10
「……俺のポケットに時計を入れたのは君だね……? でも、どうして?」
夏子は少し困ったような顔をして、その後じっと亮二の目を見て言った。
「あたしは、あなたにもう一度逢いたかった。だから……」
「でもさ、こんなに高価な時計をだよ? 大切なものなんだろ? もしかしたら、そのまま返さないかもしれないじゃないか……」
亮二は、ゆっくりとポケットから時計を取り出しながら、そう言った。
その時計を、夏子の前に置く。
夏子の顔を、亮二はじっと見つめる。
久しぶりに逢った夏子は、やはりとても美しかった。
「そう……大切だから、あなたに託した……あたしは信じてたから」
テーブルの上に置かれた時計をじっと見つめて、夏子はそう言った。
「信じてる、か……どうして、そんなに信じられるんだ? 偶然出逢った、俺なんかのことを……」
そのとき夏子は、亮二の目を見ながら少し怒ったようにこう言った。
「偶然じゃない! 偶然なんかじゃないの! あたしは、あなたをずっと捜してたんだから!」
夏子は、しまった!という顔をして亮二から視線を外した。
「それって、どういう意味なんだ……俺のことをずっと捜していたって……?」
亮二は、夏子の言葉に少しだけ動揺していた。
それは。
そのとき亮二が、目の前にいる夏子が似ていると気づいたからだった。
確かに、似ている……。
あの人に、確かに……。
まさか……。
いや、そんなバカな……。