2019年5-6月にかけて、
虹の学校🌈(https://www.facebook.com/rainbowschoolthailand/)
でデング熱が流行り、何人もの生徒さんが入院するという事態が起きました。
これをきっかけに虹の学校医療基金が設立されたり、スタジオでも募金活動を行ったりしています。
今回虹の学校🌈への継続的支援活動をバンコクでされている団体、Nadethai-ヤマトナデシコ in Thailand-のメンバーのMayumiさんが、デング熱についての啓発資料を作られたので、ぜひこちらでご紹介させて下さい。
デング熱はバンコクでも流行る時期があります。私自身知らなかった事も多かったので、この資料はぜひ多くの方の目に止まってほしい、と思いました。
それでは、こちらをどうぞ。
生き物による死因ランキング
この表は何を表しているか分かりますか?
これは、人を殺してしまう生き物の種類と、1年間に亡くなった人の数を表しています。 どんな生き物がいるか見てみましょう。象がいますね。人を踏み潰し てしまったのかもしれません。ライオンやワニは肉食動物なので、人間を襲ったのでしょう。では犬はどうでしょう?犬は時々人を噛みま すが、普通噛み殺しはしません。この殆どは、狂犬病の犬に噛まれて 亡くなった人の数です。狂犬病は、直ぐにワクチンを打ちに行かない と確実に死んでしまうという、恐ろしい病気です。
その他、毒蜘蛛や毒ヘビなど、小さくても人を殺す 力を持つ生き物は、沢山存在します。それでは、2番目と1番目に多いのは、どんな生き物でしょうか?
2番目に多いのは、人間です。戦争が起きている国もあれば、犯罪に巻 き込まれて亡くなる人もいます。交通事故で命を落とす人もいます。
ニュースを見ると毎日のように、人が人によって命を落としたという ニュースが流れています。ですが、それでも1番ではないんです。
この世で1番沢山の人を殺している生き物とは、なんでしょうか? それは、皆さんのとても身近にいる生き物。「蚊」です。
毎年、世界で70万人以上の人が蚊によって亡くなっています。どれくら い多いのか想像してみましょう。タイに住んでいる日本人が大体7万人
ですから、その10倍もの人が、蚊に刺された事が原因で亡くなっている
ことになります。日本の人口でいえば、高知県に 住んでいる人とほぼ同数の人が、毎年蚊によって 亡くなっているのです。
では、どうして蚊に刺されると死んでしまうことがあるのでしょうか。 それは、蚊の中には恐ろしいウイルスを持っている蚊がいて、人間の血 を吸う時に、そのウイルスを人間の身体に移していくからです。
タイではデング熱の他に、マラリアやジカ熱に感染する恐れがあります。 マラリアを媒介するハマダラカは、タイやミャンマーの山間部に生息しています。感染すると40度近い高熱を繰り返し、身体が弱って死に至るという恐ろしい病気です。かつて日本でも沢山の人がマラリアで命を落 としました。ただし、今は治療薬があり、適切な治療を受ければ大丈夫 です。
ジカ熱は、通常1週間程度で治る病気です。
でも、人から人へも感染することがあります。また、妊娠している女性が感染すると、赤ちゃんが障 害を持って生まれてくるリスクが高まります。予防 薬はないので、妊娠を希望する女性や妊娠中の女性 がいる場合は、特に注意が必要です。
デング熱の発生エリア
それでは、1番身近に発生しているデング熱について勉強しましょう。
これは、世界の中でデング熱が発生している場所を示しています。 黄色はデング熱発生地域、赤色はデング出血熱も発生した地域です。 日本は、ここです。日本にはデング熱は無いことになっています。
でも実は5年前、久し振りにデング熱が発生して大騒ぎになりました。 タイはどこだか分かりますか?ここ、赤い場所です。つまり、デング熱
の中でも特に恐ろしい、デング出血熱が発生しいてる場所なのです。
デング熱発生のメカニズム
ではデング熱は、どうやって広がっていくのでしょうか? 始まりは、たった1人の人、たった一匹の蚊かもしれません。
この絵を見てみましょう。ある一匹のメスの蚊が、1人の人間の血を
吸いました。たまたまその人間はデングウイルスに感染していたの で、蚊の体内にもウイルスが入ってしまいました。 こうしてこのメスの蚊は、デングウイルスを人間に感染させる、恐 ろしい蚊に変身してしまったのです。
その後、変身したメスの蚊は、生涯で3人の人間の血を吸いました。 刺された3人は全員、デングウイルスに感染してしまったのでした。
デングウイルスの種類と特徴
今年は去年より沢山の人がデング熱にかかっています。その人 たちは、もうデング熱にはかからないのでしょうか? また、今回熱を出さなかった人は皆、運良く感染しなかったの でしょうか?
