水の中。 -3ページ目

水の中。

海外小説のレビューと、創作を。

惑星コマールで暮らすエカテリン・ヴォルソワソンには悩みがある。
遺伝的な病気をかかえた夫のこと、夫が隠そうとするために医療検査を受けられない息子のこと。
憂鬱な日々の中、衛星の事故調査のために、伯父が連れてきた若者は、驚いたことに伯父と同じ聴聞卿だという。マイルズ・ヴォルコシガンというハンデキャップを背負った背の低い青年に、エカテリンは子をもつ母親として興味を覚えるのだが――


ミラー衛星衝突 上 (創元SF文庫)/ロイス・マクマスター・ビジョルド
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ミラー衛星衝突 下 (創元SF文庫)/ロイス・マクマスター・ビジョルド
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6年ぶりのシリーズ刊行だそうですが、
ビジョルド作品はファンタジーのアレとコレが出ていたので、不人気なわけもなく。やはり長期にわたるシリーズものは出版社にとって扱いが難しいのでしょうね(映画化ドラマ化、あるいは完結でもないかぎり再版もかけられそうにない→現時点では新規読者が獲得できない→よってどんどん部数が先細りに……)。
しかしまあ、わたくしなどもそうなのですが、何かのフェアで絶版分が出てきたところで、すでに「シリーズ6作目!」とかうたわれているのを見ると、読み手は購入意欲を無くしてしまうものですからねえ。あれですよ、一緒に苦労して結婚離婚再婚を5回繰り返すのはしょーがないと思えても、すでに5×の相手とケッコンするのはちょっとカンベンしてもらいたい……となるようなものですよ(例になってないか)!

そんなこんなの事情はさておき、本作です。

わたくしのおぼろげな記憶をたどると、「マイルズは低温蘇生後になんか後遺症があってー、後遺症が原因の事故で部下の足をぶったぎっておきながら、うそっこの報告書を書いちゃったんだよなー。それで軍を引退させられて、そのかわり顧問みたいな地位をもらったんじゃなかったっけ」。
そうでした、顧問みたいな地位、とは少々違いますが、「皇帝直属の聴聞卿」という、独立した権限を持つ、ちょー高位な情報部員。ええまあ、言ってみれば黄門様みたいなものですね! ←誠意のない説明……
聴聞卿となって活躍しているマイルズ30歳時点、惑星コマールでのテロのお話です。実際のところ事件についてはどーでもいい内容であり、そこに登場する女性・エカテリンとのロマンスがテーマとなっております。

しかしビジョルドはすごいですよね。
わたくしはですね、マイルズという多弁な主人公がうるさくて嫌いなくらいだったのですが、本作でのエカテリンの登場に、いつのまにかマイルズを応援したい気持ちに!
より詳しく申し上げると、読んでいる間中ずっと、「エカテリンがマイルズを認めてくれればいいのになー」「マイルズのこと好きになってくれればいいのになー」「いいのになー」と思い続けるはめになったわけですよ! なにこれ洗脳かしらコワイ!
しかし訳者さんの解説のなかに、ビジョルド本人が語っていたという「マイルズという複雑なキャラクターの相手には母親経験のある女性が必要だった(エカテリンは9歳の男の子のママなんです)」を知ると、なるほど考えぬかれたキャラクター造形だよなー。そこへこの描写力をもってすれば、やすやすと共感させられてしまうわけだわー、と感心しました。

いやー、それにしても本作のエカテリンはいいですねえ。
彼女はマイルズと同じく惑星バラヤーの伝統を重んじるヴォル階級(武士みたいなもの)の女性なのですが、それゆえに古風で控えめで自分を閉じ込めがち、しかしいざとなると命がけで戦ったりしてくれる、まさに理想の女性じゃないですか。いままでのマイルズの女性遍歴のなかで一番いいなあ! なんかもうめでたしめでたしな幸福感で、ココで終わってもいいような気がしてきました。




