でも我々バサーにとっては早朝の釣りが期待できる、楽しみでならない胸が高揚とする状況だと思う。
そして僕はこういった時のBGMとして必ずレゲエが思い浮かぶんだ。
釣り場で知り合ったシライサンと一緒に釣りに行くようになった。
師匠以外の人と行くのは初めてだから、ちょっとした習慣の違いや考え方の違いが新鮮で楽しかった。
向こうも似た事を感じていたと思う。もう毎週毎週、当然のように一緒に釣りに行った。
なんせ、帰る道すがら次の週に行くところを二人で相談して決めていたくらいだったから。
たまに用事で行けないことがあると、とても落ち着かなかった。
何か凄く損をしている?ような気がするんだ。
まあとても密度の濃い時間だったと思う。本当に楽しかった。
釣行を重ねるにつれて二人の間でルールのような物が自然と出来た。
高速代、ガス代は事前徴収で割り勘!
確か5000円ずつを出し合って、余ったら車を出した方が貰う。
最初の一匹、もしくはナイスバスを釣った方にビールをおごる事!(これは凄い燃えた!)
フローターで釣るときは僕が車を出すこと。
これは僕の車にキャリアーが無かったのでそうなった。
ジョンボートはシライサンが持ってたから、ボートの時はシライサンの車だった。
僕はボートの方が好きだったから素直にシライサンの車で行く方が嬉しかった。
それともう一つ!
シライサンの車でかかるBGM…レゲエが聴きたくて仕方がなかったのもある。
シライサンの車はパジェロだった。凝り性だったからタイヤ、ホイル、バンパーを変えていた。
流行りではあったけどかっこよかった。(今でも僕はこの手の車に乗りたくて仕方がない)
当時としては先端のナビもあり、秘密の釣り場!がたくさん登録されていてとても羨ましかったなぁ。
そこまでしているのに何故かカーステはノーマル?なカセットテープだった。
当時ですら少し珍しい… 凝り性なのに???と僕は思ったけど、
本人は気にする風でなく2、3個のカセットをずっと聴いていた。
そしてそれが全部レゲエのテープだったんだ。
「サーフィンやってた頃に友達に作ってもろた…」
なるテープは色々なミュージシャンのが入っていたと思う。
僕はレゲエなんてロックミュージシャンがカバーした物を聴いた事位しかなかったから
本物は初めてだった。これがとても良いんだ!
選曲が良いのか、ミュージシャンが良いのかは今となっては解らないけど。。。
残念ながらシライサンには曲やアーティストは聞けずじまいだった…
何となく恥ずかしくて聞けなかった。
シライサンは僕がレゲエを気に入ってたのを知らないと思う…
僕がそんな事を一言も言わなかったから。
年をとった僕は、それを凄く悔やんでいる…
その他にも色々な事を伝えてない気がするんだ。
でもたった一人だけアーティスト名を聞いた事があった。
名前は「ホレスアンディ―」 前後の経緯は忘れてしまったけど、
一度だけどんなアーティストが良いの?って聞いた事がある。
シライサンはちょっとだけ考え込んで「ホレスアンディ―がええで!」って言った。
ほう!僕は何気なく流して聴いたふりをし、翌日早速買いに行ったんだ!
でも何処にも売ってなかった。
マイナーな人なのかなぁ~ってその時はそれっきりで終わってしまった。
(本当は超有名な人だったが…)

「夏の釣りは夜明け前に釣り場に着いてて、夜が明けるのを釣り場で待つ位で無いとアカン」
というのがシライサンの信念だったから僕たちの朝はとても早かった。
当時通ってた新成羽川ダムには行くのに数時間かかった。
という事は出発は12時!もう完全に徹夜だ。
真夜中の高速道路を飛ばした。もちろんBGMは例のレゲエのテープだ。
行く道中では二人で色々な話をした。バス釣りの事、道具の事、仕事の事、結婚の事など…
何故か真面目な話ばかりになった記憶がある。でも不思議と楽しかった。
でも明け方ころはきつかったなぁ。
単調な高速、クーラーの効いた車内、そこにもって催眠術のようなレゲエだった。
でも、この真夜中のレゲエとドライブは濃厚な思い出である。
釣りに関しては断片的に覚えているだけだが
この真夜中のドライブはとても印象に残っている。
そして年をとった僕はとても切ない気持ちになる。
結局、シライサンのレゲエは今でも曲名もアーティストも解らないままだ。
ホレスアンディーだけは判明した!
あの催眠術?って思った女性ボーカル?が実は男性ボーカル!?で
なんとそれがホレスアンディ―だったんだ。
このスカイラーキンはあのテープに絶対入ってたと思う!!
他には誰が入ってたんだろう?
僕のレゲエミュージックはあのシライサンのテープが全てである。
そして、もしもシライサンに何処かで会う事が出来たら…
本当にそうなればとても素敵だが…
あのテープ覚えてる?ってさりげなく訊いてみたいと思うんだ。