2011年ベスト作品など。 | 水の中。

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海外小説のレビューと、創作を。

少しばかり遅くなりましたが、2011年の個人的ベスト作品を。


第一位「シャンタラム」グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ(田口俊樹訳)

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)/グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
¥1,040
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やはりこの作品がいちばん面白かった……。
これについてはレビューを書いておりますが、これほどの長編でありながら「あーもう終わってしまうのね……」とラストあたりで寂しくなりました。
それにしても、結末にふさわしいエピソードのいくつかを素通りしていくので、どこでどうたたむんだ? まさかの熊オチか? と思っていたら、本作にふさわしい終わり方でしたね。傑作。

第二位「デーモン」ダニエル・スアレース(上野元美訳)


ある条件が満たされたときに動き出すように設計されたプログラム「デーモン」。
その条件とは、ウェブ上に乗せられた特定のワード――「設計者である天才博士の死の報道」だった。社会システムそのものを崩壊させる策略に満ちた悪魔的プログラムを、果たして止めることができるのか?

デーモン(上) (講談社文庫)/ダニエル・スアレース
¥860
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デーモン(下) (講談社文庫)/ダニエル・スアレース
¥860
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これすごい面白いですねー。 あらすじを読んで予想する内容より、三歩ほど先を行くミラクル暗黒展開! うっわーデーモンぜんぜん止まらん。強すぎ。
という良い意味で漫画チックでもあり、しかし既存の社会のありかたを再考させたりもする、意外と社会派なお話です。しかし「小説として」の楽しみはあるのかというとうーんですが(このジェットコースター展開は、ドラマとか映画とかの映像媒体のほうが向いている気が……)、すごくワクワクしました。
とりあえず本作完結の時点では、バッドエンドなりにまとまっているのですが、主要人物にまだ正体の明かされていない人もいたりして、続編が読みたくなります。
いやー、講談社文庫の海外作品なので、もっと陳腐な内容かと思って(←なんとなく育っていた偏見)いたら、近年まれに見るヒットでした。



第三位「ミレニアム」スティーグ・ラーソン(岩澤雅利訳)


雑誌「ミレニアム」の発行責任者であるミカエルは、裁判での有罪を機に、ある依頼を受ける。
36年前の少女の失踪事件の再調査という、通常であれば断るはずの内容であったが――

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)/スティーグ・ラーソン

¥840
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言わずとしれた大ベストセラー三部作。文句なしのリーダビリティを持つ傑作ですが、解説の方も言っているように、「リスベット・サランデルの物語」なのですよね。作者さんが書き残した第三部までのところとしては。
ううーん。私にはですね、一方の主人公であるミカエルというキャラクターがいまひとつ分からない――特に病んでいるわけでもない正義漢キャラのわりに、友達感覚で肉体関係や愛人関係を持ってしまい、それでいて相手にも恨まれず、よって罪悪感もまったくないという……わからん。この男はむしろ恋愛とか出来ないタイプの人間なのか? と疑問に思っていたところに、そこそこ本気になれそうな新キャラが第三部に登場して、さあどうなる? というところで作者さんがお亡くなりになってしまったので、その先の人間関係を読むことが出来なくなってしまったわけですが……。
もしも書かれていたのなら、ミカエルはどうなるはずだったのでしょうね。モニカとこのまま上手くまとまるとも思えないし、かと言ってリスベットは結局のところ彼の好みではないのだろうし、エリカと元サヤの仲良し愛人関係つーのも今さらだしなあ。読んでみたいものですが、他のひとが書いたものを読みたいとは思わないというのがホントのところですね。たとえそれが作者さんが想定していたとおりの展開だとしても、他のひとが書いたのではまるで別の話になるのではないかな。それが小説というものだと思います。


第四位「三つの秘文字」S・J・ボルトン(法村里絵訳)



夫の故郷であるシェトランドへ移り住んできた産科医のトーラ。
自分の馬を埋葬するはずが、ショベルカーで掘り当てたものは、体にルーンを刻まれた女性の死体だった。
しかも死体の子宮の収縮状態から見て、殺される直前に出産していたはずなのだ。

三つの秘文字 上 (創元推理文庫)/S・J・ボルトン

¥903
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三つの秘文字 下 (創元推理文庫)/S・J・ボルトン

¥903
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シェトランド諸島とはどこかというと、えーと地図でいうところのスコットランドの上のほうの島々(←説明てきとうすぎ)ですね。私が知っているのは「あー、シェトランド・シープドッグのシェトランドね!」くらいであり、世間の皆さまもそれくらいではないかという馴染みのうすい土地なので、舞台として新鮮で面白いです。難を言えばラストの種明かしがちょっとポカーンな感じですが(動機がなー、ファンタジーすぎるよな……アイタタ陰謀説っていうか)、なかなかの読みどころのあるミステリ、いやサスペンスでした。




えーと小説作品としては以上ですが、漫画……そうだな漫画はですね、やっぱり「ちはやふる」かなー。いろいろ新作話題作ありますが、ベスト作品というとこれしかないと思われます。

ではまた!