「お待たせいたしました」

 

「これじゃないのよ!」

 

「す、すみません。すぐ交換いたします!もう少々おまちください」

 

「いつまでかかるの!!早くして」

 

錦糸町駅前のデパート

[NISETAN]の靴売り場。

ここに勤務して苦節20年。

多くのお客様に平身低頭尽くしてきた。

勤務態度も良好で無遅刻無欠勤

今年で44歳になる。

実家暮らしの独身

彼の名前は「上田まさし」

今日も汗をかきながらお客様に尽くしている。

 

「お客様、こちらの商品でよろしいでしょうか?

 

「そうよ、これよ」

 

「では、今一度そちらの椅子にお座りください。サイズのほうの確認をさせてください」

 

「いいわよ。時間がないから自分で履くわよ」

 

「そう言わず、さ、お座りください。」

 

まさしは黒光りするエナメルのハイヒールを片方持ち、お客様の前に跪いた。

女性客は仕方ないような表情でまさしの前に座ると片足を投げ出した。

 

まさしはゆっくりと女性の足を持ち上げ、女性に気づかれないように顔面を足の裏に近づけた。

ここが肝心だ。

ここで変に思われたら一環の終わり。

今まで築いてきたものが全て無くなる。

だが・・・・・やめられない。。

 

まさしは女性のストッキング越しから漂う一日の疲れの香りを胸いっぱいに吸い込みたかった。

が、ここは少しずつ鼻腔から吸い込む。

いつの間にか身に着けた特技。鼻を動かさずに無音にて香りを吸い込む

左手から伝わるふくらはぎの弾力を微力で味わいながら、その香りを吸い込む。

この客は今まで味割ったことがない独特の強めの香りを発しており、苛立つ表情がさらにまさしを刺激する。

まさしは思わす細かい痙攣をした。

「ん・・・うぐ・・・」

 

「どうしたの?気分でも悪いの?」

 

「いや!なんでもありません。サイズのほうはいかがですか?」

 

「うん。これでいいわ。これください」

 

「はいただ今」

 

不覚だった。

初めてのことだ。

ここまでパーフェクトにこなしてきた自負はあった。

左手の感覚と女性客の表情そして、鼻腔より嗅ぎ取ったグッドスメルを脳内にインプットし、家に持ち帰る。

決してその場でアンテナを立てる事なく直立不動でお客様を送り出してきた。

 

しかし今回は・・・・

 

立ち上がることが出来ない

 

いや、勃っている。

 

勃ち過ぎているのだ。

 

一片の曇りもなく硬度を保ったまま真っ直ぐに上を向いている。

 

この女性の顔を忘れることが出来ない。

運命を感じた。