<バチスタ・スキャンダル>に揺れた東城大学付属病院。
あれから九ヶ月、落ち着きを取り戻した平和な病院に運び込まれたのは「酔いどれ迦陵頻迦・水落冴子」。
有名人の登場にざわつく院内に、不吉な影が忍び寄る。
入院患者である牧村瑞人の父が殺害され、瑞人本人と担当看護師の小夜に容疑がかけられているのだという――
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グチ外来の田口医師アンド白鳥調査官が再登場!
しかしこの作品は前作「チーム・バチスタの栄光」とはまったく雰囲気が違い……えーとですね、巻末の解説によると「ややSFじみた設定(歌声が共感覚を呼び覚まし、映像を喚起するという……)に賛否両論だった」とありますね。
私が思うに、賛否両論であった真の理由は、設定がトンデモなためというよりは、今回の「この作風」にあるのではないかと。
あいかわらず舌鋒するどい白鳥調査官ですが、今回はむしろ添え物のような扱いで、本作は当事者たちがムード優先の「セ・ラ・ヴィ、それも人生さ……」みたいなバラをくわえた(ヘンケンか?)会話ばかりしていて、かなーりセンチメンタルな雰囲気なのですよね……。
なんていうか……疲れる……。
うーん、これ単体で考えると、本作はひじょーにびみょーな出来なのですが、
巻末の解説にあるように「桜宮市を舞台にしたシリーズの二作目」として考えると、今後の展開が楽しみだなーと思います。
えー、小夜ちゃんとか瑞人くんとか、また出てくるんだ! それはすごい。
しかし今回、やや考え込んでしまったのが、
「作者がカッコイイと考えている(たぶん)もの」が、どうして読み手である私には「えーそれカッコワル……」になってしまうのかということ。
上で書いている会話などもそうなのですが、
特に今回気になってしまったのが、登場人物にやたらと二つ名をつけるアレですよ。
白鳥が「ロジカル・モンスター」なのはまだよいとして、
田口センセーが「行灯くん」なのもまあ面白いとして、
姫宮さんは「氷姫(作者さんは深田恭子ちゃんをイメージしてるらしいっすよ!)」で、
加納警視正は「ハウンドドッグ→デジタル・ハウンドドック(出世魚みたい)」で、
事件にかかわる有名歌手が「酔いどれ迦陵頻迦(うーん、せいぜい歌姫とか名前もじりでしか呼ばないだろ、しかも酔いどれ……)」、
速水医師は「将軍(ジェネラル……呼ぶかなあ、なんか気恥ずかしいなあ……)」などなどなど。
まあ他の端役もたいていひととおり「別名○○」みたいに紹介されていたりして、しかも登場人物だけでなく他の事象にもわりと「通り名」をつけるのがお好きみたい(あそこの特別室がドア・トゥ・ヘブンと連呼されるのは、ややうっとうしい……)なのですね。
おそらくこれは「イメージを単純化して」、読み手に伝える手法のつもりなのだろうなーとは思うのですが、私などには過剰に感じられて「ちょっとうっとうしい→なんかダサい」と悪印象に転じてしまうのですよね……。
そうですね、あえてたとえてみるのなら、
クラスに転入してきた女の子にいきなり自己紹介で
「アタシは気まぐれプリンセス・ゆっちん! ドジであわてんぼうだけど姉御肌で面倒見よくて意外に繊細なとこもあったりする、イチゴが大好きなてんびん座の0型よ!」
と名乗り上げられてしまうような感覚でしょうか……。
ソレはあんたじゃなくてこっちが決めることだから! と思ってしまう。
しかしこのあたりの感覚は個人差があるように思うので、「これくらいが読みやすい」「こういうのが好き」という読者も少なくないのかもしれません。
作中ではブルーバックスの「死因不明社会」で訴えていた「AIの導入」について、かなり触れられていて、おお、こういう書き方のほうが分かりやすいなーやっぱり小説で書くべきなんだなー、と感心しました。
前作とは違う作風の、かなり感傷的な雰囲気の本作については好き嫌いが分かれるところですが(私は前作のほうが断然好きですねえ……)、シリーズとして楽しみにしていきたいと思います。