この映画はアカデミー賞で主演女優賞と助演男優賞を獲得した作品である。
主演のフランシス・マクドーマンドが演じる母親は、娘を殺され街の警察に犯人を捜すよう訴え続けている。
母親は気が強く、男勝りな性格で、彼女の表情は鉄のように固い。事件の影響もあるのだろうが、冗談を言っても睨み返され、彼女を口説こうものなら突き飛ばされそうな近寄り難い性格をしている。

しかし、この映画の中で唯一、彼女が笑う場面が存在する。
それが、この映画に登場する人物たちの、どうしようもない怒りの矛先にあるものを表現しているような気がした。

助演男優賞を獲得したサム・ロックウェルは警官を演じている。
この警官は差別主義者で暴力を振るう最低な人間だが、署長のことは崇拝しており、署長の命令は聞くし、署長が死んだ時も気絶するぐらい悲しむ男である。つまり根はいいヤツなのだ。

警官はあることがきっかけで広告会社の男に暴力を振るい、とんでもない大怪我を負わせてしまう。そして警官もまた大怪我を負い、偶然にも病院で広告会社の男と再会してしまう。
警官は涙を流し、広告会社の男に謝った。普通ならば、殺されていたかもしれない広告会社の男は警官に対して怒り狂うはずだ。
しかし、大火傷で包帯を巻いた警官を見て、どうしようもない怒りはオレンジジュースに変わったのである。


逃げ場のない「怒り」と対峙した時、強い人間はそれを「許す」ことで消化できるのである。




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