漆黒の草原を確かな足取りで進む、新時代のジャズボーカルクイーン。
Cassandra Wilson「New Moon Daughter」

アーティスト: Cassandra Wilson
タイトル: New Moon Daughter
カサンドラ・ウィルソンを知ったのは、やはりM-base一派という接点だった気がする。当時、とにかく先端的なサウンドが好きで、スティーヴ・コールマンなどを聞きあさっているうちに、一枚のアルバムに出会った。それはカサンドラ・ウィルソンの「ジャンプ・ワールド」だった。とにかく不思議なアルバムで、ヘッドホンで聴くと、色々な角度からそう360度から音楽が出てくるような、そんな音楽でした。
そして今。カサンドラ・ウィルソンは自分でしか作れない唯一無二の世界を、構築しました。そう漆黒のその世界は決して冷たい世界では無く、むしろ暖かい世界です。彼女は絶望や苦しみを、圧倒的な深い黒色で表現出来る非常に希な、ミュージシャンです。同時代のシンガーでは、エリカ・バドゥが近い色味を持っているように感じますが、オーラは近くても声色は全く違います。。。やはり独自の世界です。本アルバムは、彼女がデビューを果たしてちょうど10年目に出したアルバムで、そして遂にグラミー最優秀ヴォーカル賞を獲得した、一つの大きな節目に当たるアルバムです。
今回の題名「ニュー・ムーン・ドーター」ですが、どうやらアフリカのシャンティ族に伝わる、「欠ける月を伴うのは病気、新月は病を治す」という諺からきているようです。文字通りにこの内容を受け止めると、カサンドラ・ウィルソンは世界を癒す為の、新月の女になろうとしている様に思われます。
古来より新月は日本語で朔とよばれ、それ自体は物事の終わり、つまり死を意味するものである。しかし、東洋思想では死の先には再生が有ります。日本人の発想には輪廻転生などの思想にもあるように、生と死、死と生は人つながりのっものとして考えられてきました。つまり生まれ変わるという事です。だからきっとニュー・ムーン・マザーではなくドーターなのでしょう。この時代に、新たに生まれたからでしょう。
それでは、漆黒の声を持つ、カサンドラ・ウィルソンの「ニュー・ムーン・ドーター」収録曲について触れておきます。
1曲目はいきなり「奇妙な果実」です。ご存じのように奇妙な果実ことストレンジ・フルーツとは、KKKなどによってリンチされ木から吊された黒人を示す隠語です。ビリー・ホりディとは全く違った解釈で、見事に表現しきっている様は圧巻で、私自身、カサンドラの声が荒涼とした空気の中に降り立った瞬間に、完全にやられました。圧倒的な存在感です。
今回のカサンドラのサウンドにはギタリスト「ブラドン・ロス」が不可欠です。この間(マ)のあるアコースティックな独特の世界は、彼でなければ表現できないものです。こういった新しい才能を、いち早く起用するあたり、カサンドラのセンスの良さが現れて居ると思います。
2曲目「恋は盲目」はなんとU2のバラードです。見事にこの曲も自分のものにしています。ほのかに木漏れ日を感じる楽曲です。3曲目「ソロモン・サング」のソロモンとはあのソロモン王の事らしいです。4曲目の「デス・レター」は、あのブルース界の大御所のサン・ハウスの楽曲ですが、見事にカサンドラ・ウィルソンの楽曲になっております。しかし、カサンドラの声は、アコースティックなサウンドにぴったりの声である。
5曲目「スカイラーク」は深い深海にゆっくりとおりていく様な、いやしにも似た、漆黒の闇夜を感じます。独特の世界観です。6曲目「ファインド・ヒム」では、アメリカン・トラディショナルをベースに、カサンドラ色で染め直されてます。7曲目はハンク・ウィリアムスが唄ってヒットさせた「泣きたいほどの淋しさ」です。とても有名な絶望を示した楽曲では有りますが、ここでのカサンドラ・ウィルソンのアレンジはどこかほのかな次世代への希望も感じます。
8曲目はなんとマンキーズのヒット曲です。これも原曲が解らないほどのアレンジです。見事です。9曲目は「アンティル」は静かでほのかに遠い記憶を辿るアレンジです。こうやってあちこちに希望が散りばめられています。そして10曲目。11曲目を挟んで、12曲目にニール・ヤングのハーベストムーンで、つまり満月を迎えて、復活が起こったという事なのでしょう。
カサンドラ・ウィルソンは、この時代を生きる正に巨匠である。いわゆるジャズ・ボーカリストとは一線を画するその存在を是非、この「ニュー・ムーン・ドーター」で感じて貰いたいと思います。漆黒の草原をゆっくりと地平線に向かって歩む、カサンドラの行く先には、間違いなく新しい世代のジャズがあると思います。
