ブラジルの巨匠ギタリストによる、キャリアを統括した充実作品
Baden Powell「アフロ幻想組曲」
当管理人が愛して止まない、ブラジル音楽。その中でもやはりギターリストの端くれとしては、避けて通ることが絶対に出来ない、巨匠がいる。そうバーデン・パウエルである。

既に、バーデン本人は残念ながら鬼籍に入られておりますが、彼のそのプレイスタイルは現代にも脈々と受け継がれています。ジョアン・ジ・アキーノ、ホメロ・ルバンボ。そしてヤマンドゥ・コスタ。ヤマンドゥは、名実共にバーデン・パウエルの直系の後継者と言えます。

バーデン・パウエルの奏法を一言で言うと、欧米のハーモニーとアフリカのリズムを併せてそこに、ブラジル特有の躍動する生命感を足し、さらにブラジルが軍事政権下にあった時代に身を寄せていたフランスの哀愁をギュッと詰め込み濃縮させた演奏といえる。一度聴けば絶対に忘れることは無いと思う。リズムとハーモニーとメロディを同時に掻き鳴らす。独特の訛のようなシンコペーションを持っている。

以前、一度日本のテレビ番組で彼のライブ映像が流れた事がある。惜しくも録画出来なかったが、その番組でのライブ演奏はもうかなりの老齢になってからのモノで、ちょうどこのアルバムと同時期だった。彼はこの時期ガンとの闘病でかなり痩せており、ステージにあがる足取りもおぼつかなくなっていた。しかし
「うーん寄る年波には勝てないのかな?」
という私の気宇は愚問に終わりました。ステージにあがったバーデンは背筋が伸びダンディーでした。そしてそこから鬼気迫る勢いで、演奏を始めた。凄い。その瞬間、ハコの空気が変わった。バーデンは、未だ演奏家としてのピークを継続させていた。またの機会で紹介するが、孫にあたる世代との共演ライブの音源の中でも、若手をグイグイ煽るバーデンお爺ちゃんがいた(本アルバムでも息子達が参加している)。

基本的に、これほどまでの巨匠になると全ての作品が傑作であり、どれから聴いても素晴らしいのだが、本作品には彼の18番である「ビリンバウ」や「イパネマの娘」「サンバ・トリステ」、そして超有名曲「カーニバルの朝」「いそしぎ」。オリジナル曲の「盲目のアデラウド」「サンバ・ノヴォ」も収録している。まるでベスト盤と言える内容です。演奏内容はどれも素晴らしく、まさにバーデン入門者にはぴったりのオススメ盤と言えます。バーデンのアルバムの中でも入手しやすいアイテムだと思います。一度是非、世界遺産クラスのその演奏に耳を傾けてください。
アーティスト: バーデン・パウエル
タイトル: アフロ幻想組曲