いやそんなこと言ってちゃダメか。シリーズ続刊のために応援させていただきます。そういうわけで自分なりに既刊の紹介など。




「戦士志願」マイルズの軍人デビュー! 口からでまかせで傭兵艦隊の指揮官へ!
「親愛なるクローン」傭兵艦隊の提督は自分じゃなくてクローンです!と言っちゃって……
「無限の境界」中編集。マイルズが若様として領地の田舎を訪れる「喪の山」で作品背景がよくわかりました。
「ヴォル・ゲーム」えーとマイルズがとばされた時の話でしたっけ?(聞くな)
「名誉のかけら」これはマイルズのパパママのなれそめ。
「バラヤー内乱」これは前作のつづきですね。マイルズ誕生直前のお話。
「天空の遺産」マイルズに戻って、セタガンダ帝国の皇宮のお話。平安時代みたいでしたねえ。
「ミラー・ダンス」上下巻。ここでマイルズの本当のクローン登場! 両親もマイルズもあずかり知らないところで利用される為だけに作られたクローンだったのですが……そうくるか! というマイルズらしい結論に。
「遺伝子の使命」邦題がいまひとつなので内容が思い出せなかった……そうか、アトスのイーサンか! エリ・クインが活躍する番外編。でもただマイルズが出てこないというだけで、とくに番外てこともなかったような。
「メモリー」上下巻。ここでもレビュー書いてますね。マイルズの転機となる作品。



おお、意外と少ないなあ。もっとあるような気がしていたのですが、これなら新規読者さんも収集可能なレベルだわ。
実際のところ、同宇宙を舞台にした作品は他に数冊あるのですが、マイルズの出てくるシリーズとしてはこんなところでしょうか。笑って泣かせて考えさせられる、世界中で愛されている痛快冒険活劇でございます。ぜひよろしく。


どうもごぶさたしております。



水の中。


なかなか日記を書く機会が、いえ書けるような日常が、いやそもそも書いてひとさまにお見せできるよーな心情がないもので、ついついここからも遠ざかりがちになっていたのですが……。
人によっては「あれこれ本音を書けばスッキリする」こともあるかと思うのですが、私の本音とかはホントに人としてどうよ……というカンジである為に、なかなかお話することができません。ので、いろいろと不義理をしてしまっているのですが、まあそれならそれで書けませんすみませんくらい言っておくべきかなーといまさらながらに出てきております。


自分でも進歩ないなーと思うのは、こういうところで。


他人さまにとっては私自身のことなどたいしたことではないし、煩わせることもないだろうと、いつも勝手に結論づけて黙り込んでしまうのですね。まあ要は自分を説明するのを面倒くさがってるだけなんじゃないかなーという無精者なわけですが



だってさー、ぶっちゃけ説明できるほどのマトモな自分がいないんだもの!!!
世の皆さまの悩みとか本音とかキレーすぎて、私が本当に考えていることなんか語れないんだもの!!!(自分で反芻するだけでもゲンナリするのに)



……という、心がきれいでない者の叫びなわけですが。
なかなか読んでくださる人を不快にさせずに日記が書けそうにないので、ときどきここで本の感想とか感想とか感想とかを書くくらいになってしまいますが、しょーがねーなーと思って時折来てくださるとありがたいです。


なんかなー、ヘンなこと書いてますけど、お赦しを。

少しばかり遅くなりましたが、2011年の個人的ベスト作品を。


第一位「シャンタラム」グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ(田口俊樹訳)

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
¥1,040
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やはりこの作品がいちばん面白かった……。
これについてはレビューを書いておりますが、これほどの長編でありながら「あーもう終わってしまうのね……」とラストあたりで寂しくなりました。
それにしても、結末にふさわしいエピソードのいくつかを素通りしていくので、どこでどうたたむんだ? まさかの熊オチか? と思っていたら、本作にふさわしい終わり方でしたね。傑作。

第二位「デーモン」ダニエル・スアレース(上野元美訳)


ある条件が満たされたときに動き出すように設計されたプログラム「デーモン」。
その条件とは、ウェブ上に乗せられた特定のワード――「設計者である天才博士の死の報道」だった。社会システムそのものを崩壊させる策略に満ちた悪魔的プログラムを、果たして止めることができるのか?

