世界的な評価を得ている舞踏家の、舞踏家の枠を超えた音楽表現!全てに完璧を要求する、舞踏家の求めた音楽とは?
Joaquin Cortes & The Gipsy Passion Band「Live From Montreux」



アーティスト: ホアキン・コルテス, ジプシー・パッション・バンド
タイトル: ライブ・フロム・モントルー






ホアキン・コルテスの名前、皆さんはどこかで聴いたことがあると思います。それは来日公演についてのテレビCMだったり、或いはバルセロナ五輪の開幕式の舞踏の演出だったり。。。この人はとにかく、本気でダンスを極めようとしている人間にとっては、まさに破格の人といえます。

私の知人の舞踏家さん達にホアキン・コルテスについて話を聴くと、皆が目を潤ませて熱く語ります。Decoyがジミ・ヘンドリクスやジョン・レノンについて語るときと、かなり近いものが有ります。フラメンコの世界観を変えて、その次に舞踏の世界自体を変え、そして舞踏で世界を変えてしまう人です。

ホアキン・コルテスのダンスの世界観は、踊りだけに留まらない総合演出という側面を持ちます。そしてホアキン・コルテスが、その演出で表現するテーマは、世界共通の生物にとって普遍のテーマを表現します。そのせいだろうと思うのですが、ホアキン・コルテスの舞踏は老若男女も、人種も、当然言語も全ての壁を軽く超えてしまいます。とにかく途方もない人です。

Decoyは、音楽がやはり一番なじめる芸術なのですが、その昔舞踏家とのインスタレーションや映像作家とのインスタレーション、画家とのインスタレーションとあらゆるステージで共演して、各アーティストの芸術論を一杯聴かせてもらいました。

その中でも舞踏家という人種の、そのストイックさには惚れ惚れしました。極限まで普段から自らを追い込む様は、ヒップホップ、日舞、クラシックバレエ、ジャズダンス、現代舞踊どのジャンルの方も同じでした。特に、一流の方になればなるほど、そのストイックさは度を超えてゆきます。一日のウチ、寝てる時間と食事の時間以外の全てを舞踏にささげ、それでも飽きたらず、深夜のDecoyのバンドのリハーサルに来て踊る踊る。まだ完璧じゃないと何度も鏡を前にして自分と音楽との間のズレを修正している様には、自分自身身の引き締まる思いでした。

さて、ホアキン・コルテスの今回のアルバム「ライブ・フロム・モントルー」に話を戻します。とにかく演奏も完璧ならば、唄も完璧。ここにホアキン・コルテスの舞踏ですから、もう本当に至福な時間を過ごせるショウで有ることはまちがい無いです。今回の演奏は、1998年のモントルー・ジャズ・フェスティバルにてライブ録音されたものです。

まずは演奏陣から。親子代々ギタリストの「ペペ・カルボネル(Pepe Carbonell)」、フルートのやはりこちらも高名な音楽ファミリー出身の「フアン・パリージャ」この二人はジャケにも写真入りで紹介されて居るくらいで、ホアキン・コルテスにそって無くてはならないミュージシャンなのでしょう。他のミュージシャンとしては、ウッドベースの「フェルナンド・アンジータ(Fernando Anguita)」、ギターのフルートのフアンの兄弟の「マニュエル・パリージャ(Manuel Parrilla)」、「アントニオ・ジメーネス(Anton Gimenez)」、バイオリンの「フリオ・ムーノス(Julio Munoz)」パーカッション「エル・バンドレオ(El Bandolero)」「エル・モリト(El Morito)」「ミランカール・ケルサ(Mirankar Khalsa)」キーボード「ペドロ・オジェスト(Pedro Ojesto)」といった編成です。ギターとパーカッションが中心のサウンド構成です。この辺りはフラメンコを土台にしつつ、フルートやバイオリン、ウッドベースで味付けをしたという感じです。

そして唄の方ですが、こちらもかなり協力で、ギターの「ペペ・カルボネル(Pepe Carbonell)」の弟である、「アントニオ・カルボネル(Antinio Carbonell)」、フラメンコの名門一家出身の「フアニャーレス(Juanares)」、そして女性陣は実力派の「Charo Manzano(チャロ・マンサーノ)」、18歳の新人「Estrella Morente(エストレージャ・モレンテ)」という布陣です。

はっきりいって、どの人もフラメンコ界の主要人物であり、超エリートといえます。これだけのメンバーを集める事が出来る人間は、そうはいません。お金の事もありますが、それ以上に超一流をまとめるカリスマを持つアーティストはそうそういません。この辺りもホアキン・コルテスが国の英雄である事と関係していると思われます。

楽曲としては1曲目「Cositas Nuestras(ぼくたちのやり方)」はフラメンコの歴史を凝縮したような11分間。物語調に情熱的に展開していく圧巻の11分間です。魂が震えます。ギターのカッティングがもう堪らないくらいダンディ!よくよく聴くと12拍子という変拍子です。本当に素晴らしい。ホアキン・コルテスはこうやる!と力強く宣言します。

2曲目「Que Va Pa' Cai(カディスに向けて)」はパーカッションとハンドクラップが生かされた楽曲で、喜びを表現するアレグリアスという曲調の明るい、いかにもラテンな感じの曲です。やはり変拍子です。3曲目「Tu No Puedes Llenarme De Amor(君はぼくを愛で満たすことはできない)」はルンバらしいのですが、もう少しクラシックな知的な雰囲気を持つアレンジです。後半の盛り上がりはやはりジプシーの魂を感じます。

4曲目「La Noche Oscura(暗い夜)」はキーボードのアレンジを含め、一瞬パット・メセニーを思わせる様な、現代的なアレンジです。決して伝統に甘えない姿勢が現れている現代のフラメンコです。5曲目「Dioses Pequenos(小さな神様)」はもはや、フラメンコでは無いですね。しかしポップスという訳でもないオペラでもない、凄く生々しいバラードです。非西洋的なポップスといった所でしょうか?

6曲目「Gitanos De Europa(ヨーロッパの異邦人)」はとにかくギターが格好いい。ブラジルの音楽にも見受けられる、ギターとフルートの相性の良さがここでも見事に表現されます。Decoy一押しの楽曲です。この後も7曲目「Los Pastores(羊飼いたち)」8曲目「Cibayi【Tangos】シハジ(タンゴス)」と素晴らしい楽曲が続きます。キメに痺れていると、最後まであっという間に終わってしまいます。

このアルバム「ライブ・フロム・モントルー」、DVDでも出ているので、興味の出た方はそちらもお楽しみください。

多くのプロフェッショナルとの共演は、20代のDecoyとっては、宝物です。それは今、広告をプロデュースする立場になって特に生かされているように思えます。そんな事も思い出しつつ。今はこのアルバムを楽しみたいと思います。