どうしたら、あのような夫婦になれるのか?
その方が亡くなった後、挨拶にきたご主人に聞いてみた。
『私たち夫婦はとても辛いことを二人でずっと乗り越えてきたんです。
楽しいことなんてほとんどなかった、本当に毎日毎日がつらかった、
でも今はその辛さにも感謝しています。あの辛い時期があったからこそ、お互いの大事さがわかるのです。
どんな形でもいい、目を開けなくてもいい、今一緒にいてくれるだけでいい、そう自然に思うのです。
美味しいご飯を食べに行ったり、旅行に行ったり、映画を見に行ったり、
そういう楽しいことなら誰とでも、いつでもできる、だから大して思い出にはならない。
逆に辛いことを乗り越えるには本当のつながりがないとできないのです
その見えないつながりができた時、存在するだけでいいという間柄になれるような気がします』
と話してくれた。
私はこのご主人の話に、夫婦の絆の真髄をみた気がした。
お互い辛い時間をともに乗り越える、
この先にしか真の幸せはないのではないかと思った。
ここで、私は彼と別れて気楽な生活に戻るのはとても楽だが、それで私は成長するのだろうか?
嫌なことばかり避けて通って人間力は上がるのか?
この人と別れて、優しい、隠し子の居ない、普通の人と恋愛して楽しい毎日を送ることが成長なのか?
私は私の人間力を確かめたくなった。
彼のことは好きだけれど、その恋愛パワーでこの辛い事実を乗り越えられるのか?
私は今まで自分の人生を一人で強く、清く、それこそ凛々と歩んで行くことになんの迷いもなく、自信さえあった。
しかしそれは一人の舞台だったからではないか?
自分の独力を過信していないか?
一人きりの社会(家族)でしかやっていかれないのではないか?
人の罪を許す心がないのか?
色々考えた。
そこで、私はこれを乗り切ってもう少し彼を見定めてみようと思った。
見ている間に嫌なところが、合わないところがでてきたら、そこでさよならすればいい。
そして私は言った。
私は今日限りもうこの話題は出さない、後からぐちぐちいつまでも責めたりしない。
これからのあなたを見させてもらう。
次にこの話題を話すときは彼女に認知をせがまれた時、二人で裁判をどうするか相談しましょう。
だからもう関係を絶って、連絡もきてもしないで。
そうしたら何事もなかったように明日から振舞う、
子供を意識しないで生きていく決心をするから、このことは許すから、といった。
あなたも私に黙っていて辛かったでしょ、
もう一人で辛い思いをしなくていいのよ、
と言ったら、ありがとう、と泣いた。
その翌日からは彼の実家で過ごすことになっていたので、実家に向かい彼の両親と楽しく過ごし、この話題は一切しなかった。
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