「どーだ、美味かったか」
口渡しで溶けたもの。
「‥凄く美味しかったッス!」
「それは良かった‥まぁ、お前の好物なら当然か‥」
「いつもと全然違う美味しさでした!それに、アラタさん糖分採ったせいか、少し顔色良くなってます!葉山さんに教えてもらって良かった!」
「なんでそこに葉山が出てくる」
ついぞ、気持ちが上がったものが
葉山の名前を聞いた途端に下を向く。
「朝、廊下ですれ違ったッス。そしたら、アラタさんが調子悪そうだって教えてくれて‥
で、食欲もなさそうでちょっと貧血気味みたいだって‥心配だったんですけど‥でも、部活休めなくって‥葉山さんが消灯まで生徒会室にいるらしいって言ってたの思い出してここに来たッス‥」
「なんで、お前を寄越す必要がある‥」
「葉山さん曰く、疲れももちろんだけど癒しの存在がないから元気ないんじゃないの?ちゃんと会えてる?って‥
そしたら、オレ‥アラタさんの邪魔になると思って最近ここに来てないなって‥」
「お前が栄養剤か?理解不能だ」
強がってみる‥
あぁ‥そうか‥
こいつに会えてないから味が分からなくなって食欲が落ちてたのか‥
自分が思ってるより体は正直だな‥
それを葉山は見抜いた訳だ‥
やっぱりアイツは侮れないな‥
ぼやっとしてるようで、ホントに芯を見てる‥
「じゃ、この袋がなくなるまでお前はここに通え」
「えっ?邪魔じゃないッスか?」
「今日みたいに静かにしてるなら構わない」
「じゃ、毎日口移し‥」
「‥‥来なくていいぞ‥」
ひとつ許すと、もうこれだ。
「えーっ!嫌です!来ます!口移しなくていいんで!これ、最初からバレンタインだったんです!むしろ今日のはイレギュラーで!嬉しいご褒美ありがとうございました!」
「‥じゃ、俺はまだ少し残るからお前はもう帰れ!」
「最後まで付き合いますよ、寮まで暗くて危ないんで」
業務を終え、寮までの帰り道‥
「今日の月は綺麗だな‥」
「‥え?でも少し雲かかってますよね‥」
「お前、少しは本を読め‥」
「どうして読書に繋がるんですか?」
「知らん!もうこの言葉は言わんからな!」
「‥えー、待ってくださいよーアラタさ~ん!」
足早に寮に向かう‥
何故あんなことを口走ったのか‥
これも葉山のせいか‥
あいつの素直さがウツッタカナ‥