デーモン(上) (講談社文庫)/ダニエル・スアレース
¥860
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デーモン(下) (講談社文庫)/ダニエル・スアレース
¥860
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これすごい面白いですねー。 あらすじを読んで予想する内容より、三歩ほど先を行くミラクル暗黒展開! うっわーデーモンぜんぜん止まらん。強すぎ。
という良い意味で漫画チックでもあり、しかし既存の社会のありかたを再考させたりもする、意外と社会派なお話です。しかし「小説として」の楽しみはあるのかというとうーんですが(このジェットコースター展開は、ドラマとか映画とかの映像媒体のほうが向いている気が……)、すごくワクワクしました。
とりあえず本作完結の時点では、バッドエンドなりにまとまっているのですが、主要人物にまだ正体の明かされていない人もいたりして、続編が読みたくなります。
いやー、講談社文庫の海外作品なので、もっと陳腐な内容かと思って(←なんとなく育っていた偏見)いたら、近年まれに見るヒットでした。



第三位「ミレニアム」スティーグ・ラーソン(岩澤雅利訳)


雑誌「ミレニアム」の発行責任者であるミカエルは、裁判での有罪を機に、ある依頼を受ける。
36年前の少女の失踪事件の再調査という、通常であれば断るはずの内容であったが――

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)/スティーグ・ラーソン

¥840
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言わずとしれた大ベストセラー三部作。文句なしのリーダビリティを持つ傑作ですが、解説の方も言っているように、「リスベット・サランデルの物語」なのですよね。作者さんが書き残した第三部までのところとしては。
ううーん。私にはですね、一方の主人公であるミカエルというキャラクターがいまひとつ分からない――特に病んでいるわけでもない正義漢キャラのわりに、友達感覚で肉体関係や愛人関係を持ってしまい、それでいて相手にも恨まれず、よって罪悪感もまったくないという……わからん。この男はむしろ恋愛とか出来ないタイプの人間なのか? と疑問に思っていたところに、そこそこ本気になれそうな新キャラが第三部に登場して、さあどうなる? というところで作者さんがお亡くなりになってしまったので、その先の人間関係を読むことが出来なくなってしまったわけですが……。
もしも書かれていたのなら、ミカエルはどうなるはずだったのでしょうね。モニカとこのまま上手くまとまるとも思えないし、かと言ってリスベットは結局のところ彼の好みではないのだろうし、エリカと元サヤの仲良し愛人関係つーのも今さらだしなあ。読んでみたいものですが、他のひとが書いたものを読みたいとは思わないというのがホントのところですね。たとえそれが作者さんが想定していたとおりの展開だとしても、他のひとが書いたのではまるで別の話になるのではないかな。それが小説というものだと思います。


第四位「三つの秘文字」S・J・ボルトン(法村里絵訳)



夫の故郷であるシェトランドへ移り住んできた産科医のトーラ。
自分の馬を埋葬するはずが、ショベルカーで掘り当てたものは、体にルーンを刻まれた女性の死体だった。
しかも死体の子宮の収縮状態から見て、殺される直前に出産していたはずなのだ。

三つの秘文字 上 (創元推理文庫)/S・J・ボルトン

¥903
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三つの秘文字 下 (創元推理文庫)/S・J・ボルトン

¥903
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シェトランド諸島とはどこかというと、えーと地図でいうところのスコットランドの上のほうの島々(←説明てきとうすぎ)ですね。私が知っているのは「あー、シェトランド・シープドッグのシェトランドね!」くらいであり、世間の皆さまもそれくらいではないかという馴染みのうすい土地なので、舞台として新鮮で面白いです。難を言えばラストの種明かしがちょっとポカーンな感じですが(動機がなー、ファンタジーすぎるよな……アイタタ陰謀説っていうか)、なかなかの読みどころのあるミステリ、いやサスペンスでした。




えーと小説作品としては以上ですが、漫画……そうだな漫画はですね、やっぱり「ちはやふる」かなー。いろいろ新作話題作ありますが、ベスト作品というとこれしかないと思われます。

ではまた!


