こんばんは。

 

前の記事でお伝えした通り、この土日は「第10回UEC杯コンピュータ囲碁大会」でした。

1日目の18日(土)は30プログラムが変則スイス方式戦の7回戦を行い、上位16プログラムが選抜されます。

2日目の19日(日)は選抜16プログラムのトーナメント戦が行われました。

 

結果は以下の通りです。

優勝     :Fine Art(絶芸)

準優勝     :DeepZenGo

3位     :Rayn

4位     :AQ

5位    :Crazy stone

6位    :Aya

7位    :CGI Go Intelligence

8位    :DolBaram


まず、上位4プログラムのうち、初参加が2プログラム(絶芸、AQ)でRaynも昨年参加のRayというプログラムが進化(?)したもので、半分別人(別プログラム)のようなものみたいです。

DeepZenGoの開発チーム代表である加藤英樹さんの表現を借りれば「上位4プログラムのうち、2.5プログラムが新顔で隔世の感」ということのようですね。


一方、5位~8位は過去の上位入賞常連プログラムといったところで、このあたりはある意味安定感はありますが、昨年から比べてもさほど伸びていない。

アマチュア5~6段レベル相当で、これは私でも負ける気はしない、という感じでした。


また、他のプログラムでは「シチョウを逃げ出す」や「367目半負け(!)」の碁があるなど、殺伐とした碁もある一方でほのぼのと牧歌的(?)なところもあり、なかなかごった煮感がありました。


■1日目の様子


大橋プロのスペースマンでGO! で3月18日(土)当日の様子をお伝えしました。

※ニコニコ生放送へのリンクです。リンク切れはご容赦ください。(youtubeへ転載予定)

※放送開始15分ほどは音声トラブルにより無音です。申し訳ございません。


○「AQ」について


今大会で私がもっとも目を引いたのは、「AQ」でした。

開発者の山口祐さんは東大将棋部OBで、19路の囲碁プログラムを開発したのはたったの半年間とのこと。

また、個人ベースの開発ということですから、組織的な背景もないらしいのです。


棋譜がまだUEC杯の公式ページにアップされていないのでご紹介が難しいのですが、1日目の第4試合にZenとAQが激突した碁は、かなり競っていたように見えました。

その1局を見た瞬間の私の感想は「私ではAQ相手に勝つ自信はない」でした。


すい星のように現れた「AQ」が開発を続けるのか、どのようなアクションがあるのか興味深いです。


○「絶芸」について


「絶芸」は中国のインターネット対局場「野狐囲碁」でここ数か月はしょっちゅう世界最高峰のプロ棋士たちと激闘を繰り広げていました。

その勝率は、1手20~30秒の碁ではおおよそ9割、60秒の碁では8割といったところだったでしょうか。


UEC杯の現場で聞いた話によれば、「野狐囲碁」の絶芸はテストバージョンで、本大会参加の正式版はさらに強いのだと。

ハッタリでなければ、これはとてつもない話です。


○Zen vs 絶芸


1日目の予選リーグ最終局で、注目のカードが組まれました。

内容としては・・・絶芸の読みが、Zenを終始上回った、と言って良いでしょう。

序盤の折衝で、すでに打ちにくくなってしまい、そのまま寄り切られた印象です。


図1


白の絶芸が白1,3と下辺に深く、深く突入したところ。

まだまだ広いところのあるこの序盤で、こんな狭いところをこじあけていくのかと、ちょっとした衝撃でした。


■2日目の様子


準決勝から観戦してきました。

絶芸 vs Ryanは絶芸の圧勝でしたが、Zen vs AQは熱戦でした。


○Zen vs AQ


図2


△に白がツケたところ。

サバキの手筋ですが・・・。


図3

黒1~7と、タネ石(?)かと思われた黒1子を取らせ、まとめて攻める作戦に!

観戦していた酒井猛先生は目を丸くしていましたが、この力強さ・・・あるいは芋臭さはいかにもZenらしい。


このあと、黒が本気で白を取りかけにいき、白はしのぐチャンスがあったのですが、非常に難解な読み合いをZenが制して大石を殺し、なんとか決勝に駒を進めました。

○Zen vs 絶芸


1日目の対局よりも内容としては競っており、期待通りの熱戦といえました。

序盤、思いもよらぬ変化からフリカワリ、個人的にはやや白番の絶芸が良いとみていましたが、よく食らいついて行っていました。

王メイエン先生が近くにいらっしゃったので、会話しながら観戦していたのですが、中盤のある局面のZenの打った手を見て、急にメイエン先生の集中力が切れたのが、感じられました。


図4



黒番のZenが左上の白を追及していたはずの局面で、フッと右側をやわらかく(?)守るような黒1のケイマ。


「メイエン先生、この手は・・・守って黒が足りてるってことですかね?」

「こういう手を打ってちゃ、碁は勝てないんだよ」


まあ・・・わかります。


読みの力、というのは限られた時間内にどの深さまで読めるか、というものなので、棋譜だけから類推することは難しいのですが、着手の早さなどから、絶芸がややZenを上回っているような気がしました。

でも、これはあくまでも気だけ。


しかし、私の感性では、Zenの打ったいくつかの手については「それはどーなの?」というツッコミが入れられる局面があるのですが、絶芸のそれに隙らしきものを見つけることができませんでした。

それって、相当強いってことですよね。


■囲碁AIの技術に対する妄想


韓国記事(翻訳)


上の記事には「中国の絶芸は、大企業テンセントが100億以上を投資して開発している。」とあります。

韓国記事の翻訳ですから、単位がウォンだとすれば、約10億円以上ということでしょうか。

1つのプログラムを作るのに10億円というのは小さな額ではないですが、大企業のプロジェクトとしてはそれほど大きいというわけでもないですねえ。


Deepmind(AlphaGo)やテンセントといった、大きな組織が作るAIと、個人あるいは小集団が作るAIでは、碁打ちの感覚としては、なにか一線を画する技術があるような気がしています。

あまりに彼ら完成されすぎていて、囲碁AIが原則的に持っているはずの弱点がまったく表面化していない。

なにか魔法のようなものがあるのかと、そう思ってしまう。


たぶん、良いところが見えすぎて、その弱点が隠されているだけだというのも、頭では理解できる、のですけどね・・・。


■ワールド碁チャンピオンシップ


もう、火曜日に開幕ですか。

昨日今日とみたzenであれば、1勝できるかな、という感じでしょうか。

ただ、UEC杯でのバージョンともまたちょっと違うZenらしいので、改めて良い碁を見せてくれることを期待しています。


そろそろいい時間なので、このへんでおやすみなさい。