サッカーW杯の日本VSポーランド戦でのパス回しにはいろんな意見がありますね。

まず最初に断っておくと、僕は「覚悟をもって決断した」という1点において評価しています。

サッカーはど素人ですから、戦術的な判断はできません。



マリーシア(wikipedia) という言葉があります。

端的には「ずる賢さ」を意味するようで、国や人によってこの「ずるさ」+「賢さ」の度合い・意味合いが微妙に異なってくるもののようです。


囲碁の対局においてもマリーシアは存在すると思っています。

ハメ手や置き碁においての下手ごなしといった、知識の有無に拠る方法もありますが、スタンダードなものの1つに「時間攻め」があるでしょう。


こんな話を聞いたことがあります。

「時間切れ即負けの場合は、ヨセで1線のハネツギに対して守らないことで、試合を長引かせる」

どういう意味か。


 このような黒1~白4というヨセが普通のハネツギで、一段落です。


しかし、黒の時間がもし切れそうだというときに、あえて白は守らない。

そうすれば、黒5と切ってきたときに試合が長引いて、結果として黒は時間切れになる、ということです。



どう思いましたか。

僕は「汚い、あまりにも汚すぎる」と思います。


上記はいかにも極端ですが、時間切れ負けというレギュレーションであった場合に、相手のミスを期待して良識の範囲内で(?)打ち続ける、というのはよくあることです。

結局は程度問題、と言えてしまいますね。


昨日、朝日アマ名人戦の準々決勝で、挑戦権を獲得した栗田くんに対して、僕は時間攻めを仕掛けました。

持ち時間は40分、使いきると1手30秒ということで秒読み付きですが。




この局面で、僕(黒)の残り時間は10分弱、栗田くん(白)の残り時間は1分半ほど。

僕は白にAと打たれるのが嫌で、勝負手として黒3のところにすぐにでもツケたかった。

ただ、勝負所に突入する前に、相手の時間をつぶしておきたい、とも考えたのでした。


そこで、先に黒1と右辺にケイマをしました。

この手自体は、僕は良い手だとは思っていなかった。

ただ、中央をやわらかく囲うような手で評価がしづらいハズなので、相手はおそらくある程度時間をかけるだろう、と予想していました。

そして、案の定白はここで時間を使いきり、黒3と勝負をかけることができました。


この後の折衝は、ほぼ黒はノータイムに近い応対をして相手に考える時間を与えず、結果としてかなりの戦果をあげることができました。

僕はこの対局のこのシーンで、盤上の手の優劣以外の要素も加味した作戦を立てて実行できたことは、自分自身にとっての成長と捉えられたし、マリーシアと言えたのではないかと思ったのです。




僕が3年前、脱サラをして囲碁の世界に戻りたいと、会社のある上席に相談した時に「もっと狡猾に生きたらどうだ」と言われました。

今となっては真意を聞くことはできませんが・・・おそらく、もっと器用に生きること、サラリーマンという職業のまま余暇で囲碁を楽しめばいいじゃないか、という意味合いが強かったでしょう。


素直に生きること、ずる賢く生きること、別にこれらは相反するものではなくて自分の心の中に同居して混沌としていると思います。

少なくとも、サッカー日本代表の西野監督が衆人環視の大舞台で、自らの「ずるさ」・・・それも僕のようなど素人がパッと見た時に「賢さ」から縁遠く見える行いを決断したということは、想像するに余りある苦痛があったのだと思うのです。

だから、その覚悟は見習いたいと思ったのでした。


大人ってずるいものさ、そういう自分を見たがらないものだからさ。

(後半まとまらなかったのでお茶を濁す)