キツツキでトンビを釣ると言う事・・・ | ロンリー・オル・ナイト

ロンリー・オル・ナイト

インドネシアで怪魚釣りを夢見るオサーンの海外奮闘記!

あれは1998年の事。

スミスが15周年記念としてハトリーズの
ブッシュペッカーと
バブルダンサーを復刻した。
当時はバスバブルで、ハトリーズなんて
同じ重さのダイヤくらい貴重だったから
滅茶苦茶興奮したよ…
オリジナルなんて見る機会すらないんで、
似た実物を手に入れる
最後のチャンスだと思ってた。
もう広告を見ては浮き浮きと発売日を心待ちにしてたんだ。

当時僕が通っていた釣具屋はヘンコな兄ちゃんがやってて、
何度も通ってやっと顔も覚えてもらい何とかこっそりとZEALを
回してくれたりするような関係になっていた。
この復刻ハトリーズも仕入れるという! 僕は早速予約した。
全色大人買いしたい所だったけど「一人一個にしてや!」なる兄ちゃんの一言で
残念ながら各一個だけの予約となってしまった。
カラーは目からウネウネと線が入ってる奴! 
これが一番ハトリーズらしいと思っていたから
色は何色かあったけど目が悪い僕は一番見やすそうな黄色のにした。
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何かのホームページか雑誌の記事でブッシュペッカーはその名の通り、
スケーティングの最初か最期にキツツキの如くつんのめるようなアクション!?
をするって読んだ記憶があった。

ほう?キツツキとは!?僕には想像もつかない…本当にそんなアクションをするのかな??
知りたくて、試してみたくて…純粋な好奇心から見てみたくてたまらなかった。
指折り数えてやっと来た発売日。
僕は開店と同時に兄ちゃんの店に行った。
他にもたくさんいるんじゃ?って覚悟してたけど全く誰もいなくてちょっと拍子抜けした…
兄ちゃんは笑って予約分と後は好きなのを買わしてくれた。
だからもう一個づつ入手できた。

さて!あとは動きのテストだ!! 
ルアーをやってて一番楽しい瞬間だろうと思う。
もう冬になってて実釣は無理だと思ったんで純粋にテストである。
アホ池なるホームポンドに行った。
ここはとても釣れる(アホでも釣れるからアホ池…)けれども冬は全くだめである。
で、僕はもっぱら道具のテストでこの池に通っていた。
アホ池は森の中を抜けて行ってちょっとした秘境の気分が味わえる。
ここで人とあった事はほとんどない。
その日のアホ池はいつものように誰もいず、シンと静まり返っていい雰囲気だった…
冬の抜けるような青空の暖かい日だった記憶がある。
見上げた時にトンビが飛んでいたのも良く覚えている。

岸辺に立ち、箱を開けるのももどかしくブッシュペッカーを結んだ。
ロッドは渡辺ローハイド、5500Cに当時はPEラインだった
これが後程悲劇を生むんだけど…)

緊張の第一投目! 

ス~イスイとスケーティングはばっちりするんだけど…キツツキは微妙だった。
心なしか動きが止まった時にユラユラ揺れる気がするが…これがそうかな?
で、この後はもう夢中で投げては動かし、目を凝らして見るの繰り返しだった。
何投目かの投げて動かそうとした時、バサ!バサ!という重い羽音と共に
トンビが目の前に急降下してきた。まさに急降下って感じだった。
目の前に降ってきた僕は仰天し一瞬動きが止まってしまった…
これがいけなかった!
動きの止まったルアーをトンビがバサバサ羽ばたきながら足で掴もうとしている。
慌てた僕は思わずロッドを煽ってしまった。
トンビの掴んだタイミングと僕の煽りが偶然にあった…

ブラックバスのあわせは全く下手なのに、トンビへのあわせは完璧だったよ…
 
なんとトンビの足にガッチリとフッキングしてしまった。
トンビも慌てたのだろう、大急ぎで逃げようとした。
が、足には大事なルアーがくっついたままだ。
そうはさせんと僕も負けじと引っ張った。
僕とトンビは10m位のPEラインをはさんで引っ張り合いとなった。
すごく不謹慎だけど、トンビの引く力は大したことがなかった。
ちょうど凧揚げ位の感覚と力だった。
よく漫画で鳥を使って空を飛ぶってあるけど、これじゃ無理やなぁ~って
思ったことを思い出す…そんな場合じゃなかったんだけど…
時間にしたら大した時間じゃないと思うけど、
この引っ張り合いは僕にはとてつもなく長く感じた。
もうラインを切っちまうか?
と一瞬考えた…でもルアーが足についてPEラインを引きずったトンビを発見!
なんてなって、またバサーが社会問題になる!?と思い直して止めた。
この何とも間抜けな綱引きは、外れないかと僕が再度煽った時に、
ちょうど凧が急旋回して落ちていくようにトンビが森の中に落ちて行って終わった。
バキバキ音がしたんでもうトンビは死んだと思ったよ。

”心無い釣り人、鳥を誤って殺害…”
なんて言葉が心に浮かんだ
…あかん!!もう大急ぎで見にいった。幸いな事にトンビ君は生きていた。
PEでがんじがらめになって木から逆さまにぶら下がってた。
初めて間近でみるトンビはとっても大きくて怖かった。
そして僕を見て逃げようとまた暴れた…
可哀想にフックが足を傷つけていた…僕は出来るだけ優しく外してやり、
ラインは切って放してやった。
最期は大人しくしててくれて助かった。
僕がハトを放す要領で空中に投げ上げると、バサバサと羽ばたき
ちょっとヨロヨロしていたけれども何とか空へ飛び立っていった。
 
すっかり気落ちした僕はどっと疲れて、当然ながら釣りを中止し家に帰った。
 
そしてブッシュペッカーのキツツキアクションは結局解らずじまいだった。
 
さて、この話を当時の会社の上司にした。
バードウォッチングが趣味の上司は僕を本気で怒りバサーのマナーを非難した。
でもね、そんな事を言われても不可抗力のような気がするんだけど…
まあ世間の見方はそうなんだろうと思う。
 
この後、アホ池に行くたびに空を見上げてトンビを探すようになった。
引っかけた彼を探すためではない…
トンビがちょっとでも目に付けば釣りを中止するためだ!!
もうトンビは二度と釣りたくないからさ。