ヘロイン中毒の末に武装強盗を行い、オーストラリアの重警備刑務所から脱獄した男。
リンジーという偽名でボンベイに降り立った彼を待ち受けていたのは、愛と暴力と陰謀、そして戦争。
リン・シャンタラムとしての新たな人生だった。


シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
¥1,040
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シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ

シャンタラム〈下〉 (新潮文庫)/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ

¥882
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いやー傑作ですね。

作者さんの実体験(スゴイな、このあらすじそのまんまの経歴……)がかなりの割合を占めてそーな物語で、圧倒的なリアリティとかそーゆー言い方がふさわしいのかもしれませんが、この物語の何がすごいって、インドのムチャクチャな魅力が実感できるところです。
もちろん世の中にはインドを舞台にした小説や旅行記がたくさんありまして、私にもそれらを読む機会が幾度となくあったわけですが、にもかかわらず! この国やそこに住む人々に魅力を感じたことって無かったのですよね。いや、いろいろな意味ですげー国だなーとか感心したりはしますよ。しかしこの物語ほど肯定的に「すばらしいな」「ここは心の国だな」と感じさせられたことはなかったです。これはスゴイ。 本作は「逃亡者の脱獄記」であり、「スラムで生きる隣人たちの人情物」、「マフィアの抗争ドラマ」、「アフガニスタン紛争地域での戦闘記」、あるいはつかめない恋の物語であったりもするのですが、結局のところ物語のキモはそこなのですよね。
そして他作品と何がそれほどちがうのかと言えば――主人公リンが旅行者でも移住者でもない、逃亡者であるから、なのかもしれません。
帰る場所を持つ外国人であれば、よその土地でこうも他人と繋がろうとはしないのではないかなー。そこらへんの覚悟の違いが想いの深さとなり、視点の違いとなって出ているのではないかと。



しかし結構な大長編でありながら、まったく冗長さを感じさせないところはすごいですね。主人公リンとカーデルが善がどーの生がどーのと、正直読んでいるこっちにはどーでもいい人生哲学禅問答がかなり長かったりするのですが、それにすら不要さを感じさせない(しかし飛ばして読んでもまったく構わないとは思う……)。
そうそう、主人公が心酔するマフィアのボス・カーデルについて、最初は犯罪者が善だの悪だのへりくつこねるの片腹いたいわとか思っていましたが、金の入手方法にはこだわらないが使い方にはこだわるとゆー生き方は結構スゴイ。頭のカタイ私ですら、ああそういうのならアリかもなーという気になりました。



そういえば本作はジョニー・デップ主演で映画化されるそうですが、自分のことブサイクと言っている主人公(男性主人公が自分の容姿を気にするのって珍しい気がする)リンを美形デップ様がおやりになるのですか……まあ大画面を長時間もたせるには美形に越したことないか。



ふだんはテーマテーマと「どういう結論を出すのか」という部分にうるさい読者である私でございますが、本作については物語としての大筋がどうこう言うよりも、細部こそが素晴らしいと思わされました。いやー、ほんとうに久々に幸せな読書体験でした!


残るは天津影久一行のみ――
道中で逸刀流の剣士をことごとく葬り、那珂湊へ到着した吐鉤群。
船での逃亡を防ぐために、「港にいる人間をすべて斬り捨てよ」と命令するが、そこには意外な人物を乗せた船が待っていた。

無限の住人(28) (アフタヌーンKC)/沙村 広明
¥570
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すげーなハバキ様の命令↑

この前段階での「貸し馬つかわれると困るから(道中の馬すべて)殺しとけ」も大ざっぱすぎてヒドイと思ってましたが、この悪役ぶりは圧巻だわ。なんかもう国益のためには誰殺しても構わないとゆー理屈みたいですが、しかしそもそも何でこんな事態になってんだっけ? ハバキさま非道な上に無能すぎる……。



そんなこんなで天津影久も万次さんも到着して、とうとう最終ラウンドが始まりましたね! おお、意外に盛り上がってきた!(自分が)
敵討ちで始まった本作ですが、いつの間にやら恩讐を超えて(つーかハバキ様の無茶苦茶が過ぎて恨みつらみが霞んでしまった……)、共同でもないけど戦線が!


