ベン・ハーパーという一人のアーティストが、今の時代に求め訴えるPleasureとPain。彼のルーツの一端を垣間見れる、感動作。
Ben Harper「Pleasure & Pain」



アーティスト: Ben Harper
タイトル: Pleasure & Pain







「音楽は一番純粋な心の声。言葉や人種や年齢を越え、あらゆる人々のハートへ直接届く。」

冒頭のベン・ハーパーの言葉だ。Decoyは去年、ベン・ハーパーをライブで見た。久しぶりに、体も心も満足できるライブだった。ベン・ハーパーはその日も全開で聴衆の前に現れた。彼の心は完全に開かれていて、
「こっちへおいで。もっともっと心を開くんだ。喜びも痛みも全て受け入れてしまうんだ。あるがままに。」
と。こりゃ、まずいと思った。もう正当に演奏を評価するモードじゃなくなってしまった。それは一種呪術的で、マジックにかからないで冷めた視点で見つめる人もいるわけですが、恐らく開かれたマインドを求めてレコード漁りするような放浪癖と、収集癖をもって、ビートニク文学をこよなく愛しながら、一生涯を川口浩隊長を師と仰ぎ、探検して過ごそうと思っているDecoyみたいな人間は、間違いなくイチコロでした。

とにかく、このDVDをなぜ敢えて名盤道で紹介するのかを説明したいと思う。普通ならば、ベン・ハーパーのライブDVDとかを紹介するのが一般なのだが、Decoyは彼の音楽の本質のありかを、このDVDに見つけたような気がするのです。そして、このDVDが世界に広まる事によって、この世界が少しでも少しでも愛が溢れる様になると、ささやかに思うのです。

今時、彼ほどメディアを用いないアーティストは少ない。コマーシャリズムと全く関わらないところで、これまで活動してきた。どちらかと言えば知る人ぞ知るという存在だった。しかし、彼は現在大成功を納めている。何故だろうか?その答えは簡単だ。DVDの中でライブでファンとのやり取りの中でも取り上げられているが、とにかくベン・ハーパーは口コミで有名になったのだ。
「どうやってボクをみんなは知ったの?友達から教えてもらったの?」
この問いかけに、ファンは大きな歓声をあげた。そしてベン自身その事をとても誇りに思っているようだった。

これに似た光景を昔、Decoyは一度目撃した事がある。そう故スティーヴィー・レイ・ヴォーンのライブだった。思えば、ベンとスティーヴィーはそっくりだったりする。いつも全力で一生懸命。他のやり方を知らないから、みんなに一生懸命音楽を聴かせる。ただ、一点だけ違うところがある。それはスティーヴィーが命を削って演奏していたのに対して、ベンは命を生み出して演奏している。この違いは、何かといえば一つにはドラックやアルコールの影響もあるだろう。でも、それより大きな違いはベンの生い立ちにある。

彼は心底皆に愛され続けてきた、とても幸せな人なのです。それは祖父母、そして母親からのビックラブ、そして彼を捨てた父親からもベンは音楽の才能を分けて貰っている。ベンは誰のことも憎んでいないし、誰とも競おうとしない。その必要性が無いからなのです。人は環境に育てられるのだと改めて思います。

ベンの場合、あまりに特別なのでそれを真似る事が出来るかどうかは解らないですが、それでも自分の子供を育てるのには、きっとベンに教えて貰った、心を開いて全開で合いを与えたいとDecoyは思う。そうすれば、Decoyの子供も、誰かにそうやって愛を分けてくれると思う。そうやって愛の連鎖がこの世界を包んでいったら、きっと素晴らしい世界が生まれると思う。

ベンがお母さんと一緒に歌ってるシーンがこのDVDには納められています。これも必見です。素晴らしいです。唄はこうやって語り継がれるのだと、思わされます。Decoyも自分の子供と一緒に演奏して唄えたら、本当に最高だと思います。人に見せなくていいのです。リビングで妻と一緒に家族とともに。

Decoyは彼のファーストアルバムを初めてきいた時の、不思議な感覚を今も忘れない。タジ・マハールのファミリーとして紹介されていた彼は、師匠同様あまりにユニークだった。アコースティックでブルージー。でもまるでジョン・レノンの唄を聴いているような感覚。ハートフルで、決して折れない強い心。明らかに新しいカリスマの誕生を感じ取った。そして、その後の伝説の日本公演の数々。ライブで花束を貰って感涙したり、ギターケースをステージに置いて、神戸の震災の義援金を集めて回ったり。そう。まるで彼は、レノンのストロベリー・フィールズからやってきた様だった。

白人と黒人のハーフというまさにアメリカの象徴のようなベンを見ていると、アメリカの未来はとても明るいと感じます。人は、やはり憎しみ合う為に個性が有るわけでは無いのです。お互いを尊重し合うために、個性が有るのです。

今回は、純粋な音楽の話しから少しずれてしまいました。でも音楽というか、芸術のとても大事な一面だと思いますので、意味がないとは思いません。皆さん如何でしょうか?それでは。