「……葉山、大丈夫か?」
くちびるを震わせていた葉山は、だんだんと蒼白い顔になっていく。

小さく、
「……三洲くん、ごめんね…」

と聞こえるか聞こえないかのような小声で俺に謝罪を述べる。何に対してだ?

「謝らなくちゃいけないことが書いてあるのか?」
途端、その手紙を手の中で丸めポケットに無造作に突っ込む。
「おい葉山!謝るくらいなら見せろ!」
またこいつは一人で背負おうとしている!そう思った…
「お母さんが言ってただろ、俺も巻き込まれたって。だから俺に隠し事は無しだ!」
あまり強く言いたくは無かったが、何も知らないで《はいそうですか》と言えるほど間抜けではない。
すると横から
「私はあの時、託生の体の方が心配で、一枚目だけの記憶しか強く残ってなかったの‥
でもこの手紙を読み返して何であの時、嫌悪的な気持ちになったのか分かったのよ。
貴方たちもそのくらいわかるでしょ、一応偏差値の高い学校を出て三洲さんはお医者さんを目指してる程ですものね!」まるで嫌味のような物言いをする。
確かに、あの手紙を素直にそのまま読んでしまえば、間違いなく葉山が崎をその気にさせた…と受け取れる。…そして誰からも一目置かれていた人気者を手中に収めて骨抜きにし、まるで掌で転がしていたかのように。あまつさえ、庇うことで崎の逃げ道を塞ごうとしていた…とも受け取れる。
そして、俺たちを見て黒い気持ちになったというのは
同性同士の付き合いを疑ったからだろう。
あの時は、名乗るまでどちらが赤池か、わかってなかったしな。



何しろあの、面白い程のマニュアルペアレント…間違いなく真正面から受け止めたんだろう。



嘘で塗り固められたものを、こうまで信じるものかと笑いが出るほどだ。

しかし、今は母親の言葉より葉山の状態が気になる。



俺はポケットに突っ込まれた手紙を腕ごと引っ張り出した。