久々に登場した槇絵さんの剣技とゆーか殺戮ぶりが物凄い(本人も分かってるみたいですが、万次さんて正直死なないのだけが取り柄だよな……)、見どころいっぱいのお話でしたが、だがしかしこの巻でわたくしが個人的に超注目したいのは、凛と万次さんの関係に言及する百琳ねーさんの発言でございます。そうですアレです。


「やっぱ『兄妹』ってのがしっくりくるわ、うん」です!


いやーおそらく作者さんも、凛を大人にして二人のあいだに恋愛フラグをたててみたものの、あまりしっくりこなかったのでしょうね。私も今までの関係性のほうが萌えがあるなー。うーん、物語における恋愛って、なさそうなとこに発生するのがいいわけであって、この二人の恋愛っていらんよなーと思います。
えーとほら、ここらへんのエピソードで言えば、天津影久が凛を助けるあたりとか、あっちのフラグのがイイよ! ぜんぜんイイよ!!



というわけで次巻を楽しみにしております。



死をあざむくことはできない――

社外研修旅行に出かける矢先、吊橋の崩落事故に巻き込まれた社員たち。
危ういところでサムの奇跡的な予知により、助かったはずの8人に、次々と襲い掛かる死の恐怖。
「代わりの命を差し出せば、生き残ることができる」
謎の男の言葉は真実なのか? 



水の中。-FD5


来ました! ファイナルデスティネーション5作目!
いやいやいや、2作目以降、まったく新展開のない、ただシチュエーションを変えたばかりのシリーズとなっていた本作ですが、今回与えられた「新たな死の法則(てゆーか死から逃れる法則)」はイイ! 
生き残った人々が、ただひたすら死から逃げ惑うのでなく、「やられる前にやれ!」と謎の男にそそのかされるわけです。


自分のために他人を殺すことが出来るのか?

という問題提起そのものにテーマ性は持たせていないのですが、追い詰められた挙句に攻撃に転じた登場人物たちの行動が見ものです。
実際のところストーリーそのものはたいしたことは無いのですが、そして3D自体もぜんぜんたいしたことないのですが、そーゆー切り口が新鮮でものすごく面白い。



ただなー、悲しい出来事の多い今どきの世相からすると、「悲惨な死にざまを楽しむ」という、あまり歓迎されない内容であるだけに、興行的には苦戦してそうな気配ですが……(3D映画初のR18指定も、話題になるよりは上映館を減らすだけの事態となっているようで、公開二週目なのに観に行くの苦労しましたよ……)。
シリーズのファンにはおススメできる最新作です。



「パリ行き」というキーワードがなんかひっかかるなーと思っていたら、ラストそう来たか! という仕掛けがあって最後まで楽しめました。
いやホント、ぜんぜん期待していなかったけど面白かったです。

世界中に突如として現れた、巨大な青いオベリスク――
破壊不能な未知の建造物には、「2041年」という未来の日付と、「クイン」という名が刻まれていた。
このメッセージはいまだ現れぬ未来の支配者からの戦線布告なのか?

クロノリス-時の碑- (創元SF文庫)/ロバート・チャールズ・ウィルスン
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<ややネタバレ的な感想になっておりますので、未読の方はご注意ください!>






「クインという名の支配者が現れる、かもしれない」という恐怖あるいは期待が世界を荒廃させ、クインの名を冠する組織が乱立する。
つまりこの不思議なオベリスク(作中ではクロノリスと名づけてます)が次々と出現することによって、逆にクインの出現を招いてしまうのでは?
これは因果を逆転させた未来からの侵略なのでは?
 



と、ドカーンと最初に派手にぶちかましてくれる本作なのですが、
ここで我らが主人公スコットがどのようにこの現象にからんでくるかというとですね、


たまたまクロノリス出現に居合わせたり~、
たまたまコーネル大での恩師が専門家だったり~、
そのセンセーがたまたま「あなたは重要人物なのよ!(たいした根拠なし)」と言い出したりして~、
そんなら職場クビになっちゃったし先生のとこで働くよーと言ってみたり、
だけども家庭の都合であっさり出て行っちゃったりー、


アレ? 実際あまりクロノリス事件には絡んでいない……?


