母たる藩妃を失い、国主となった娘とも別れ、イスタは目的のないうつろな日々を過ごしていた。
忠実な城代や過保護な侍女たちに囲まれ、息苦しい思いに苛まれる彼女は
ふとした思い付きで「巡礼の旅」を計画するのだが――
- ロイス・マクマスター・ビジョルド, 鍛治 靖子
- 影の棲む城 上 (1) (創元推理文庫 F ヒ 5-4)
- ロイス・マクマスター・ビジョルド, 鍛治 靖子
- 影の棲む城 下 (3) (創元推理文庫 F ヒ 5-5)
ビジョルドの中世スペインをモデルにしたファンタジー「五神教シリーズ」第二弾! です。
えー、前作「チャリオンの影」
は全てを失ったカザリルという男が自分を取り戻していく冒険譚、でした。
今回の主役であるイスタも、かつて王家にかけられた呪詛をとくために、夫である国王とともにしてはならない過ちを犯し、宰相を死に追いやったことがあるわけです。
結果としてその「呪い」はカザリルの登場まで解かれることはなく、イスタは狂人としてずっと城の奥深くに閉じ込められていたわけですが……
ううーむ。
カザリルの冒険と違って、「魔」や「神」が本筋に絡んでくるイスタの物語、特別にファンタジー好きでない私としては、わりとハードルが高かった(いや高い低いとゆー問題ではないが受け入れにくいっていうか……)ように思います。
魔法が都合よく使われるわけでも、萌えを都合よく製造する設定に使われてるわけでもなく、とっても正統派な「剣と魔法」「愛と勇気」の大人のファンタジーなのですが……
こみいった人間ドラマを書く力のある作家さんであるだけに、
「これべつに魔法ぬきにして書いてくれてもいいのに……」
と思わなくもない、のです。いえファンタジーに対して「ファンタジーにしなくてもいんじゃね?」というのが間違った感想であるのは分かっているのですが。
なんかなー、人生には呪いなんかなくても、他にいくらでも苦しみが存在するのになあ、と。
それに加えて、主人公イスタの「神にふれられた聖者」としての力があまりにスゴイので、なんていうんですか、こう、おそらく作者さんが最初に思い描いたであろう、「全てを失った40歳の女性が自分を取り戻す物語」にはなっていないような。
このストーリーでいくと、「つまりイスタは最初から意志の強い自立した女性で、要は周囲が彼女を狂人だと誤解しているだけのことだったのよ!」としか読めないのですよねえ。
そう、まわりが無理解でイスタの価値を正当に評価していなかっただけ、というカンジ。
これはなあ、本人の狂気じみたふるまいのせいだろうと思うのですが、彼女はそのあたりを反省するでもなく、最後にはうるさい侍女を冷たく遠ざけちゃったりして。
ビジョルドの書き方が上手いので、読み手を難なくイスタに共感させてしまうのですが、どうも改めて考えるに、納得のいかないキャラクターなのですよねえ……。
まあ、このへんの私のかたよった不満はさておき、息もつかせぬ冒険譚。
イスタがかつて死なせてしまった宰相ルテスの息子たちまで登場したりして、ややハ-レクインな展開も楽しめます。
ビジョルドの人物描写はあいかわらず魅力的で、前作の主役たちに会えないのが残念だなーと思わせるほどですが、今回も新たなキャラクターがたくさん登場して、にぎやかに物語を駆け回ってくれています。
ううーむ、しかし個人的にはやはり前作「チャリオンの影」のほうが私の中では三冠(この二作目はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞に輝いた三冠達成の物語)にふさわしい物語であるように思います。
ある程度の年齢のいった大人の女性が主人公ということで楽しみにしていたのですが、ちょっとそーゆー期待は裏切られてしまったかな……。