村の鐘が、激しくなった。
邪悪なものが襲ってきた。
どこからか、この村に2人がいるのを察知したのだろう。
しかも、数匹でやって来ました。
村長「かぎつけられてしまったか。」
ペペは、サーラに逃げるように言い、村はずれまで出ていきました。
ペペ「ここに予言書がある。お前たちの狙いは、これだろ。」
邪悪なもの「何を言う。今は、お前の予言書よりあの小娘だよ。村をしらみつぶしに捜すだけだ。」
ペペ「そうはさせない。
風の力を司るものよ。我にその力を与えたまえ。」
呪文を唱えると、ペペは宙に浮かび、村全体を包むように風が覆った。
邪悪なもの「ちっ、こしゃくな。
水を司るものよ。我にその力を与えたまえ。」
そう呪文を唱えると、指先から凄まじい勢いで、次々と水を刃物のような感じで出していった。
しかし、ペペの方の力が強く、邪悪なものが唱えた呪文を跳ね返しました。
邪悪なもの「くそ、みんなでぶつけるぞ。」
5体一斉に呪文を唱えた。
今度は、邪悪なものの方が、勝りました。
ペペ「ま、まずいな。どうしよう。サ、サーラァー!」
しかし、村の人たちは、ペペが呪文で村を守っている間に、避難していました。
教会には、地下の抜け道があり、神父さんがみんなを誘導し、避難していました。
しかし、ペペはそんなことは知りませんでした。
気付けば、夜が明けてきました。
ペペは、覚悟を決めました。
「火を司るものよ。我にその力を与えたまえ。」
そして、ペペは火の力で弓を作り出し、次々に放っていきました。
「ぎゃあ~~~。」
邪悪なもののうち、2体に命中し、倒すことが出来ました。
しかし、まだ3体残っています。
邪悪なもの「土の力を司るものよ。我にその力を与えたまえ。」
そう唱えると、ペペの周りに巨大な土柱が出来、そしてペペに襲いかかりました。
ペペ「うわああぁ~~~。」
ペペは、とっさにうつ伏せになり、身を小さくしました。
予言書で口を覆い、呪文を唱えました。
「水の力を司るものよ。我にその力を与えたまえ。」
ぺぺの体から、大量に水が出てきました。
どんどん、ぺぺの周りから土がなくなっていきます。
いえ、水で押し流したというほうが、正しいでしょうか。
ぺぺの姿が、現れました。
「ハァハァハァ……。」
呪文を唱え、かなり精神的な力が弱くなりました。
ぺぺ「さっきので、かなり体力を使ったか。」
邪悪なもの「ハハハ、もう限界か。それでも、予言書の持ち主か。」
ぺぺ「く、くそぅ~。」
そんなときでした。邪悪なものたちの後ろから、無数の矢が飛んできました。
邪悪なもの「ぐ、ぐうぅ~。」
あっと言う間に、3体は倒れました。
ペペは、矢が飛んできた方向に目をやりました。
?「何だよ。頼りないなあ。」
ぺぺ「君は誰?」
?「俺か?俺はお前と同じ、予言書を持つもの。名前は、アロク。」
アロク「しかし、君。」
ぺぺ「ぺぺです。」
アロク「ぺぺか。ぺぺな、もっと精神力鍛えないとな。」
ぺぺ「はい、すみません。」
アロク「アッハハハ。そんなに、かしこまらんでも。これから、一緒に旅をするんやし。」
ぺぺ「え?
一緒にしてもらえるんですか?」
アロク「そうじゃないと、君一人だったら、邪悪なものを束ねてるやつ、倒せないだろ。」
ぺぺ「それも、そうですね。
あの、歳はいくつですか?」
アロク「え?いきなりどうした?