主人公を当事者ではなく、このようにわりあい外側にいる(というか再婚した妻との平穏な暮らしのために遠ざかってしまう)人物に設定する、というのは面白い手法だなーと思います。この主人公スコットが「鍵を握る人物」となる理由が、知識でも才能でもなく、要は幼少期からはぐくまれた性質のためであった(たぶん)というのも、意表をつかれるオチだなーと思います。
しかしですね、「問題解決のために奔走する第一人者である主人公!」「主人公だけが持つ特殊な才能!」みたいなベタな王道設定には王道設定なりの理由があるわけで、本作の展開は意外性はじゅうぶんありますけども、あっと驚くどんでん返しというよりは肩すかし的な驚きであって、分かりやすいカタルシスがないのですよね……。
何ていうかこう、スコットに何かあるの? あるのかも? あるんだよね? いや実はそうでもなかった――という。



そしてヘンな言い方をしてしまえば、本作は「何も起こらない物語」でもあるわけで。
結末について多くは語られないのですが、最後のシーンのスコットをとりまく社会の状況を考えるに、いまさらクインという名の支配者が突如現れるとは思われず、繰り返されるフィードバックというタウ・タービュランスに巻き込まれ、クインの出現そのものも無くなったように思われます。
つまるところ人類はこの時間侵略に勝利した、ということになるわけですが……。
まあ正直、「勝利したよかった!」 というより、「えーと勝利したんだよね?」という不確かさ。



よく練られた物語であり、主人公の造形にも非常に共感できるし、読者にあれこれと考えさせるタイプの佳作なのですが、読後感が。
読後感がなー、なんだか物凄く物足りない……。


「こういう物語」としてしまった以上、SF要素はドラマティックになりようがないので、せめて人間ドラマにもーちょっとメロドラマ的な盛り上がりがあればなーと思ってしまいました。


せっかく我が子であるケイトを救出する劇的エピソードがあるのだから、あのへんをもうちょっとこうさー、お涙ちょうだい風にあざとく盛り上げてもバチは当たんないんじゃないかなとか……いやなんかよくまとまっててお上品すぎてさ……。←シモジモの意見










不在が長引いておりましたが、リハビリ的に短い感想などを!


ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)/パオロ・バチガルピ
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ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)/パオロ・バチガルピ
¥882
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近未来バンコク。エネルギーが枯渇し海面が上昇、疫病の果ての食料危機に政権抗争、この瀕死の状態の世界の行く末は――


なんでか「ニューロマンサー以来の衝撃!」とかいう帯がかかっていましたが、いやいやアレより全然読めるよ! 何が書いてあるのかちゃんと分かるし! 
……という別作品の悪口はさておき、本作は2011年現在の読者の目で読むかぎり、結構リアルな未来だと思えてしまうのですよね……。


ねじまき少女(遺伝子操作でつくられた使役用の人間。べつに螺子式なわけではなく、人類との区別のためにぎこちない動作をするように設計されている)エミコの運命がどうのこうのよりも、この絶望に満ちた世界に呑み込まれていく登場人物たちの物語が読みどころ。
いやー、予想よりぜんぜんマトモなお話でした。
しかしまあ現実に暗い時代を生きる者としては、もすこし元気の出る物語が欲しいところかな……。





憎鬼 (RHブックス・プラス)/デイヴィッド ムーディ
¥903
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今日も上手くいかない仕事と、家計のやりくりに頭を抱えるダニー。
妻との口論や、いたずら盛りの三人の子供の父親としての平凡な暮らしに、突如身のまわりで凶悪事件が起こり始める。
いきなり狂気にとりつかれたように凶暴化する人間たち。自分や家族は正気でいられるのか?


