三が日に見たオルセー美術館展の研究員によるオンライン講演会。盛岡に戻っても見れるとは思わなかった。
最初は当時の世相の話。なんと、家族愛というものを基盤にした家族像は19世紀末になってからのもの、それまではいわゆる「いえ」の財産を代々引き継ぐための仕組の意味の方が強かった。絵画も近代以前は聖書の世界を専ら描き、世俗は描かれなかった。
最初はドガの作品から。家父長の肖像画ではなく、家父長が亡くなり弔事から帰宅した家族を描いている。
もちろん模範的な家族の肖像画は、写真館で撮影される写真のような構図。父は背広、母は子どもを抱き上げて中央に描かれる。夫婦がべったりくっつくことなく、上品さを醸し出している。今回の印象派展は単に筆致の美しさだけでなく、こうして時代の生活感を読み取らせる展示が大変興味深かった。
と言うことで、すでに19世紀末にはフランスブルジョワ家庭ではすでに家父長制は終わっていた、ということが分かり、歴史考察上も大変面白い。逆に言えば、印象派の画家たちは、家父長的な伝統的絵画にアンチを唱えていたのが、今までの印象派絵画のイメージを覆すな。
ドガやティソがそうした作品を観た後、ベルギーのステヴァンスの作品も。ラトゥールの作品には、仕事に従事し、結婚しなかった女性を、他の3人の家族と違う存在感が140年前の絵画から伝わってくる。
べナールの家族肖像画は、3人の子どもたちが主役で、その背後に母親、そのはるか後方に義母と画家。
母性愛についての議論、単なる神話に過ぎないと語る識者、さらに子どもの存在を認めていく過程。アンベールやカロリュス=デュランの母子肖像画、同じ母子肖像画でも、気品を全面に出したり、甘える子どもの親密感を全面に押し出すものも。ルノワールはやはり親密さが前面にでてるな。モリゾは育児に疲れた表情を見せる母親さえ絵描いている。
育児はいつの時代も大変、というか、19世紀は上流階級でさえ、乳幼児死亡率が50%と聞き、驚き。
そんな訳で、よりこどもがクローズアップされた作品では、病気の子どもを描いた作品も。
最後は家庭における女性たち。ルノワールはまごうことなきブルジョワの理想的姉妹像。
男子肖像画は、この時代もやはり地位を強調した作品が多い。
読書する女性というモチーフも絵画で多く取り上げられるが、すでに識字率は労働者階級まで広がっていたこと。
この頃の働く女性の典型、針仕事。ルノワールもまた、読書する女性に限らず、針仕事をする女性の肖像画も。
最後はモリゾの作品にスポット。
それにしても、展覧会に展示された作品ばかりでなく、展示されなかった作品も紹介され(オルセー以外の作品も、日本の美術館所蔵のものが多く、日本人の印象派好きがよく分かる)、これは価値ある講演会だったな。
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