Googleの囲碁AI『AlphaGo』と樊麾 (Fan Hui) さんの個々の対局について
振り返ってみたいと思います。
主に、人間側の対局心理を推測します。
(注! 棋譜を見てるだけなので、まともな検討はしてません!間違ってたらごめんね)

2局目の棋譜は以下をご参照ください。

http://gokifu.net/t.php?s=2471453923560601

黒:AlphaGo
白:樊麾 (Fan Hui) さん


黒7から大ナダレ定石へ。

黒31と白32の交換は今打つ必要がなくて、はっきり悪手のはず。

18-Nに黒が押さえることができるような展開になった際に、上記交換を打っていなければ

右上隅の白に1手手入れが必要となるので。


白40、42は雰囲気が出ていて、これはさっきの「18-N」が右上の白に利かなくなってしまった

ことを最大限に咎めようとしているので、好感。


白46~54は・・・他にも方策はありそうだけど、まぁよしとしましょう。

ただ、実戦の白58はどうにもどんくさくて・・・こんな感じじゃないの?と。




黒63から急にパワーを発揮されて、白があっという間にピンチになってしまいました。

白70とタダでは取られまいと画策してみましたが、黒85まで完全にとられてしまっては、

多少外勢を得たとしても、割に合いません。


おそらく、黒31というはっきりした悪手を見て、少し安心してしまったのではないかな?

そして、勢い込んだところで、自分の失着から形勢を損ねてしまった。

これは、自分への後悔が半端ではない、というところでしょうね。


以降、右下の折衝、左下の折衝、落ち着いたものです。

おそらく、部分的により良い手があるのかもしれませんが、黒がはっきり優勢を維持した

ままであるという点で、形勢判断がしっかりしていると評価できると思います。

非常に簡明で堅実な石運びです。


そして、黒139~149と中央白地の削減の仕方は、とても人間らしい。

というのは、左方(黒139~白144のあたり)と上方(黒145~白146のあたり)の形を決めず、

いわゆる「(嫌)味」や「利き」を残した状態で下方からの削減をしかかっているところが、

余韻を残した打ち方という感じがするのです。


白150からは、無理を承知で最大限囲おうとした、最後の勝負手。

でも、完全に応対されて、つぶれてしまいました。


序盤、白の調子がよさそうに見えただけに、急に形勢を損じてしまい、その後しっかり

押し切られてしまったような碁を打ったことは、樊麾 (Fan Hui) さんにとっておそらく

もっとも後に残る負け方であったのではないかな、と思います。


それは、3~5局目の内容を見た後だから、いえることかもしれないけど。

Googleの囲碁AI『AlphaGo』と樊麾 (Fan Hui) さんの個々の対局について
振り返ってみたいと思います。
主に、人間側の対局心理を推測します。
(注! 棋譜を見てるだけなので、まともな検討はしてません!間違ってたらごめんね)

1局目の棋譜は以下をご参照ください。

http://gokifu.net/t.php?s=6621453923505849

黒:樊麾 (Fan Hui) さん
白:AlphaGo

黒7のコスミはいわゆる「これで1局打ってみよう」というやつですね。
おそらく、以下のような意図があったと思います。

 ・少し古い定石(最近のプロの対局にはほとんど出現しない)を使用した際の
  リアクションを確認したい。
 ・最初から大型・長手数の定石を選ばず、布石としての着手候補が多い局面に
  することで序盤感覚の精度を図る。
  (ちなみに、囲碁界での慣用句としては「手広い局面」などと表現します)

これに対し、白30までの流れに違和感はなし。黒31も「手広い局面」としたい
意図を一貫して感じます。

白36ツケ。これを打たれた瞬間に樊麾 (Fan Hui) さんはおそらく「あっ、これは
容易には勝てないかもしれないぞ」と思ったはずです。

 ①-1 黒35の時点で、左辺の黒模様を荒らす方針が必要。
 ①-2 左辺の黒模様を荒らす際、速やかに白が安定する流れを作る必要がある。
 ② 上辺、下辺、右辺の白は強固であるため、左辺に白が打ち込んだ場合でも
    安定させるために専念できる(他方の白石への悪影響を考慮する必要が少ない)。
 ③  左上の黒石と左下の黒石は、左下の黒石の方が弱い。

①-1だけを考慮すると、10-Dなどとぼんやりワリウチをするような発想になるでしょう。
これは、対戦相手としては脅威になりません。

①-2を前提としたときに、さらに周辺情報の精査が発生します。
このとき、②の状況が読み取れると、左上、もしくは左下の黒にツケる/モタれる等、
プレッシャーを与えることで打ち込んだ白自身の強化を図ります。
ただし、デメリットとしては、相手の黒石も強化され、他方の白石への悪影響が発生
する可能性があります。

