とある下町の一角に雰囲気のある定食屋がある
「大衆食堂すたんど」
と書かれたガラス張りの扉を開ける
中から漂う揚げ物の匂いが空腹を刺激する
昼時だが空席が目立つ
空いている席を見つけ腰を下ろす
すると間もなくエプロン姿のおねだりワイフがターミナルを持ってやってきた
失礼だが
こういう雰囲気の店は手書きだろうと思っていたが意外だった
おねだりワイフ
「いらっしゃいませ。お支払方法をお選びください」
俺
「え?まだ何も頼んでませんけど?」
おねだりワイフ
「はい。ですから先にお支払方法をお選びください」
俺
(変わった店だな)
俺
「じゃあpaypayで」
おねだりワイフ
「申し訳ございません当店未だpaypayが対応しておりません。他のお支払方法をお選びください」
俺
「え?じゃあsuicaで」
おねだりワイフ
「申し訳ございません。当店suicaの方もちょっと・・・」
俺
「じゃあ逆に!何ができるんですか?」
おねだりワイフ
「現金とカードになります」
俺
「じゃあ初めからそう言ってよ!・・・カードで」
おねだりワイフ
「申し訳ございません!一括でよろしいでしょうか?」
俺
「こういう店で分割する奴がいるの? 一括で」
おねだりワイフ
「カード一括で承りました。」
俺
「はい」
おねだりワイフ
「ポイントカードはお持ちですか?」
俺
「え? この店の?」
おねだりワイフ
「いえ。DとかPとかVとかのです」
俺
「え? Dポイント溜まるの?」
おねだりワイフ
「はい。Dポイントでよろしいでしょうか?」
俺
「じゃあ はい!」
おねだりワイフ
「カードですか?それともアプリでしょうか?」
俺
「じゃあアプリで」
おねだりワイフ
「ポイントを受け付けました。ポイントを使いますか?貯めますか?」
俺
「Dポイント使えるの? あ・・・でも貯めます」
おねだりワイフ
「lineのお友達でしょうか?」
俺
「ちょっとさ! いいかげんにしてよ! 俺腹減ってんの!」
おねだりワイフ
「申し訳ございません。もう少しで終わります。lineのお友達ですか?」
俺
「いいえ!お友達ではありません!」
おねだりワイフ
「lineのお友達になってくれると、本日のサービス品一品が無料で付きますが」
俺
「じゃあ お友達になりますよ」
おねだりワイフ
「あんたね。さっきから!じゃあじゃあじゃあって! なんでもかんでも面倒臭そうにするんじゃないわよ!」
俺
「すみません・・・だけどさ。腹減ってんの。解ってよ」
おねだりワイフ
「わかんねーよ!!そんなことは!!こっちだってマニュアルなんだよマニュアル!私はただの雇われなの。パートさんなの!
これを聞くのが仕事なの! 料理人は料理を作るのが仕事。そして、私はこれを聞いてターミナルにピッぴぴっぴ入力するのが仕事。そうなのよ。オーダーを聞いてでかい声で「とんかつ定食一丁!」とか言ってる方が楽よね。でも今は違うの。オーダーを取って厨房に通すだけが仕事じゃないの。もはや入力なの!私の仕事は入力!その辺のOLと同じ。アンケートを取って入力するのと同じ。これが私の仕事なのぉ!!!!!
あ、ちなみにこのエプロンは店長の趣味だからあまり意味無いの!!」
俺
「すみません!すみません!すみません!・・・あの・・・お友達になってください」
おねだりワイフ
「どっちの?」
俺
「え?・・あの・・できれば 両方」
おねだりワイフ
「わかった。いいわよ。これが店のQRコード そしてこれが私のQRコード」
俺
「ありがとうございます。」
おねだりワイフ
「今日のlineお友達のサービス品は冷奴よ」
俺
「やったー」
よく見たら店の看板には
貝殻のマークが書いてあった