わー、ゾンビ化(憎鬼化?)がこわいというよりも、ダニーが前半の鬱々とした日常(本来あーゆーのが幸せだと思うのですが)から、うってかわって後半生き生きし始めるのがコワイ。

くるなーくるなーと分かっているので、ダニーが変化すること自体は読者としては分かっているのですが、憎鬼化したダニーの解き放たれて生き生きしたカンジが、それまでの彼よりはるかに幸福そうで、なんかそれが自分とてもコワイ……!!(片言か)


しかしまあ、要はフツーの人が突然変化してしまうだけのゾンビ物なので、ゾンビ映画として楽しむのなら、こーゆーのもアリなのですが、小説だと先が無いのはちょっとキツイな~。
とか思っていたら、なんと続編で衝撃の展開だか種明かしだかがある様子。でも本作自体にその展開への引きが弱いので、読みたくなるかというとビミョウ。



海街diary 4 (flowers コミックス)/吉田 秋生
¥530
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サブタイトルが「帰れないふたり」。

へえ不倫ものみたいなタイトルだなーと思いましたが、そうか長姉の不倫があったか!!(すずちゃんママもそうだったし)


しかし全編としては、末っ子すずちゃんのかわいらしい恋のはじまりが描かれていて、いやー良い話すぎて、このホームドラマはもうなんだか私にとってはファンタジーだわ。決してきれいごとが描かれているわけではないのですが、出てくる登場人物がとてもマトモな人たちなので、これを読んでいると、ああ自分の育ち方は問題あったなーとか思ってしまいます。そういう読み方をする物語ではないのですけどね。




少年魔法士 (14) (ウィングス・コミックス)/なるしま ゆり
¥620
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再開するのですか!! よかったーうれしいなー! なのですが、この巻の作画はちょっといかがなものかと。とくに人物。
いまこんな荒れた絵でしたっけ? それとも中断時のものなのかな?


お話そのものは楽しみにしているので(超残酷展開ですけども!)、持ち直してくれるといいなー、お願いします……!



(後半ちょっと感想でないですが、ではまた!)


時は1979年。母を事故で亡くし、保安官助手の父と分かり合えないジョーは、友達の付き合いでゾンビ映画制作を手伝っていた。ところが深夜の撮影で、貨物列車の大事故を目撃してしまい――




えーと、期待をして観た映画ではなく、暗闇でボーッとしながらポップコーンが食べたいというだけであったので、特にどうこういうような不満はないのですが、いろいろと薄い感じのお話でした。


夏休み、憧れの女の子、うまくいかない家族関係、仲間たちとつくる映画――


いかにも万人受けしそうな、美味しそうな要素がたくさんあるのですが、結局のところ大人にとっては内容が浅くて物足りず、子供が夢中になるには楽しさが足りないような(全年齢向けってどうしてこうなるのでしょうね。最大公約数を目指した結果、誰が見てもいまいちな出来になりがちというか……)。


父親との和解場面もなー、「もう大丈夫だ」ぽいことを言ってパパはジョーを抱きしめるのですが、
「アンタなんの役にも立ってねえじゃん!(←ただ空軍に捕まってただけ)」とか思うと感動も出来ず……。


それにしても不思議なのは、なんでまたこんな30年前の時代設定なのでしょうね。
てっきりスタンドバイミー的な、成長した彼らの後日談があるものと思っていたので、えっ無いの??という事実に驚きました。


え? ではなんだ、何のための時代設定なんだ。過去設定にしたほうが空軍のヌルさとかがごまかせるというかノスタルジーを期待してのことでしょうか。



見どころといえば、やはりアリス役エル・ファニングの美少女ぶりかな……。


気がつけば6月……!!
すでにココが自分の場所では無いような気すらしておりまして、すっかり足が遠のいてしまいましたが、あれこれ言い始めると長くなりますので何事も無かったかのように、つらつらと一言感想行ってみたいと思います!


