終電という退路を断って、ナオミの家に行く。

 

漢でありたい。

酔っぱらった頭で、考えた答えだった。

 

終電間近の中央線は混雑していた。

僕らは何となくくっつきながら、窓際に立った。

ふと窓の外を見ながらナオミが言った

 

「ここら辺、前に付き合っていた人の家があるんだ」

 

・・・・

 

「そうなんだ」

 

これが冷たい態度に見えたのか

 

電車を降りてからナオミが言った

「前の彼を忘れられなくて、あそこ通るたびに思い出すの。変な話してごめん」

 

「いや、全然大丈夫。ワインでも買っていこうか」

 

「うん」

 

 

実はこの時僕はなんか変な緊張から勃起をしてしまい、さらに、尿意が襲ってきていて

全く話を聞いていなかったのだ。

 

ノスタルジーなナオミをよそに、己の息子のフリースタイル具合にマジ泣けたっすになっている僕。

 

電車をおりると一目散にトイレへ直行し、なんとか間に合った。

 

トイレで全てを解決して戻った僕は、ナオミの「ごめん」を聴いて、とんでもなく申し訳ない気持ちになった。

 

明るく行こうと思いなんとか取り繕った。

 

 

コンビニでワインを2本も買い、ナオミの家へ向かう。

 

家に着くと、そこは四角い一軒家で、聞くと、当時のシェアハウスのような感じで家賃が安い代わりに、1人暮らしの人が沢山いるので、玄関からは静かに入ってほしいとのこと。また、隣とも結構壁が薄いのでなるべく静かにとのことだった。

 

なんか悪いことしているような気がした。

 

が、ずかずかと入っていったら、そこには大量のCDとカセットテープがあり、冷蔵庫にはhiphopとかレコ屋のステッカーが貼ってあって、すげーhiphop空間だった。

 

俺より詳しいハズだ。

 

 

早速ワインを開けると、そこでは小声でいろんな話をした。

 

でも、そこでは元カレの話は出てこなかった。

 

ワインを1本のみ終わると、ナオミは布団を敷いて中に入っていった。

「寒くなっちゃった」

 

天使のお迎えがきたのだ。

 

だけれども・・・・・

 

さっきの電車内の僕の態度といい、店での失態といい、なんか急に恥ずかしくなってきた。

とどめは、この部屋。

当時hiohopが好きとは言っていたものの、全て彼女に負けていることへの劣等感みたいなものが恥ずかしさに拍車をかけた。

 

ワインがもう一本ある。

 

それを開けて一人で呑んでいると、布団の中から彼女の手が伸びてきて、僕をつかんだ。

 

天使のお誘いが来たのだ。