10日後、ガールフレンドのケニーが会いに来ました。ジェニーは戸惑いながらも、エルムに会わせることにしました。
ケニー「はーい、エルム。もうすぐしたら、クリスマスだね。覚えてる?クリスマスの事。」
天使「え~っと。………」
ケニー「ごめんなさい。私たちは、いつもクリスマスは、プレゼントを交換していたの。パーティでね。」
それを聞いていたジェニーが、ケニーを呼びました。
ジェニー「ケニー、ちょっといい。
実はね、今年はプレゼント交換だけにしてほしいの。あの子、いまああいう状態だし、あまり一度にたくさんの刺激を与えたくないの。分かる?」
ケニー「ええ、それは分かるけど…………
でも、エルムに聞くのが一番いいと思います。」
ジェニー「う~ん、だけどね。」
ケニー「大丈夫よ、おばさん。それに、楽しいことは記憶障害があっても、楽しいでしょ。」
ジェニー「……………いいわ、分かった。」
それから数日後。天使は、プレゼントを買いに行くのですが…。
ジェニー「いい、エルム。ちゃんと、金額内に収めるのよ。お金のことは、昨日教えた通りにね。」
昨日の夜、天使は人間界にはお金というものが存在し、それにより生活が成り立っていること。お金により、物が買えることを教えてもらいました。しかし、この天使。かなり頭がよいらしく、すぐに仕組みを理解しました。
そして、クリスマス当日です。天使は、そわそわしてました。勿論、天上界でもこんな思いは、したことがありません。
天使はこころの中で
「何でこんなに落ち着かないんだろう?」
と、自分のことを不思議に思ってました。
そして、ケニーがうちにやって来ました。
ケニー「メリークリスマス!エルム。」
天使「えっ!………………………あ、あ、メ、メ、メーリークリスマスゥ~。」急に言われたのと、緊張からか声が上擦ってしまいました。
天使はまたこころの中で
「何だろう?鼓動がやけに早い。何なんだ?この感覚は。」
そう思いながらも、“それ”は止められません。
そして、パーティは進み、中程になったところで、プレゼント交換になりました。まずは、ケニーがエルムに渡しました。
天使「あ、あ、ありがとう。じゃあ、ぼ、僕からも。」
天使は、凄く照れながら、プレゼントを渡しました。
ケニー「ねえ、プレゼント開けてみて。」
天使「う、うん。
あっ、帽子。ありがとう、素敵だよ。」
思わず、こころから出たことばに、驚きました。
天使「人間は、こうやってよろこびを分かち合うのか。」
何だか、むねの中がいっぱいに満たされました。
ケニー「ねえ、私も開けていい?」
天使は、こくりと頷きました。
ケニー「かわいい手袋とマフラーだ。ありがとう、大事にするね。」
そういうと、ケニーは天使の頬にキスをしました。
天使は、たちまち顔が真っ赤になりました。
ケニーもこころの中で、疑問に思いました。
ケニー「変ね、いつもなら急に真っ赤にならないのに。やっぱり、具合いがあんまりよくないのかしら。」
ケニー「おばさん。エルムと2人で話してもいいかしら?」
ジェニー「え?ええ、いいわよ。」
ケニーはエルムと、エルムの部屋に行きました。
ケニー「ねえ、私エルムが分からないの。障害があるとはいえ、全くといっていいほど覚えてないのね。
ごめんなさい、でも目の前にいるのが、どうしてもエルムに思えなくて。」
天使は
「(どうしよう、なんて説明しよう。いっそのこと、ばらしてしまおうか。でも、人間の姿だしそんなこと信じてもらえそうにないし。)」
こころの中は、急な展開でパニックでした。
しかし、
ケニーが急に抱きついてきて
ケニー「ごめんなさい。辛いのに変なこと聞いて。それに今日はクリスマスなのに。
…………ごめんなさい。」
天使は、ケニーの涙をみてまた戸惑いました。
天使「大丈夫だよ。自分でも、何もかもが分からないんだ。ケニーにあまり話さなかったし。ごめんね。」
ケニー「謝らないで。みじめになるから。
もう、下に行こ。おばさんやママが待ってるから。」
こうして、クリスマスは終わりました。しかし、天使はまだこの時、何も知りませんでした。
※この物語はフィクションです。登場人物、出来事は実際とは関係ありません。