先を行くタクシーが左にウィンカーを出し停車した。


力はその後ろにぴたりと付け停車した。


ひげ面の汚いおっさんが出てきた。

それを見届け、力も運転席から飛び出した。


ひげ面の運転手が言った。

「どういうことだ、コラ!」

思い切り唾が力の顔面に飛んだ。


「くさっ」

思わずつぶやいたが、我慢した。ここはこらえどころだった。


次の瞬間、ひげ面が力の胸倉を掴んできた。

力は勝利を確信し、にやけた。

次の瞬間、ひげ面の襟をつかんでぐっと引き寄せ、足を軽く払って倒すと、ひげ面の腕をとり、折った。


「ぐぎゃーーー」

大げさにひげ面が叫んだ。

構わなかった、力は倒れたひげ面の上からパウンドを2.3発浴びせ、鼻血だらけの顔面にもう一度タンを吐いてやった。


満足した力は、無言のまま騒ぎが大きくなる前にその場を去った。