地獄の35 分間!ナスカの地上絵空撮体験。
「ペルーへ行ってきました」と話して、真っ先に尋ねられることのひとつが「ナスカの地上絵を見たのか」ということでしょう。そしてそれを見てどう感じたのか、と。この場合「神秘的な美しさに心を洗われたような感じです」とでも答えるのが"理想的"なのだろうけど、それどころじゃなかった、というのが正直なところ・・・あんなにひどい気分を味わうことになるとは・・・。
【リマ→ナスカ】ナスカはペルーの首都リマからおよそ450Kmのところにある。最寄の街イカへは長距離バスを利用。バスは"エコノミー""ビジネス""ロイヤル"という3つのクラスがある。最上級のロイヤル・クラス(料金たったの2千数百円)でイカの街を目指す。この写真はバスの"車内食"。味は悪くない。シートも幅広のレザー張りで乗り心地も快適。いくつもの街を過ぎ、山を越え、およそ7時間をかけてイカに到着。

イカのバスターミナルで出会った案内人(というか客引き?)レナ嬢に促されるままタクシーに乗り、まずはホテルへ向かう。彼女は片言の日本語を話す、ぽっちゃりしたなかなか可愛らしい女性なのだが息がニンニク臭くてたまらない。写真はイカの街中。こぢんまりとした素朴な街だ。右は街の中心、アルマス広場。部屋に荷物を置き、撮影の用意をして、再びレナの案内でタクシーに乗り飛行場へ向かう。
【飛行場へ】
5分も走らないうちに飛行場に到着。飛行場といってもただ滑走路がひとつと、事務所と待合室の小屋があるだけ。実際に見るセスナ機は思っていたよりもさらに小さい。飛行機に乗るのがただでさえ怖いのに、こんな小さな頼りない飛行機に乗らなくてはいけないとは!書類に必要事項を記入して飛行機の準備ができるのを待つ。待合室ではナスカを紹介する日本語版のビデオが流されていて、レナがビデオを観ろとうるさいのだがこちらは緊張して落ち着かなくて、腰をかけてビデオなんか観ていられる気分ではない。待合室の前をウロウロと歩き回り、ポケットからデジカメを取り出して、駐機しているセスナを記念に一枚。
【搭乗、離陸】セスナの準備ができて乗り込もうとしつつふと見ると、セスナの後ろのタイヤは空気が抜けていてフニャフニャじゃあないか!これじゃあまるでドナルド・ダックがアニメの中で乗る飛行機と変わらない!ちょっと、おじさん!セニョール!こんなでいいのか!?・・・。機内は軽自動車の車内よりも狭い。ドアを閉めると蒸し暑く、息苦しかった。パイロットがエンジンをスタートさせる。ぶろろろろろろろろ!!!すごい騒音だ。セスナはまるで近所へ買い物にでもでかけるかのように、滑走路をトコトコと走るとおもむろに、ふわりと離陸した。【地獄の空撮】
上空から見る景色は素晴らしいとしか言いようがない・・・はずだった、しかし、絶えずフワフワと不安定に揺れる機体。恐くて景色を見るどころではない。数分飛んだところで、パイロットが下界を指差した。その方向をよく見ると、あった、地上に描かれた巨大な鳥の絵が、夕日の斜めの光線に浮き上がっている。地上絵のほぼ真上に到達すると、パイロットは機体を大きく傾けて、地上絵の上を旋回した。地上絵がよく見えるようにするためである。ところが・・・この旋回が恐ろしく不快なのだ。遠心力のため身体に強い重力がかかり、全身の血がみんな下半身に流れてしまう。血の気が失せて頭がクラクラする。写真を撮らなくてはならないのに、思考回路がまともに働かず、カメラの操作も覚束ない。それでも気合を入れて何とかシャッターを押し続ける。ひとつの地上絵を1~2週旋回するとまた次の地上絵へ、そしてまた次へ・・・気持ち悪い~(;_+)最初に感じていた恐さなどすっかり忘れ、地上絵の神秘に感動する余裕すらなく、ただひたすら耐えてシャッターを押すのみ。1本目のフィルムを撮り終え、フィルムの入れ替えをしなくてはならないのだが、普段なら何でもない動作がこんなに難しいとは!必死でフィルムを装填して再びシャッターを押す。構図?ピント?絞り値?シャッター速度?露出?気にしてられない(><)とにかくシャッターを押すだけでせいいっぱい・・・・。
【生還】
こうして永い永い35分間の空撮を終え、地上に降り立った時にはもう、顔面蒼白の生ける屍と化していたのである。地上で出迎えたレナに「Are you sick?」と心配されつつ、ホテルへ戻るためタクシーに乗りこむ。レナの息がさっきにも増してニンニク臭く感じた。一体どんな写真が撮れているのだろう・・現像のアガリを見るのがコワい。。。