近所のおばさんから聞いた、衝撃的な話。
昨日、老婆はどこかの病院に入院したことでした。
話によると、牛乳配達に来ている配達人が、カーテンが開いたままの窓をたまたま見ると、床にうつ伏せで倒れている老婆を発見したということでした。
私は、おばさんにどこの病院に入院しているか聞いてみましたが、おばさんも分かりませんでした。
私は、愕然としたのと同時に、せっかく仲良くなりかけていたことを、このままでは終わりたくないと思いました。
私は、老婆の名前をおばさんに聞き、見舞いに行こうとこころに決めました。
この街の病院に、片っ端から電話をかけ、入院しているかどうかを調べました。
すると、とある病院にいることが分かり、早速行こうとしました。
が、看護師さんから、
「今、ICUに入っていまして、面会は出来ません。」と言われ、更に動揺しました。
しかし、私は見守りたい。その一心から、花束を買い、電車に乗り、病院へと向かってました。
すると、家族の人が集まってました。
私は、てっきり一人だと思い込んでいました。
私は、思い切って声をかけました。
「あの~、ご家族の方ですか?」
男「ええ、息子ですが。あなたは。」
私「あっ、私、仲良くさせていただいていた者です。」
男「母が!あなたに!私達にですら、こころを開かなかったのに。」
私「すみません。」
男「あっ、いやいやごめんね、あんな言い方して。ただ、不思議に思ったから。」
私「いえ、私の方こそ、押し掛けてすみません。私は、あの人がひとりぼっちだとばかり、勘違いしてしまって。」
男「じゃあ、何か聞いたんだね。」
私「ちょっと昔話を…。」
男「母は、父がいたから、立ち直れたんだ。もし、一人だったら、今頃はいなかったかもしれません。だから、私と弟もこうやって存在してる。」
私が聞いた昔話を察知して、そう男は話してくれました。
私は、ずっと居ては申し訳ないと思い挨拶をし、その場から去りました。
帰りの電車の中、私はなんとも言えない気持ちになりました。
人の家庭を少し覗いたような申し訳なさ、単純に老…いや、お婆さんに元気になってほしい気持ち、そして息子さんたちの気持ちなど、いろいろ考えていました。
しかし、数日後…。
「えっ?」
私は、お婆さんがICUに入っているため、家族の人たちにも迷惑をかけないように、見舞いに行くのを控えてました。
しかし、昨日亡くなったと聞かされました。
入院してから、目を開けることはなかったそうです。
本当は、もっと話したいことがいっぱいあったのでは、なかったんだろうか。
そんなことをいろいろと考えてたら、涙がスーッと流れました。
そして、それはとめどなく溢れ出してきました。
落ち着いたら、お線香をあげさせてもらおう。
この夏のことは、ずっと忘れられないものに、なるような気がします…。
※この物語は、フィクションです。登場人物は架空で、出来事は実際とは関係ありません。