65(完結)
気が付くと、俺はベッドの上に居た。
んっ?
俺は、夢を見ていたのか……?
いや、これは現実……これが、俺の今の現実なんだ……。
ピッ、ピッ、ピッ……と定期的に病室に響く音……。
喉の奥にはチューブが入っていて、声も出せない。
腹からは何本かのチューブが出ている。
痛いはずの傷口の痛みはないが……もう、身体も動かせない。
あぁ……俺は……本当に、もう死ぬんだな……。
あれから長い時間が経って……俺の責任は、もう全て果たしたつもりだ。
俺の生きる意味なんて……本当に、もうないんだと思えた。
でも、それは……あの頃とは、意味が違っていた。
俺が生きた意味……それは、メグやユウキを愛したことなんだ。
だから、今……俺は、もう満足だった。
心残りといえば、ただひとつ……あれから、エンジェルには逢えないことだった。
夢のなかでも、エンジェルは二度と現れなかった。
もしかしたら、夢には現れるのでは?と、ずっと期待していた。
だけど……。
俺のこんな気持ちは、もちろんメグは知らない。
気づかせないようにすること……それが、俺のメグへの愛だから……。
誰かが、俺の手を握っている……。
メグ……? ユウキ……?
ありがとう……ごめん……先に逝くよ……。
意識が消える。
そして、俺は……眩い白い光りに包まれて行った。
エピローグ
目を開けると俺のカラダは、あの頃の若さに戻っていた。
カラダのどこも痛くない。
清々しくて、爽やかな気分だった。
そして……。
俺のカラダを、誰かが優しく抱き締めている。
温かくて、柔らかい……そして、このニオイは……まさか……!
「ユート! 迎えに来たお……やっと逢えた……」
俺の目の前に、エンジェルの姿があった。
「エンジェル……やっと逢えた、な……」
溢れる涙で、エンジェルの顔がぼやけて見える。
そのとき、俺は……とても満たされた気持ちだった。
「エンジェル……俺は……ずっと、お前を愛していた……間違いなく、ずっと……」
「ありがとう、ユート……アタシも、だお……」
俺は……メグも……ユウキも……もちろん、間違いなく愛している。
だけど……。
「エンジェル……お前は、特別なんだ……だって、お前は……」
「そうだよ、ユート……アタシ達は……ひとつなんだから……」
エンジェルも、ポロポロと涙を零す。
そして、その涙は……ひと粒ひと粒が、光り輝く真珠に変化した。
俺とエンジェルのカラダは、ひとつに融け合って……。
そして、やがて……大きな白い光の玉になって地上から浮き上がる。
青い空の、白い雲を抜け……成層圏を抜けて、宇宙空間まで俺たちは上って行く。
「ユート、愛してるお……」
エンジェルの、そんな声を聞きながら……俺たちは弾けて、宇宙の塵に変わって行く。
とても満ち足りた……とても幸せな気持ちを感じながら……。
そう、永遠に……。
『The end of life』了
2010.12.27 CopyRight by Hiroto Izumi