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それから、1時間後。

俺は、京急川崎駅にいた。


ルリとメールをやり取りして、とりあえず逢うことにしたのだ。


俺は、素直にルリに逢いたかった。

その気持ちが、俺を突き動かしていた。


こんなに素直に、衝動に動かされるなんて……。

いつ以来のことなのだろう……。


俺は苦笑いしながら、左腕に巻いたBULOVAの古い腕時計を見た。

約束の時間まで、あと5分だった。


ルリからメールは、立ち消えそうだった俺とルリの縁を再び繋いだ。


望めば、それは現実になる……。


往々にして、それは叶わない夢だ。

だけど、本当に望めば叶うこともある……。


俺は、本当に願ったんだ。


もう一度ルリに逢いたい……。

間違いなく、真剣に……。


そのとき、人混みの中からルリが姿を現した。