映画版「イニシエーション・ラブ」 | キャバクラ嬢を口説く為の500の方法 すすきの恋愛論

映画版「イニシエーション・ラブ」

【ヒント出しすぎ説】

呑み屋やスナックでの話題のネタ作りのためによく映画やDVDを観る。というわけで『イニシエーション・ラブ』を観ました。



以下、壮絶なまでにネタバレします。

乾くるみの原作小説「イニシエーション・ラブ」を読んだことのある人に『今度、実写化するらしいよ』と言った場合に相手が必ずとるであろうリアクションは『イヤイヤイヤ、無理!絶対無理!』。

一応、どんな話かというと、鈴木夕樹という大学生が歯科助手をしている繭という女性と合コンで出会い、恋に落ち、つきあい始めるのだが、鈴木が社会人になって東京勤務になり遠距離恋愛になってしまい、やがて二人の心の距離も段々離れていって、ついには破局を迎えるというごくありがちな恋愛ストーリー。

特にこれといった面白いところは何もなく、『普通の恋愛小説』なのだがこの小説が話題になったのはラスト5行での大どんでん返し。浮気相手の女性が鈴木に向かって言うセリフ『どうしたの?たつや』である。

読者は混乱する。「たつやって誰?」

説明すると、この小説はSIDE-AとSIDE-Bに別れている。

SIDE-Aが鈴木夕樹が繭と出会い恋に落ちてつきあい始めるまでの物語。
SIDE-Bが鈴木が社会人になって遠距離恋愛になり破局するまでの物語。

なのだが、実はSIDE-AとSIDE-Bでは主人公の男性が異なる。SIDE-Bは鈴木夕樹ではなく鈴木たつやと繭の恋愛話し。しかもSIDE-AとSIDE-Bは続きではなく、同時進行なのだ。

つまり、繭は鈴木たつやと先に出会いつきあい始めるのだが、彼が東京勤務になり遠距離恋愛をしているうちに、友達に合コンに誘われ、鈴木夕樹に出会って、この男ともつきあいはじめたのだ。つまり、二股をしていたわけだ。

よーく小説を読み直してみると、ちょこちょこヒントがあるので納得するのだが、たいていの人はこの記述トリックに気づかないのでびっくりするという手法。繭は両方の彼を「たっくん」というあだ名で呼ぶし、SIDE-Bでも同僚は「鈴木君」「すーさん」と呼ぶので別人とは気づきにくい。かく言う私もストーリーが超つまんなくてダラダラ読んだんで気づきませんでした。

だから、これを映画にするというのは無理がある。

鈴木の顔をまったく映さないってわけにもいかない。では、この難題をどうしたか?というとこれがトンデモな力技だった。

いきなり、デブで髪がボサボサで眼鏡をかけたさえない男性が出てくるんだけど、これが鈴木夕樹。で、前田敦子が『髪も切って、眼鏡じゃなくてコンタクトにして、もっとオシャレな服装にした方がいいよ!』とか言うのね。鈴木夕樹も調子に乗って彼女の言うことを聞いてオシャレに目覚め、『よーし、君のためにもボクは頑張って痩せてかっこいい男になるぞー!』って誓うわけ。そして、画面が切り替わり、ジョギングしている松田翔太の姿が映し出される。履いている靴は繭に貰ったエアジョーダン。

つまり、オシャレしてダイエットしてかっこよくなった姿が松田翔太だというわけ。

但し、小説の場合はヒントはごく僅かなのだが、これを実際に映像にしちゃうとヒントがバレバレになっちゃうんですわ。

「そのワンピースは見たことあるぞ」「EXPO85の袋見えてるし」「おなかさすってるの写すかぁ?」とか、これは原作を知ってる先入観からなのかもしれませんが、原作知らない人でも途中でわかっちゃうんじゃないでしょうかね?

「あなたは必ず二度観る」ってのが製作会社の売り文句なのだが、映画では最後ご丁寧に解説映像が流れるんで、むしろ全カットしちゃった方がいいかも?

というかこの映画は原作知ってる人にすれば最大のトリックをどう描くか?という興味一点にしか魅力がなく、原作知らない人には「だから何?」的なコンテンツになっちゃったという感じです。

PCやスマホでも映画やドラマが観られる「イニシエーション・ラブ」