左上、左下のどちらにプレッシャーをかけるべきかと考える際には「すでに強い石は
より強くさせても問題ない。弱い石を強くさせてはならない」というセオリーがあり、
今回のケースでは左上の黒の方が比較的強いと見ます。

ここまでの思考は、おそらく私程度(トップアマ)の習熟者で10秒もかかりません。
(ほぼ、直観的に判断できる)
その後の候補手が2~4種程度あるので、そこからは読みの世界になります。
ただ、白36ツケは正解ではないか、と感覚的には思います。

黒43の打ち込みはこの1手で、数少ない白の隙の1つです。

白70。茫洋とした手で評価が難しい。
上辺の白の一団をフォローしながら、中央の白地経営を狙っていることは理解できます。
このあたり、まるで人間と打っているような感覚をつきつけられて、逆に樊麾 (Fan Hui)
さんは不気味さを感じたのではないでしょうか。

白84、少し鋭い踏み込みです。
黒からすれば、瞬間的には「生意気な」と感じたのでしょう。黒85は白84を咎めにいった
ものですが、おそらくこれは黒の方が悪手を打ってしまっている。
白90がぴったりで、きれいに中央が止まってしまいました。
人間の焦りを感じます。

白128。ちょっと気が付きにくいところでしたが厚そうなヨセ。
次の白130が狙いの筋で、白134までうまく犠打を決めてヨセで得をしたように見えます。

以降のヨセはきちんと判断できていませんが、お互いに大過なく打ち進めている印象。

結果、白の3目半勝ちなので、黒が良かった瞬間があまりなかったかもしれません。
樊麾 (Fan Hui) さんはおそらく、AIがこの1局のどこかで「AI特有」の癖、あるいは
弱点を見つけられると踏んでいたはずですが、これが見当たらなかった。
ここでの誤算は、のちの対局の精神状態におそらく影響したと推測します。
今日一日で、だいぶGoogleの囲碁AI『AlphaGo』についていろんな報道、記事が出ましたね。
人工知能寄りの話はこれから勉強せねば・・・というところで、僕は対局内容について書いてみようかと。

■樊麾 (Fan Hui) さんについて
 ・中国プロ2段
 ・Europe Go Congress で三年連続優勝
 ⇒ひいき目に見ても、僕と同等以上の実力があると見てよいでしょう。
   ただ、これまで僕が打ってきた中国低段プロの方と同程度とすれば、
   プロ基準では「そんなに強くはない(平均未満)」というところでは
   ないかな、と思います。

■対局条件
 ・1手30秒の秒読み
 ⇒感覚的には、ちょっと人間に厳しい条件かなぁ。
   もし、AIが30秒も使わずノータイムで着手してくるとすれば、人間側の
   体感的には20秒碁を打ってるような感覚に近いのではないかな。

   30秒という制限の中では、棋士がこれまで蓄積してきた既存の概念を
   ベースに、引き出しをあけていく感じです。
   もし、持ち時間が3時間もあれば、アドリブで(事前の研究はしてるにせよ)
   新しい概念を生み出せる、樊麾 (Fan Hui) さんより上の実力者はまだ相当に
   います。
   『AlphaGo』が、上記のような新しい概念に遭遇した時に、どのような着手を
   選ぶのか、というのは興味がありますね。

   余談ですが、プロの打ち碁並べをするならNHK杯などの早碁がオススメです。
   1手30秒という限られた時間の中では第一感で打たざるを得ず、特に序盤~中盤
   にかけての構想においては非常に常識的な展開となる可能性が高いためです。


■全5局の対局について
 ⇒『AlphaGo』は総じて「ソツがない」印象でした。ときどき「ほほー、勇気あるな」
   というような少し思い切った手を打ちますが、想定の範囲内ではあります。
   部分的な読みの深さも、かなり精度が高そうです。

   一方の樊麾 (Fan Hui) さんは、1試合目では非常に冷静な展開を選び、ヨセ負け
   しているため、2試合目~5試合目はいずれもどこかのタイミングで無理気味な手を
   打ち、とがめられてしまっている感じ。
   これは時間設定が人間に厳しいとみれば、考えうる展開の1つではあるなぁ。

次回以降、それぞれの試合毎に内容を見てみようかなと。

(2016年1月29日追記)
Twitterにて囲碁ライターの高木秀和さんより、以下のコメントがありました。
「村上深さんのブログ、条件は持ち時間30秒ってなっていたけど、60分プラス30秒3回だと思われ…。根拠は開発者のAjaさんがfacebookに書いた中文。中国語なので全く自信はありませんが、ダウンロードしたSGFの持ち時間は60分になっている。」

なるほど、さすがに30秒では人間が厳しいですね。
60分プラス30秒3回とみれば・・・ちょっと、序盤で形勢を損ねるケースが多いのが気になります。
まぁ、異常に強いコンピューターに人間代表としてひそかに立ち向かった、という状況を鑑みれば、多少の勇み足が出るのは仕方ないのかも。