この映画は『行け!稲中卓球部』で有名な古谷実原作の作品である。

古谷実氏はギャグ漫画のイメージが強いが、『ヒミズ』など人間の心の闇を描くのが非常に上手い漫画家でもある。

今作の『ヒメアノ〜ル』は、ポップな恋愛コメディとシリアスな殺人ドラマという二面性を持った作品である。
濱田岳とムロツヨシと森田剛の絶妙な演技はこの作品の見所の一つでもある。
ジャニーズの森田剛は殺人鬼の役を演じているが、彼の演技は完璧だった。完璧などという陳腐な表現では申し訳ないが、完璧だったのである。


この作品は原作と映画でラストの展開が大きく違うが、伝えたいテーマは同じであり、それは「殺人鬼の苦悩」である。

社会は残虐的な行為で性的興奮を覚える人間に対してどのようにして向き合うべきか?

幼少期に蟻を踏み潰したり、蟻の巣の中に水を入れてみたり、虫を意味なく殺した経験はないだろうか?その幼児的な残虐性を持ったまま大人になる人間も存在する。
原作の殺人鬼である森田は映画やドラマで異性が首を絞められ殺されるシーンを観て性的興奮を感じたと言っていた。
彼は自分のことを病気だと言っており、普通の人間になりたいとも言っている。

ここで話は変わるが、性同一性障害はどうだろうか?
同性愛は時代と国によっては犯罪者のような扱いをされ、昔からタブー視されてきたが、近年では脳の病気として社会に受け入れられ、認知されてきた。
異性を愛そうとした、努力もした。しかしどうすることもできなかった。この苦悩と葛藤はこの世界に存在するのである。

森田は人を殺すことで満たされる人間に生まれたかったわけではない。映画のラストでは彼の人間としての優しさが垣間見える。学生時代にイジメられ、人格が歪んでしまった彼もまた被害者なのである。


もしも、あなたが社会に認められていないことでしか満たされないとしたら?
苦悩と葛藤の末、あなたはどういった決断を下しますか?


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