12
それから、1時間後。
俺は、京急川崎駅にいた。
ルリとメールをやり取りして、とりあえず逢うことにしたのだ。
俺は、素直にルリに逢いたかった。
その気持ちが、俺を突き動かしていた。
こんなに素直に、衝動に動かされるなんて……。
いつ以来のことなのだろう……。
俺は苦笑いしながら、左腕に巻いたBULOVAの古い腕時計を見た。
約束の時間まで、あと5分だった。
ルリからメールは、立ち消えそうだった俺とルリの縁を再び繋いだ。
望めば、それは現実になる……。
往々にして、それは叶わない夢だ。
だけど、本当に望めば叶うこともある……。
俺は、本当に願ったんだ。
もう一度ルリに逢いたい……。
間違いなく、真剣に……。
そのとき、人混みの中からルリが姿を現した。