控え室の場所は覚えていたから今度は二人で向かっていた。
ノックしようとした時にまたしても声が聞こえた。
「…だから、そんなこと城縞くんには関係ないよね…」
城縞?今、城縞って言ったか?
名前を聞いたら呑気に躊躇なんかしてられない。
《コンコンッ!》
さっきの月詠のように強目に音をだす。
耳がいい葉山は直ぐに返事をする。
「はい、今行きます!」
自分で扉を開けるという返事がきた。
扉を開けてホッとした顔を見せる。
「赤池くん!いらっしゃい!」
さっきも顔を見たのに、今初めて見たような台詞を言う葉山に
「おう、いい演奏だった」
僕もそれに合わせるのが賢明だと思った。
それに被せるように
「葉山くん、そちらは?」
城縞が僕を窺う。
「こちらは僕の大切な親友で赤池くんって言うんだ」
「初めまして、赤池です」
名前まで言う必要もないから、葉山の説明のまま自己紹介をした。
「親友ってこの間も居たよね、あのクールビューティの…」
きっと三洲のことだな。
「うん、みんな大事な人だよ。かけがえのない…ね」
そう言って僕にニコッと微笑む。
「葉山はほんとに人たらしだな…友達が居なかったって嘘じゃないか…お前に会いに来る人が絶えない。さっきもここに来るって奴がいたから捕まえて同行したら、野沢までいたし」
僕がいない間は野沢が居たのか。
三洲、手回しがいいな…。
「嘘じゃないよ…ね、赤池くん。僕に友達が出来たのは高校二年生になってからだよね?」
そんな説明必要なのか?
友達が居なかった自慢なんかいらないだろ…。
だが、嘘つき呼ばわりは可哀想だから教えてやる。
「あぁ、葉山は一年まで一匹狼だったな」
「もう、狼とか要らないから…。ほら、わかったでしょ?ぼく、嘘言ってないから。納得した?」
葉山が嘘じゃないことを証明できたと城縞に告げる。