ぺぺたちは、朝食後村をあとにすることにしました。
サーラは、調子が悪いと言い、みんなとの食事は避けました。もちろんこれは、神父さんにも自分のことがばれないための、口実です。
サーラは、頭巾とマントをし、耳と羽根を隠しました。
村をあとにした、一行は何処へ行けばいいのか、悩んでいました。
ぺぺ「こういうときは、木の枝を放り投げて、とがったほうが指す方向へ行けばいいんだ。」
アロク「意外なような、そうじゃないような。」
ぺぺ「ん?」
アロク「いや、何でもないんだ。それで決めるなら、早く決めて行こうぜ。」
ぺぺ「じゃあ、行くよ。」
ぺぺが、空高く木の枝を放り投げると、村から北西の方角を指すように、枝が地面に落ちました。
アロク「決まりだな。」
一行は、歩を進めました。
しばらく歩くと、険しい山々が見えてきました。
と、山の方から、凄まじいほどの風が吹いてきました。
ぺぺ「な、なんだ、これは…。立ってられない。」
アロク「これは、この地方で有名な、旅泣かせの風って言われているんだ。運が悪いな。ひとまず、引き返そう。」
サーラ「来る途中に立っていた、大きな木のところまで戻りましょ。」
ぺぺ「そうしよう。
くくっ。」
風は、一定の感覚で、山の間から麓へ吹き付けており、その風は凄まじく強かった。そのため、動物もいなければ、建物すら建っていない。風が強く当たるところには、草木もあまり生えていません。
しかし、不思議なことにその地帯は砂漠化には、なっていませんでした。
しばらくして風が弱まり、ぺぺたち一行は、再びその地帯を横断した。
しばらくすると、湖が見えてきました。側には、街らしきものが見えてきました。
ぺぺ「今日は、あそこで宿をとろう。」
アロク「そうするか。」
正面には、大きな門が構えてあり、両側には2人ずつ門番が立っていた。
門をくぐると、市場があり、賑わっていた。
ぺぺ「食料を少し買おうか。」
アロク「硬貨持っているのか?俺は、ないぞ。」
ぺぺ「大丈夫。僕が持ってるから。」
ぺぺたちは、何日分かの食料を買い込み、宿へと向かった。
幸いにも、2部屋空いており、ぺぺとアロク、サーラに分かれ休むことにした。
その晩、アロクは酷く寝汗をかいていた。
姉「フフフ、アロク、こっちにおいで。」
アロク「姉さん、待ってよ。」
姉「ほら、早く。置いていっちゃうよ。」
アロク「置いていかないで。」
突然、目の前に両親が現れました。
父「この、家の恥じさらしが!」
母「お前なんか、産むんじゃなかったわよ。」
姉「だから、早く来いって言ったのに。」
父「お前は、俺の子でもなんでもない。出ていけ!」
母「あんたなんか、早くいなくなればいいのよ。」
父「出ていけ!出ていけ!出ていけ!出ていけ!……。」
母「いなくなれ!いなくなれ!いなくなれ!いなくなれ!……。」
姉「アハハハハハッ!アハハハハハッ!……。」
アロク「嫌だーーー!」
ぺぺ「…ク、…ロク、アロク、アロク!アロク!」
アロク「うわああぁ~。」
ぺぺ「アロク、どうしたんだ。大丈夫か?」
アロク「あ、ああ…。酷い夢を見た。たまに、見るんだ…。ありがとう、ぺぺ。」
しばらく間を置いて、アロクはぺぺに喋りかけた。
アロク「ぺぺ。俺は、昔、家族に捨てられたんだ。」
ぺぺ「………捨てられた?」
アロク「俺の家族は、いや、俺の家は、代々優秀な商人の家柄だったんだ。でも、俺の出来があまりにも悪いがために、俺をゴミのように捨てたんだ……うぅっ。」
アロクの瞳からは、大粒の涙が溢れ出した。
ぺぺ「………アロク…。」
アロク「ごめんな。
それから俺は、街や村を転々とし、野良生活を送っていた。盗み、喧嘩、荒れまくっていた。しかし、そんなときに、今までお世話になっていた夫婦に出会ったんだ。」
アロク「いつものように、家に盗みに入ったんだけど。
入ったはいいが、何度やっても出られないんだ。あとでそれが呪文だと分かり、それから俺は、その人に呪文を教わりたいと思ったんだ。
それからだ、俺はこころを入れ替え、まずはあの人に認めてもらえるように努めたんだ。」
ぺぺ「そんなことがあったなんて。」
アロク「おっと、同情はいらないよ。同情なんかされると、辛くなるだけだからな。」
ぺぺ「もう寝よう、明日もあるしね。」
アロク「ああ。
でも、聞いてくれて、ありがとうな。」
ぺぺ「そんな、いいよ。」
※この物語はフィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。