「ミスターX」 ピーター・ストラウブ(近藤麻里子 訳 ・創元推理文庫) | 水の中。

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主人公ネッドは、誕生日のたびに不思議な発作を起こし、残酷な殺人者の夢をみる。
母の死期を知り、故郷へ帰ったネッドを待っていたものは、数々の罠と暗い血の秘密だった。

母が告げた父「エドワード・ラインハート」とは何者なのか?


謎が謎を呼び、一筋縄ではいかないキャラクターがたくさん登場する、たいへん面白い物語なのですが、 「クトゥルー神話ってナニ?」
という読み手にとっては、どういう作品なのでしょう、これ。

ご存知ない方の為に説明すると、クトゥルーとは、ラヴクラフトという米国の作家が造り出した古きものども、古代から地球にひそんでいる化物なのです。
なかなかキモチ悪い、原始の恐怖を感じる存在で、それに魅せられたオーガスト・ダーレスなどがこの神話に連なる作品を広げていき、多くの作家に愛され、現在まで綿々と、その幻想怪奇的な神話体系が続いているわけなのです。日本で言えば、栗本薫の「魔界水滸伝」がそうですね(そうかな……そうでもない気がしてきた……)。

主人公ネッドは故郷へ帰り、ダンスタン家の暗い秘密をさぐることになるわけですが、このダンスタン家の不思議な能力に対する裏付けと、暗く妖しい雰囲気の演出という以外に、クトゥルー神話という背景は必要ないような。でも、それがあるからこそ、ネッドの能力も「ああ、アリかもね」とすんなり受け入れることができるような気もします。
怪奇小説なんて興味ないよ! という読み手の、まっさらな意見が知りたいところ。

印象的なのは、最初は「なんてひどい人たちなんだー」と思った、ダンスタン家の魔女のようなオバサマ達
その手癖の悪さ(!)でラストにも一役買っていて、最後には笑えてしまいます。
ネッドが恋に落ちる人妻の、いさぎよいほどの悪女っぷりにも感心。最後のセリフがとてもいい。

1999年度のブラム・ストーカー賞を受賞している本作。怪奇小説の枠を超えた、あらゆる要素がつまった面白さがありますので、ぜひ一読を。

途中で、「登場人物が多くてイヤーン」と思われるかもしれませんが、気にせず先へ進んでください。
こまかいことは無問題!

(評価★★★)