荒涼たる風景の中を少女たちが歩いている。
地元出身のひとりは、仲間に支えられながら、泣きながら歩く。
風景に押しつぶされそうで、背を丸めてとぼとぼ歩く。
はるか向こうで歓声があがる。
でもまだ歩く。
雨の中を歩いて行く。 トラックの荷台のステージまで。
白いコートを脱いで、Tシャツとジーンズ姿になったAKB48がステージに上がる。
AKB48といっても、10人にも満たないほんの数人だ。
小さなステージの前には、陸前高田の人々が待っている。
特に子供たちは、他には何も目に入らない。ひとみがキラキラ輝く。
前田敦子が呼びかける
「雨だから風邪ひかないように・・・
でもこうなったら、みんなびしょびしょになってやりましょう!」
子供たちの表情は、純粋な喜びに満ちている。
絶望を生きてきた子供たちに、純粋な喜びを与えられる人間がいるか?
雨にぬれ、ぺったりした髪をピンで留め
丸いおでこをそっくりさらけ出し、前田はひとりひとりと握手する。
テレる子供たちの手を握り、明るく声をかけやさしく微笑む。
こういう時、人間出るだろう。 ごまかしきかんだろう。
前田敦子は素晴らしい。
※ タイトルはもちろん、平岡正明・著 「山口百恵は菩薩である」のパクリである。