デングウイルスには4種類の型があります。感染した型に対しては 免疫ができるので、もうその型のウイルスに苦しめられることは
ありません。でも、免疫はそれ以外の型には効かないので、生涯 でデング熱に感染する可能性は4度あります。どの型に感染しても
重い症状が出る恐れはありますが、不思議なことに、2度目の 感染時の症状が最も重くなりがち、という傾向があります。
デングウイルス感染後の経過
そして、デングウイルスに感染しても、全員が熱を出すわけではあ りません。感染しても、半分くらいの人は症状が出ないのです。 それでも、その人たちもウイルスに感染している為、普通の蚊を デングウイルスを持った蚊に変身させる力は持っています。
一方、残りの半分の人には熱などの症状が出ます。今はデング熱
の薬がないので、血液検査で状態を確認しながら、出てきた症状に
対する薬を飲んで治るのを待ちます。通常1週間~10日ほどで治り
ますが、血小板の数が減ってデング出血熱の恐れが出てくると、 病院に入院して、一層適切な医療処置を受けなければなりません。
日本の蚊との違い
デング熱を媒介する蚊はネッタイシマカとヒトスジシマカの2種類で、 この蚊は日本でも生息しています。ただ、タイの蚊は日本の蚊よりも ずっと強いのです。タイの蚊をやっつけるには、日本の蚊よりも20倍強い と思って薬剤を準備しないといけません。そして、ミャンマー国境に近い 虹の学校の場合は、日本の蚊よりも40倍強いと思った方が良いでしょう。
どうしてこんなにタイの蚊は強いのでしょう?気候や環境なども強さの 原因ですが、一部の悪い人達もこの結果を招いたと言われています。 蚊は、殺虫剤を撒かれればそれより強くなろうと進化していきます。 その為、殺虫剤に使う薬剤の量には基準値が定められているのです。
それなのに、一部の悪い人達が商品を売りた くて強過ぎる薬剤を使用した為に、蚊がどん どん強くなってしまった、というのです。
私たちにできること
それでは、私達が蚊から身を守る為にできる事とは何でしょうか。 例えば泥棒から身を守る為には、どうしますか?
泥棒が入りたがらない造りの家にしたり、窓やドアに鍵をかけて入っ て来られないようにしたり、泥棒に大切な物が見えないようにしたり しますね。そして外でも、泥棒に狙われないように意識しますね。そ れと同じ事が必要です。 まず、蚊を発生させない環境を作ること。そして、家の中に入れない
こと。それから、外でも蚊を近寄らせないことの3つです。
1.蚊を発生させない(清掃、清潔)
まずは、家や学校の周りで蚊が生まれたり生活したりし難くする方
法を勉強します。蚊は、水溜りがあれば1度に100個も卵を産みます。 だから1番大切なのは、身の回りに水溜りを作らないという事です。
・風通しの悪い草地 :定期的に草を刈る(早朝と夕方は避ける) ・水の溜まった雨樋 :定期的に雨樋から草を取り除き、水を流す ・畑道具や遊具など :バケツなどに水が溜まらないよう、裏返す ・洗濯機など水回り :使用後は水分を拭き、溜まり水を残さない
・植木鉢等の受け皿 :毎日溜まった水は捨て、受け皿も洗浄する
・排水溝や雨水マス :細かい網などで蓋をして蚊の入り口を塞ぐ
・雨晒しの古タイヤ :タイヤの内側に水が溜まらないようにする
他にはどんな事に気を付ければいいでしょうか?
