妄想劇場 ~ベンチ④~ | 気まぐれバードのキマグレコ

気まぐれバードのキマグレコ

何でも綴りたいことを綴っています。

近所のおばさんから聞いた、衝撃的な話。


昨日、老婆はどこかの病院に入院したことでした。


話によると、牛乳配達に来ている配達人が、カーテンが開いたままの窓をたまたま見ると、床にうつ伏せで倒れている老婆を発見したということでした。


私は、おばさんにどこの病院に入院しているか聞いてみましたが、おばさんも分かりませんでした。


私は、愕然としたのと同時に、せっかく仲良くなりかけていたことを、このままでは終わりたくないと思いました。


私は、老婆の名前をおばさんに聞き、見舞いに行こうとこころに決めました。


この街の病院に、片っ端から電話をかけ、入院しているかどうかを調べました。

すると、とある病院にいることが分かり、早速行こうとしました。


が、看護師さんから、
「今、ICUに入っていまして、面会は出来ません。」と言われ、更に動揺しました。


しかし、私は見守りたい。その一心から、花束を買い、電車に乗り、病院へと向かってました。


すると、家族の人が集まってました。


私は、てっきり一人だと思い込んでいました。


私は、思い切って声をかけました。


「あの~、ご家族の方ですか?」


男「ええ、息子ですが。あなたは。」


私「あっ、私、仲良くさせていただいていた者です。」


男「母が!あなたに!私達にですら、こころを開かなかったのに。」


私「すみません。」


男「あっ、いやいやごめんね、あんな言い方して。ただ、不思議に思ったから。」


私「いえ、私の方こそ、押し掛けてすみません。私は、あの人がひとりぼっちだとばかり、勘違いしてしまって。」


男「じゃあ、何か聞いたんだね。」


私「ちょっと昔話を…。」

男「母は、父がいたから、立ち直れたんだ。もし、一人だったら、今頃はいなかったかもしれません。だから、私と弟もこうやって存在してる。」


私が聞いた昔話を察知して、そう男は話してくれました。


私は、ずっと居ては申し訳ないと思い挨拶をし、その場から去りました。


帰りの電車の中、私はなんとも言えない気持ちになりました。


人の家庭を少し覗いたような申し訳なさ、単純に老…いや、お婆さんに元気になってほしい気持ち、そして息子さんたちの気持ちなど、いろいろ考えていました。


しかし、数日後…。


「えっ?」


私は、お婆さんがICUに入っているため、家族の人たちにも迷惑をかけないように、見舞いに行くのを控えてました。


しかし、昨日亡くなったと聞かされました。


入院してから、目を開けることはなかったそうです。

本当は、もっと話したいことがいっぱいあったのでは、なかったんだろうか。


そんなことをいろいろと考えてたら、涙がスーッと流れました。


そして、それはとめどなく溢れ出してきました。






落ち着いたら、お線香をあげさせてもらおう。


この夏のことは、ずっと忘れられないものに、なるような気がします…。





※この物語は、フィクションです。登場人物は架空で、出来事は実際とは関係ありません。