海上自衛隊呉基地に所属する輸送艦「おおすみ」の艦内で、1等海曹と2等海曹の上官2名が部下隊員に対して「その程度の仕事でよくそれだけの給料もらえるな」などといった暴言を吐き、その数分後に部下隊員は艦内の倉庫で遺体で発見されたという事件があり、部下隊員は自殺をしたとの報道がありました。

私も24年半に渡って海上自衛隊で勤めてきましたが、残念ながらこの間に私の知り合いが2名も自ら命を絶ってしまったという悲しい出来事がありました。

指導とハラスメントの境界線はなかなか難しい部分がありますが、私が入隊した頃には、今では考えられないハラスメントが横行していて、それが海軍伝統の指導だと言われていました。

一つ例を挙げれば、誰かが何かのミスをしたときに、上甲板に集合させられ、そこで前支え(腕立て伏せの姿勢でずっと耐え続ける)をさせられるのです。

特に夏の炎天下のときには、上甲板で目玉焼きができるかと思うくらいの熱さになっているんですが、そんなことはお構いなく、素手でさせられるので、ひどい場合は手がやけどで水ぶくれ状態になることもありました。

私は幸いそのような羽目にはあいませんでしたが、先輩方の中にはこうした指導を受けた人もいたことを聞いたりしました。

今だったら、ハラスメント以前に傷害罪で警察沙汰(自衛隊なら警務隊が入る事案)になってもおかしくない案件だと言われてもおかしくありません。

人間生活では「自分が若いときにされたから、今度は自分がやる番だ」といって、さらにハラスメントを重ねることがたくさんありますが、自分がされて嫌だったのなら、なぜそこでやらないという選択をしないのでしょうか?

そこには、指導した者は「これも相手のため」と思っているのでしょうが、指導された者には感謝の気持ちどころか、恨みや憎しみの感情しか持たないことが続いているからだと思います。

似たような話に「嫁姑問題」というのがありますが、自分が嫁として嫁いできたときに、姑から散々意地悪なことをされてつらい思いをしたから、今度は自分が息子の嫁に同じことをしてやろうという魂胆なわけですが、こうしたことこそ本当に人間性を疑うような行動だと思います。

自分がされて嫌なことは、絶対にやらない。

自分がされて嬉しいことは、相手にもしてあげる。

たったこれだけのことができない人間が世の中にどれだけ多いことか。山本五十六の名言で「やってみせて、言って聞かせて、させてみせて、誉めてやらねば、人は動かじ」という言葉がありますが、批判や叱るだけでは人は伸びません。

短所を矯正するよりも、長所を伸ばす。

今の日本にはそんな教育が必要かと思います。