死刑を止めよう宗教者ネットワーク主催の講演、講演は滋賀県大津市だが、YouTubeオンライン配信で拝聴。登壇者は松本麗華氏、麻原彰晃の娘である。殺人事件の加害者家族の話というのはなかなかスポットが当てにくい視点から死刑廃止を考える。
大前提として、加害者家族は加害者本人ではなく、さらに言えば、加害者本人が収監されて世間から隔離されている一方で、家族は一般社会で壮絶な非難(非難の矛先が間違っているので、まごうことなき差別に当たる)を浴びる。その生の声に言葉もない。
当時はSNSはなくても、2ちゃんねるがあった。というか、矛先のずれた非難はSNSがある今も、そしてこれからも続くと言うのは、想像を絶する。
さらに複雑な問題は、氏がカルト宗教と絡めて語られてしまうこと。たとえ松本智津夫被告が生きていても、宗教二世としての運命からは逃れられない。
加害者家族を支えるのは、保護司などが上げられるが、牧師やお坊さんなどの宗教者が多いようである。加害者家族は社会からはもちろんだが、日本では国からもケアがない。本当につらいのは、国のサポートを受けられない事だと言う。さらに氏は、死刑制度以上に、加害者家族がマスコミやネットなどで無批判にさらし者にされることがしんどいと言う(被害者親族が非難するのは正当でも、第三者が勝手に懲罰したら、何のための法治国家か?)。
フリーディスカッション。なるほど、ヨーロッパでは加害者家族も被害者家族と同様に保護対象なのか。
まあ私は、加害者家族と世間と国家という三者の関係から死刑を語る、という立場ではない(国家対国民と言う二者の関係の観点から死刑制度に反対している。論点としては前景に出てきていなかったが、そもそも適切で十分な司法手続きがなされてきたか、と言うのは私にとっても議論の余地がある)が、少なくとも、加害者家族はこのような公の場に登壇してくれる機会は大変に希少であり、何より、人権の根っこを考えさせる貴重な機会であった。今回はキリスト教会主催だが、次回は浄土宗寺院で開催。