小沢一郎民主党元代表(69)の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、14日に第2回公判が開かれる予定の小沢元代表について、国会での証人喚問が実現するかどうかに注目が集まっている。
野党は証人喚問を要求する構えだが、公判への影響を懸念する小沢元代表側は、三権分立を“盾”に否定的な姿勢を示している。公判中の被告を証人喚問することに問題はあるのか。
「裁判所は法と証拠に基づいて判断をする場でしょ。それがいろいろな力や干渉によって結果(判決)が左右されるようなことになったらいけない」。初公判を終えた6日夕、記者会見の席に着いた小沢元代表は語気を強めた。国会の証人喚問で説明責任を果たす意思を問う記者をにらみつけ、「君は三権分立をどう考えているの」と逆質問した。その上で、「もうちょっと勉強してからまた質問してください」と言って、国会での説明を事実上拒否した。
しかし、憲法で、国会には、国政の様々なテーマについて証人を呼ぶなどして調べる「国政調査権」が付与されており、その一環として、刑事被告人を喚問することは可能だ。
ある法務省幹部は「三権分立で刑事裁判の独立性が保たれているからこそ、国会が証人喚問で真相を追及しても問題ないはずだが……」と、小沢元代表の主張に首をひねる。ベテラン刑事裁判官の一人も、「裁判官は公判に出てきた証拠と法律だけで有罪・無罪を判断する。証人喚問の内容が証拠にされない限り、裁判官の判断に影響を与えることはなく、全く問題ない」と断言する。
ロッキード事件以降、証人喚問を受けた国会議員は12人で、小沢元代表も自民党当時の1993年、東京佐川急便事件を巡って証人となった。ただ、喚問が行われるのは検察当局が本格的な捜査を開始する前が多く、起訴後の被告が対象になったのはオレンジ共済組合事件で友部達夫参院議員(当時)が97年、勾留先の警視庁で出張尋問を受けたケースだけ。公判中の国会議員が証人となった例はない。
小沢元代表の主任弁護人の弘中惇一郎弁護士は、証人喚問は、証人が反論する機会が与えられないなど人権上の問題がある上、本人に不利な発言が出れば公判で証拠とされる可能性もあることから「法廷以外の場で、被告が事件に関して発言するのはプラスにならない。応じてほしくない」と述べる。被告人としての立場を考慮した発言だ。
憲法学者の間でも、公判が進行中の被告については、裁判所への不当な圧力にならないよう一定の配慮が必要になるとの見解が多い。喚問の目的が有罪・無罪を決める刑事裁判と実質的に同じ場合や、裁判所の判断の是非を審査することにある場合は、司法の独立を害する恐れが出てくる。逆に言うと、国会が固有の視点で「議員としての説明責任を果たさせる」「規正法の問題を検討する」といった目的で行うのであれば喚問は許されることになる。
一方、民主党の輿石幹事長が「元代表は無罪だ」と発言したり、元代表周辺から元秘書3人を有罪とした東京地裁判決に対して批判の大合唱が起きたりしていることには、三権分立の原則から問題があるとの指摘も多い。ある法曹関係者は、「仮に元代表が無罪とされた場合でも、周囲が騒いだから裁判所が影響されたと受け止められる恐れもあり問題だ。三権分立を言うなら、まず配下の議員をおとなしくさせることが先決ではないか」と批判している。
◆三権分立=国の権力を立法権(国会)、行政権(内閣)、司法権(裁判所)の三つに区別し、お互いにけん制、チェックさせて行き過ぎや暴走を防ぐ制度で、日本国憲法もこの考え方の上に立つ。司法は立法、行政の逸脱行為を監視する重要な役割を担うとされ、憲法は個々の裁判官の判断について「良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」(76条)などと、司法の独立を規定している。