Real Clothes 12 (クイーンズコミックス)/槇村 さとる
¥440
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仕事は絶好調、なのにボス田渕との仲がまったく進展しない絹恵。
後輩たちの恋愛模様に巻き込まれ、イタリア出張で再会したニコには「愛する人の手を離しちゃダメですよ」と言われ……。


えええーと、内容はひたすら物語をたたみに入っていて、なんつーか魂の入っていない感じ(今さらイタリア行ったりニコが出てきたりとかどーでもいい)の展開でございます。

働く者のリアルな苦悩が求められるお仕事漫画とゆージャンルでは危険な兆候……。それ以前に、作者さんがご病気であったことも影響しているかとは思いますが、絵が……絵が! まんがなのに、こんなにも描き捨てな絵でいいものなの……?
緻密な絵だけがすばらしいというわけではないにしても、これはなー、二度と読み返したいとは思わないレベルだし、絵に魅力がないようでは漫画である価値がないと思います。お金もらってるプロの絵ではない。


そのへんは置くとして、次巻では主人公・絹ちゃんが「中国へ行く田渕についていくのか、それとも日本に残るのか?!」が最終的な山場になるようなのですが、ぶっちゃけどっちでもいーんじゃねーの? な気持ちです。
えー、クライマックスに海外赴任を持ってくるとはなあ……あらゆる意味で古くさすぎる……すみません、否定的なことばかり言って申し訳ないのですが、お話ってたためばいいってもんじゃーないと思うのですよ。おしごと漫画では特に。


ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)/クラーク・アシュトン・スミス
¥1,260
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わたくしこの一言レビューを書くまでは、本書を「ヒュプレボレウス神話集」だと思ってました……書いてみるものですね感想って。
これより前に刊行されていたゾティーク幻妖怪異譚も読んだような(ような?!)気がするのですが、なんというか本書も同様に(というほど覚えてないけど)あれこれ上品な趣向をこらした太古の怪談withクトゥルフ☆フレーバーが楽しめる作品集でございます。
しかし内容よりも訳者さんによる解説の「オリハルコンなんて発音しねーよオ・レ・イ・カ・ル・コ・スだっつの!!」という主張のほうが印象深いという不思議……(間違いつづける世間様にイライラしていたのでしょうか。まあすでにオリハルコンて市民権?を得て久しいからなーどうしようもないよなー)。




星の光、いまは遠く 上 (ハヤカワ文庫SF)/ジョージ・R・R・マーティン

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星の光、いまは遠く 下 (ハヤカワ文庫SF)/ジョージ・R・R・マーティン
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かつて恋人だったグウェンに惑星ワーローンへ呼び寄せられたダーク・トラリアン。
廃棄された祭りの場であったこの奇妙な惑星で、7年ぶりに再会した彼女は、不思議なアームレットを身に着けていた。

いやー、近年まれにみる脱力ラストですね! いや脱力ていうと手抜きみたいな言い方ですが、そうではなくて、「なんでまたそっちに旋回しちゃったのアナタ! 空気! 空気読んでちょっと!」 と引きとめたくなるような後半の展開……。
登場人物をただひとりを失うだけで、こうも絶望的な結末になるとは……。
真のヒロインはグウェンじゃーなかったんだな……。
すごくよくできた世界観であるだけに、違う展開が読みたかったなーと思います。



脳内ポイズンベリー 1 (クイーンズコミックス)/水城 せとな
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櫻井いちこ29歳。飲み会で一目ぼれした年下の彼に再会し、どうするどうする??と脳内会議ばかりが沸騰中で――

この主人公いちこちゃん、普段はホンワリぽやーと可愛らしく、ぜんぜん好きでない相手には簡単に愛されそうなタイプなのですが、ひとたび恋に落ちた相手にはまったく冷静でいられなくなるパニック肉食型!
この1巻でも、好きになってしまった彼の部屋にゴーインについていき→やっちまい→逃げ去り→追いかけられ→付き合うことに→年上バレをののしられたと誤解→なんだ勘違いだったのかーで和解→しかしビッチとふたたび誤解され絶縁
……という目にもとまらぬ恋愛模様です。脳内会議のメンバーもそりゃ大忙しです。頑張れと言いたいとこですが、しかしあの年下彼の何をそんなに好きなのかワカランなー……ふつーにモテそーな、ふつーの若者なんだけどなあ……。




というわけで、駆け足でございますが、ではまた!!