妄想劇場 ~翼を失った天使④~ | 気まぐれバードのキマグレコ

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10日後、ガールフレンドのケニーが会いに来ました。ジェニーは戸惑いながらも、エルムに会わせることにしました。




ケニー「はーい、エルム。もうすぐしたら、クリスマスだね。覚えてる?クリスマスの事。」




天使「え~っと。………」



ケニー「ごめんなさい。私たちは、いつもクリスマスは、プレゼントを交換していたの。パーティでね。」




それを聞いていたジェニーが、ケニーを呼びました。



ジェニー「ケニー、ちょっといい。



実はね、今年はプレゼント交換だけにしてほしいの。あの子、いまああいう状態だし、あまり一度にたくさんの刺激を与えたくないの。分かる?」





ケニー「ええ、それは分かるけど…………



でも、エルムに聞くのが一番いいと思います。」




ジェニー「う~ん、だけどね。」





ケニー「大丈夫よ、おばさん。それに、楽しいことは記憶障害があっても、楽しいでしょ。」




ジェニー「……………いいわ、分かった。」




それから数日後。天使は、プレゼントを買いに行くのですが…。



ジェニー「いい、エルム。ちゃんと、金額内に収めるのよ。お金のことは、昨日教えた通りにね。」




昨日の夜、天使は人間界にはお金というものが存在し、それにより生活が成り立っていること。お金により、物が買えることを教えてもらいました。しかし、この天使。かなり頭がよいらしく、すぐに仕組みを理解しました。





そして、クリスマス当日です。天使は、そわそわしてました。勿論、天上界でもこんな思いは、したことがありません。
天使はこころの中で
「何でこんなに落ち着かないんだろう?」
と、自分のことを不思議に思ってました。





そして、ケニーがうちにやって来ました。




ケニー「メリークリスマス!エルム。」




天使「えっ!………………………あ、あ、メ、メ、メーリークリスマスゥ~。」急に言われたのと、緊張からか声が上擦ってしまいました。




天使はまたこころの中で
「何だろう?鼓動がやけに早い。何なんだ?この感覚は。」
そう思いながらも、“それ”は止められません。




そして、パーティは進み、中程になったところで、プレゼント交換になりました。まずは、ケニーがエルムに渡しました。




天使「あ、あ、ありがとう。じゃあ、ぼ、僕からも。」



天使は、凄く照れながら、プレゼントを渡しました。



ケニー「ねえ、プレゼント開けてみて。」




天使「う、うん。



あっ、帽子。ありがとう、素敵だよ。」
思わず、こころから出たことばに、驚きました。




天使「人間は、こうやってよろこびを分かち合うのか。」




何だか、むねの中がいっぱいに満たされました。




ケニー「ねえ、私も開けていい?」


天使は、こくりと頷きました。





ケニー「かわいい手袋とマフラーだ。ありがとう、大事にするね。」


そういうと、ケニーは天使の頬にキスをしました。


天使は、たちまち顔が真っ赤になりました。




ケニーもこころの中で、疑問に思いました。



ケニー「変ね、いつもなら急に真っ赤にならないのに。やっぱり、具合いがあんまりよくないのかしら。」




ケニー「おばさん。エルムと2人で話してもいいかしら?」




ジェニー「え?ええ、いいわよ。」





ケニーはエルムと、エルムの部屋に行きました。





ケニー「ねえ、私エルムが分からないの。障害があるとはいえ、全くといっていいほど覚えてないのね。



ごめんなさい、でも目の前にいるのが、どうしてもエルムに思えなくて。」




天使は
「(どうしよう、なんて説明しよう。いっそのこと、ばらしてしまおうか。でも、人間の姿だしそんなこと信じてもらえそうにないし。)」


こころの中は、急な展開でパニックでした。




しかし、




ケニーが急に抱きついてきて



ケニー「ごめんなさい。辛いのに変なこと聞いて。それに今日はクリスマスなのに。


…………ごめんなさい。」




天使は、ケニーの涙をみてまた戸惑いました。




天使「大丈夫だよ。自分でも、何もかもが分からないんだ。ケニーにあまり話さなかったし。ごめんね。」



ケニー「謝らないで。みじめになるから。




もう、下に行こ。おばさんやママが待ってるから。」




こうして、クリスマスは終わりました。しかし、天使はまだこの時、何も知りませんでした。







※この物語はフィクションです。登場人物、出来事は実際とは関係ありません。