「タクミ、森田は誘ったのか?」

俺はタクミにハロウィンパーティに1年の森田を誘えと頼んでいた。

でも、一向にその返事が来ない。

再度、確認すれば

『声はかけたけど、なんか用事があって来れないって…』

こんな風に濁すのはタクミらしくない。
普通なら

《やっぱりダメだってさ。ぼくの誘い方が悪かったのかな…ごめんね》

そのくらい下に出る。
それが、
「なんか用事が…」
これは声をかけてないな…

せっかく良いアイデアだと思って企画したのに、これでは意味がない。
だから、俺も行動に出た。

ーーーーー
1年D組。

「あ、崎先輩!」

名前を知らない1年が声をかけてきた。

「ごめん、悪いけど森田くんを呼んでもらえるかな…」

その言葉で教室を覗くが

「すいません、教室には居ないようです。もしかしたら、あそこかな…」

「あそことは?」

「図書室です!」

あぁ、あそこね…

「ありがとうね、助かったよ」

頬を染める生徒を後ろに図書室に向かった。

そこは、あの本が置いてあるはずの場所。
もしかして、毎回探しに来てるのか?

「何か探してるのかい?」

後ろからそっと声をかけたのが悪かったのか、
梯子の足を踏み外しそうになる。
慌てて後ろから背を抑えて

「驚かせてごめんね…森田くん」

更に目を丸くして

「あ…あの…ぼくの名前…」

「知ってるよ、1年D組副級長の森田徹くん」

突然フルネームを言われあたふたする。
こういうところが、可愛いと言われるんだろうな…

「あの…ぼくに何か…」

「ここじゃ話しづらいから…少し外を歩こうか…」

渡り廊下を歩きながら話を持ち出す。

「あのね、実はハロウィンパーティをしようと思ってるんだ」

「…はい…」

「それでね、是非!キミに参加してもらいたいんだよ」

『是非』を強調し、参加を促す。
だが、流石に俺からの誘いに直ぐに乗るほど軽くはなく…

「ぼくなんか誘っても…」

いやいや、キミじゃないと意味がないんだよ…
でも、それを説明するわけには行かない。
どうしたもんか…

「あのね…キミって1年で一番可愛いって言われてるの知ってるかい?」

首を振りながら否定する。

「でも、事実なんだな…でね、高林がさ…自分とどっちが可愛いか確認したいんだと…」

「…それは、畏れ多いです…」

「だと思うけど、ここは高林のメンツも考えてよ。ちょっと顔を見せてくれると納得するだろうし…それに、大勢でパーティするわけじゃないから」

その言葉に顔を上げ

「何方がいらっしゃるんですか?」

そう確認してきた。
これは脈ありか?
あの本を探してたんだ…
それに、二人がすれ違うときは
見てないようで視線で追ってる。
その仕草が似てる二人。
少しくらい…アイツの為に…

「来るのは…高林、章三、タクミ、俺と、健志。それだけだよ」

「あの…ぼくが参加してご迷惑じゃ…」

ほぉ…断ることばかり言っていたのに
参加に向かったか。

「いや、全く!じゃ待ってるから!日程は決まり次第また報告に行くよ!…あ、教室だと目立っちゃうだろうから、また図書室に行く。あの場所に居れば直ぐにわかるからね」

そう言って後日、日時を伝えて当日を迎えた。

全ては上手く行った。
ただ一つの誤算を除いては…。

まさか、嫉妬で声をかけなかったとはな。
確かに言い方が悪かったのは認めるが…
可愛すぎだろ、タクミ!

そう、全ては健志のため。
そして、オレの自己満足のため。

ほんとうなら、繋いじゃいけない二人だと思った。
先が見えない健志…
未来ある森田。
でも、恋を知ったばかりの二人…
それも両思い。

自分だけが幸せなのが苦しくて…

1年から健志の頑張りを見てた俺は
その諸刃の剣を渡すことにした。

それをどう使うかは二人に任せ…
きっと上手く使ってくれる…そう願って。