はどうだった?」
「ぼく?」
「記憶を失くした後、ずっと病院に居た訳じゃないだろ?」
そう言われてみれば…でも、実はよく覚えないんだよね…。
気付けばコートを着せられて…
あの博物館に居たんだ。そして、ピースを埋めるかのように…ギイを思い出した。
ただ、事故のことだけは未だによく思い出せないでいる。
「うーん、よく覚えてないけど…偶然記憶が戻ったから…そのまま?みたいな…」
「そうか…一応真行寺は外的に問題がない。そして脳にも異常がみられないのであれば、病床を空け、通院という形になる。きっとそろそろ…その前に顔を見に行くよ…それで良いだろ?」
三洲くんは、休んでしまったことで
業務が溜まっていたらしい。
それでもデキル人だから、その仕事は完了。
それとは別に、どうやら持ち込まれたものがあるようで…
『すまない、葉山…。真行寺のところに行きたいんだが、時間が取れない…俺の分まで行ってくれないか…俺も頑張ってはみるが、中々…』
そう言って、まだ行けないでいるんだ。
「うん、きっと喜ぶよ!」
ぼくが言えるのは、結局それだけだった。