まあ、18だけど。」
ぺぺ「じゃあ、先輩ですね。僕は、16です。」
アロク「2こしか変わらないのに、そんなにかしこまらんでもいいよ。」
ぺぺ「いえ、そういう性格なんで。」
アロク「アッハハハ。なかなか気に入ったよ、ぺぺ。よろしくな。」
ぺぺ「はい。よろしくお願いします。
あ、それはそうと、村のみんなが心配です。」
アロク「村には、誰もいなかったぜ。もう、逃げたんじゃないのか。」
ぺぺとアロクは、北にしばらく歩いていくと、手を降っているのが見えました。
サーラ「ぺぺ、ぺぺ。無事だったのね。その人は?」
ぺぺ「実は、危ないところを助けてもらったんだ。予言書を持つもので、アロクっていうんだ。」
アロク「よろしく!」
サーラ「サーラと申します。よろしくお願いします。」
ぺぺ「ところで皆さん、どうしてこんなところにいるんですか?」
神父「あの教会には、地下道があって、そこからみんな避難したんです。」
ぺぺ「そうだったんですか。
でも、もうこれ以上、迷惑をかけるわけには……。」
と、言ってる途中でサーラが遮り、
「お願いです、村長。今日が、満月の夜なんです。明け方には、出発するのでもう少し居させてください。」
と、頼み込みました。
村長「いいですよ。もう、乗り掛かった舟だ。居なさい。」
サーラ「ありがとうございます。」
アロク「何か、俺だけ置いてけぼりなんだけど。」
ぺぺ「村に戻りながら話すよ。」
村への帰り道、ペペはアロクにこれまでの経緯(いきさつ)と目的を話した。
アロク「なるほどね。で、その“一人前”ってのが、今日なわけだ。」
ぺぺ「それは、僕にも分からないよ。サーラ以外、誰にも分からないんだ。」
そして、その夜。
ぺぺ「サーラ、緊張してる?」
サーラ「緊張というより、不安の方が大きいわ。
月が真上にきたときが、その時なの。アロクは?」
ぺぺ「イビキかいて寝てるよ。」
サーラ「そう。
ぺぺ、一緒に来て。」
サーラはそういうと、ぺぺを外へ連れだしました。そして、村外れの大きな木の下まで行きました。
サーラ「実は、“一人前”になる手伝いをしていただける人っていうのは、ぺぺらしいのよ。」
ぺぺ「え?」
サーラ「お婆様の占いにはね、こう出たの。
最初に、予言書を持つものがお前の力になるだろうって。」
サーラ「そろそろよ。
私の両手を握って。」
ぺぺ「え?」
サーラ「あまり時間がないわ。早く。」
ぺぺ「分かった。」
ペペはサーラの両手をとりました。
そして、サーラは、
「目を閉じて、私の唇に口づけて。」
と、言いました。
ぺぺ「え?えぇ?そんなきゅうに……。」
サーラ「お願い、早くして。時間がないの。」
ペペは、覚悟を決め、サーラの唇に自分の唇を重ねました。
すると、サーラに月のひかりが降り注ぎました。
サーラの髪が伸び、耳は少しとんがり、背中には真っ白な羽根が生えてきました。
ぺぺ「あ、あああ、ああぁ。」
言葉になりませんでした。
サーラ「ありがとう。これで、“一人前”の天使に成れたわ。」
ぺぺ「き、き、き、君は……
ゴクッ!(生唾を飲み込みました)」
サーラ「びっくりさせて、ごめんなさい。私のお婆様も天使なの。
私は、そう…
天使だったの。」
ぺぺ「全く、分からなかった……。」
サーラ「でも、耳当てとマントが必要だわ。
天使だとバレたら、邪悪なものにすぐに殺されるわ。」
ぺぺ「分かった。とりあえず、マントは何とかなるとして、耳はしばらく何かで隠そう。」
サーラ「ありがとう、ぺぺ。
本当にありがとう。」
ぺぺ「とりあえず、村に戻ろう。」
ふと、予言書を開くと、次の予言が表れた。
「次なる、新しい出会いがあるだろう。それらと共に、これからさらに厳しい戦いが待ち受けるだろう。」
※この物語はフィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。