3月になり昼間も暖かい日が続くようになってきたある日

 

渡辺が解雇された。

 

理由はいくつもあった。

 

そう、遊びすぎ。

 

でも、そんなこと言ったらみんなそうだ。

渡辺に理由を尋ねると、訳が分からないと言う。

渡辺は頭が悪いからこいつに聴いても仕方がないと思い、周りのスタッフに聴いてみた。

すると、前々からパトロールの人々から目をつけられていたようだ。

そこに来て、キッカケというのが

 

「夜酔っぱらって、風呂場で転んで額を切ったので、帰ってもらうのだ」

 

と。

 

この内容に僕は納得いかなかった。

バカだけどいい奴だし、レンタルでもちゃんと働いていたはず。

契約は3月いっぱいだし、理由が明らかにおかしい。

 

この頃、ホテル側も3月になると暇な日が増えてくるので、ブラジル人などを契約満了せずに帰していた。

おかしいと思っていた。

お別れ会の時も、まだ3月に入ったばかりなのに・・・と思っていた。

そんな勝手な事があるかと思った。

 

僕も、一年目とはいえこのグループ会社の社員だ。

 

パトルールが偉そうに威張っているけど、ただの先輩であるし上司だ。

意見を言う権利はある。

 

今までの、レンタルのゆめっちの件や、その彼氏の件、パトロールの偉そうな態度などなど怒りが溜まっていた僕は、パトロール隊長の大塚さんという奴に会いに行った。

 

そこで渡辺の件はどうしても会社として、人を雇用する側としておかしい事をまくしたてた。

 

この頃、軽井沢でもトイレ掃除の件で失敗をしているが、僕のいい方は幼稚だった。

感情に任せて乱暴に言うだけ。

 

大塚隊長も頭に来たんだろう

 

「なんでお前みたいなやつにそんなこと言われなきゃならないんた!」

 

喧嘩したかった。

ぶん殴りたかった。

でも出来ない。

社会人だから・・・・

 

涙が出て来た。

 

そうだった。

僕はリフトの脱索という失態を犯しているし、パトロールにはお世話になってる。

そこに来て、軽井沢のスタッフが偉そうに、隊長に突っかかっている。

こうなるよな・・・・

 

そう考えたら、冷静になれた。

 

「でも、解雇の理由がそれでいいのですか?会社ってそういうことしていいのですか?」

 

少しは冷静に問い詰めたつもりだったが、聞く耳を持たなかった。

隊長は最後にこう言った

 

「お前ならあーいう奴を雇うのか?よく考えろ」

 

納得いかなかったが、全く力が及ばなかった。

普通アルバイトでも契約があるし、明らかに契約違反であると思う。

でも、今後僕にもこの大塚隊長の言葉が響いてくるのだ。

その後、僕もこういう解雇の仕方をせざる負えない状況が来るのだが、そのたびにこの時の言葉を思い出した。

 

色々な理由で、僕らの遊び仲間も次々と白馬を去って行った。

 

最後に、みんなでスノーボードを滑った。

 

 

コルチナには新雪が溜まる急なコースがあって、誰にも荒らされないうちに従業員の僕らがその新雪を「喰って」やろうという事になった。

この通称BⅭコースが快適で、新雪が降るとボードの板を上げながら直滑降する。

まるで雲の上をフワフワと飛んでいるみたいな感覚。

この時ばかりは最高の気分だった。

 

 

バカには相応しいお別れ会となった。

 

しかしある夜。

 

僕は車で白馬駅に居た。

渡辺と幸子を迎えにきたのだ。