皆で考えたり、ルールを決めてみましょう。
2.蚊を侵入させない(1薬剤–その1)
病気を治す為に薬を使うように、蚊から身を守る為に薬を使うのも
効果的です。色々な種類があるので、正しく使いましょう。 蚊取り線香は、ココナッツやコーヒーの殻、タピオカ粉や木粉などに
薬剤を練り込んだ線香です。1巻で8~10時間煙を出し、近くに蚊を寄せ
付けません。煙で喉や頭が痛くなる人もいるので、室内ではなく、屋外 活動の時に近くで複数焚いてシールドを作ったり、玄関や窓などの蚊の 侵入口で焚くと良いでしょう。 ワンプッシュは、室内に入ってきてしまった蚊に有効です。薬剤の粒子 がとても小さいので、少しの量で蚊が隠れる物陰や隙間にも届きます。
効果は12時間ほど持続します。人の神経系には効かず、体内に入った 薬剤は酵素で分解されます。ただ、薬剤の持続時間が長いので、外出時に
散布して出掛けたり、寝る前に寝室に撒いておくのも良いでしょう。
2.蚊を侵入させない(1薬剤–その2)
殺虫スプレーは、本来は虫に直接噴射して確実にやっつけるものです。 ただ噴射箇所の効力は2~3時間持続するので、虫除けにも使えます。
例えば屋外遊具や屋外家具の陰に噴射してから使えば、蚊がそこに
隠れて人を待ち構えたりしないので、刺される機会を減らせます。 虫除けスプレーは、厳密には虫が寄ってこないスプレーではありません。
薬剤のついた部分が蚊にとって「見えない」状態になるものです。
なので、塗り方にはコツがあります。まず、スプレーしたら手の平で
体全体に塗り広げましょう。首の横、二の腕の外側、膝の裏、耳の裏、
くるぶしは、特に塗り忘れがちな場所なので、注意しましょう。 また、虫除け成分は汗で流れてしまうので、小まめに塗り直す必要が
あります。ただし強い薬剤ディートが使われている場合は、顔には使用 しないこと。含有量の少ないものを使用するのが良いでしょう。
2.蚊を侵入させない(2植物活用)
植物の中には、蚊が嫌がるニオイや成分を持っているものがあります。 嫌がるだけなので大きな効果は見込めませんが、これらの植物は人間 には良い香りだと好まれているものや、料理に使えるものもあります。 建物の周辺や、蚊が産卵しそうな場所で育てると良いでしょう。 育ったら、葉っぱを手で擦ってみましょう。香りが強まって、蚊が ますます嫌がります。
また、これらの植物は薬草としても有名です。 それぞれを摘んで、お湯を注いでお茶にして飲んでみましょう。 頭痛が治るのはどれか、リラックスするのはどれか。 集中力を高めるという植物もあります。 皆で嗅いだり飲んだりして当ててみましょう。
3.蚊を近寄らせない(+αの自己防衛)
それから、ほんの少しの工夫で刺される機会を減らすこともできます。
まずは、蚊が元気に飛び回る場所と時間帯を、人間の方から避けること。
蚊は早朝と夕方が1番元気なので、外で過ごす時にはしっかりと虫除け対 策をしましょう。蚊が住めないように家の周りの草を刈ったり水を入れ替
えたりする時間も、早朝と夕方は避けるようにしましょう。
また、蚊に刺されないように長袖長ズボンを履いたことは、有効 な対策だと言われています。今後は、更にもうひと工夫。 それは、黒や濃紺の服を避けるということ。蚊は濃い色がよく見 えるので、黒や濃紺だと「ここにいるよ!」と教えてしまうこと になるのです。外で遊んだり仕事をしたりする時は、できるだけ 蚊に見えにくい、薄い色や明るい色の服を着ましょう。
3足裏の常在菌を洗い落とす
これは、田上大喜君という日本人の男の子の話です。 田上君は、妹ばかり蚊に刺されるのがとても不思議でした。それで、 自分で一生懸命研究して、ついに発見したのです。それは、蚊は、 足の裏にある「常在菌」と呼ばれる菌の数が多い人に集まってくる、 ということです。 この発見は、世界でも注目されました。実験の結果、水だけで洗うよ りも、石鹸を使ったり、アルコールで消毒したりする方が一層効果が あったそうです。私達も、身の回りにある消臭・殺菌作用ある物を使っ て、足の裏をしっかり洗いましょう。
蚊に負けない生活習慣を身に付ければ、蚊だけなく、色々な病気から 身を守ることができます。遊ぶにも、勉強するにも、仕事をするにも
元気が1番。家族全員、元気にタイの暮らしを楽しみましょう!