5月も後半 蒸し暑い日が続いていた
専門学校の帰り道
いつもの二人
俺とカズ君
「今日はバイト?」
「今日は無い」
「じゃあいこっか」
「よし」
弥生町の交差点を渡る
バス停を通り過ぎて新宿西口に入っていく
動く歩道を通り左へ折れてぐるぐるとしばらく行くと、しょんべん横丁があり、その手前を右に入っていく
小汚いトンネルを抜けるとアルタ前に続く道がある。
アルタ前横のフルーツ屋でパイナップルが刺さった割り箸を100円で買いその場で食う
いつもの事
スカウト、キャバ嬢が出てくる時間帯に差し掛かると俺たちも歌舞伎町へ向かう。
歌舞伎町のメイン通りを入ってすぐ左手に赤い看板「つぼ八」がある
「2時間飲み放題980円」
エレベーターで4Fに入る。
980円飲み放題っていってもカラクリがあって、1人二品以上のつまみを頼まないといけない。
財布に3000円しか入ってないから安いコロッケと枝豆でやり過ごしていた。
別に酒が飲みたいわけでも、飯が食いたいわけでもない。
ナンパがしたいのだ。
金は無いけど時間と性欲だけはたんまりある。
俺たちは学校帰りにいつも新宿で遊んでいた。
パチンコいったりゲーセンいったり。
でも一番多かったのが2時間飲み放題980円だった。
ここのつぼ八はカウンター席とテーブル席
そして、座敷の円卓があった。
俺たちの狙いはこの円卓なのだ。
いつもつぼ八は混んでいるのでカウンター席とテーブル席が満宅になると座敷の円卓で相席になる仕組みを知っていた。
そこをいつも狙っていた。
はずれの時はカウンター席でコロッケを取り合って喧嘩して帰ったりもしたが、何度か通ううちにコツを掴んだ。
そしてついに
大当たりの日が来た!!
円卓には女子二人が飲んでいる
そこへ通されたのだ。
俺たちはお互いを見つめ合い下卑た笑いをかみ殺した。しかし
円卓には今度はおっさん2人組(言っても30前後)が入ってきた。
心の中で毒づいたが負ける気はしなかった。
なにせ、カズ君がサッカー好きの爽やかボーイだからだ。そこへ俺が喋りまくる
そして肝心な武器「若さ」を持っていた。オッサン二人はどうせ会社の愚痴とか語り合っているうちに酔っぱらって帰るだろう
という算段があった。
先ず俺たちは先制攻撃を仕掛けた
生ビールを頼み二人で一気した。
そしてデカい声で
「うんめーーーーーーー」
と言いながら、立て続けにレモンサワーを注文し、これもがぶがぶ飲みながら
「飲み放題だから!!どんどんのんじゃお」
と言った。
先ず
酒が飲める男はカッコいいと思っていた。
そして、酔っぱらっているから声を掛けて来たんだと思わせたかった。
3杯目くらいで声を掛けた
「おねえさんは何呑んでるの?」
と言いながら、ケツをずらしながら近寄る。
すかさず爽やかボーイのカズ君が俺に突っ込む
「何してんだよ!」
俺の頭を叩きながらもケツをずらしながら近寄る
いつものやり方だ。
俺が声掛け、カズ君は突っ込みながら女の出方をみて伸びてくる
声掛けと伸び
これが基本
女の子がくすっと笑う
勝ちを確信したカズ君が
「で、何呑んでるの?」
で大成功
ちなみにカズ君は女の子が乗り気じゃない時は出てこない。
俺に突っ込みを入れて
「こいつがどうもすみません」
てきな感じで終わる。ずるい役割なのだ。
2人組の女子はジュンコとマユミ
偶然にも同じ歳の20歳と21歳
ジュンコは千葉の奥地、マユミは新小岩に住んでいる。
話は盛り上がりカラオケに行く話をしていると、忘れかけていた伏兵が
あの後から来たおっさんが話に入ってきた。
おっさんは空気を読まない。
だから逆に強い。
結局6人でカラオケに行くことになってしまった。
つづく