Cassandra Wilson「New Moon Daughter」

アーティスト: Cassandra Wilson
タイトル: New Moon Daughter
カサンドラ・ウィルソンを知ったのは、やはりM-base一派という接点だった気がする。当時、とにかく先端的なサウンドが好きで、スティーヴ・コールマンなどを聞きあさっているうちに、一枚のアルバムに出会った。それはカサンドラ・ウィルソンの「ジャンプ・ワールド」だった。とにかく不思議なアルバムで、ヘッドホンで聴くと、色々な角度からそう360度から音楽が出てくるような、そんな音楽でした。
そして今。カサンドラ・ウィルソンは自分でしか作れない唯一無二の世界を、構築しました。そう漆黒のその世界は決して冷たい世界では無く、むしろ暖かい世界です。彼女は絶望や苦しみを、圧倒的な深い黒色で表現出来る非常に希な、ミュージシャンです。同時代のシンガーでは、エリカ・バドゥが近い色味を持っているように感じますが、オーラは近くても声色は全く違います。。。やはり独自の世界です。本アルバムは、彼女がデビューを果たしてちょうど10年目に出したアルバムで、そして遂にグラミー最優秀ヴォーカル賞を獲得した、一つの大きな節目に当たるアルバムです。
今回の題名「ニュー・ムーン・ドーター」ですが、どうやらアフリカのシャンティ族に伝わる、「欠ける月を伴うのは病気、新月は病を治す」という諺からきているようです。文字通りにこの内容を受け止めると、カサンドラ・ウィルソンは世界を癒す為の、新月の女になろうとしている様に思われます。
古来より新月は日本語で朔とよばれ、それ自体は物事の終わり、つまり死を意味するものである。しかし、東洋思想では死の先には再生が有ります。日本人の発想には輪廻転生などの思想にもあるように、生と死、死と生は人つながりのっものとして考えられてきました。つまり生まれ変わるという事です。だからきっとニュー・ムーン・マザーではなくドーターなのでしょう。この時代に、新たに生まれたからでしょう。
それでは、漆黒の声を持つ、カサンドラ・ウィルソンの「ニュー・ムーン・ドーター」収録曲について触れておきます。
1曲目はいきなり「奇妙な果実」です。ご存じのように奇妙な果実ことストレンジ・フルーツとは、KKKなどによってリンチされ木から吊された黒人を示す隠語です。ビリー・ホりディとは全く違った解釈で、見事に表現しきっている様は圧巻で、私自身、カサンドラの声が荒涼とした空気の中に降り立った瞬間に、完全にやられました。圧倒的な存在感です。
今回のカサンドラのサウンドにはギタリスト「ブラドン・ロス」が不可欠です。この間(マ)のあるアコースティックな独特の世界は、彼でなければ表現できないものです。こういった新しい才能を、いち早く起用するあたり、カサンドラのセンスの良さが現れて居ると思います。
2曲目「恋は盲目」はなんとU2のバラードです。見事にこの曲も自分のものにしています。ほのかに木漏れ日を感じる楽曲です。3曲目「ソロモン・サング」のソロモンとはあのソロモン王の事らしいです。4曲目の「デス・レター」は、あのブルース界の大御所のサン・ハウスの楽曲ですが、見事にカサンドラ・ウィルソンの楽曲になっております。しかし、カサンドラの声は、アコースティックなサウンドにぴったりの声である。
5曲目「スカイラーク」は深い深海にゆっくりとおりていく様な、いやしにも似た、漆黒の闇夜を感じます。独特の世界観です。6曲目「ファインド・ヒム」では、アメリカン・トラディショナルをベースに、カサンドラ色で染め直されてます。7曲目はハンク・ウィリアムスが唄ってヒットさせた「泣きたいほどの淋しさ」です。とても有名な絶望を示した楽曲では有りますが、ここでのカサンドラ・ウィルソンのアレンジはどこかほのかな次世代への希望も感じます。
8曲目はなんとマンキーズのヒット曲です。これも原曲が解らないほどのアレンジです。見事です。9曲目は「アンティル」は静かでほのかに遠い記憶を辿るアレンジです。こうやってあちこちに希望が散りばめられています。そして10曲目。11曲目を挟んで、12曲目にニール・ヤングのハーベストムーンで、つまり満月を迎えて、復活が起こったという事なのでしょう。
カサンドラ・ウィルソンは、この時代を生きる正に巨匠である。いわゆるジャズ・ボーカリストとは一線を画するその存在を是非、この「ニュー・ムーン・ドーター」で感じて貰いたいと思います。漆黒の草原をゆっくりと地平線に向かって歩む、カサンドラの行く先には、間違いなく新しい世代のジャズがあると思います。