国内外の長期金利の急上昇、それによる利回り商品としての魅力低下、そして需給環境の悪化が重なったことが大きな理由なのか? 実物不動産市場の景気自体はオフィス空室率の改善や賃料上昇など好調を維持しているものの、マクロ経済や金融政策の変化による「逆風」が直撃している。
1. 国内外の長期金利の急上昇(最大の要因)
イールドスプレッドの縮小: 日本の10年国債利回りが2%〜3%台へ急上昇したため、無リスク資産である国債と、リスク資産であるJ-REITとの「利回り差(イールドスプレッド)」が縮小した。これにより、投資家が「わざわざリスクを負ってJ-REITを買う必要性が薄れた」と判断し、債券などへ資金をシフトさせた。
米国の利下げ観測の後退: 米国などの海外金利もインフレ懸念から高止まり・再利上げ観測が浮上したため、世界的な金利高がJ-REIT価格の重荷になった。
2. 金融機関の「合わせ切り」による需給悪化
決算期(3月末など)に向けて国債の損失を相殺(相殺消去)するため、含み益が残っているJ-REITを売却して利益を捻出する「合わせ切り」の売りが相次ぎ、市場の需給が急激に悪化した。
3. コスト高と支払利息の増加(収益圧迫懸念)
借入コストの増加: J-REITは金融機関から多くの資金を借り入れて不動産を購入している(LTV40〜50%程度)。今後の「金利3%時代」を見据えた日銀の追加利上げ観測により、将来的な借換え時の支払利息増加(収益圧迫)が強く懸念されている。
インフレによるコスト高: エネルギー価格や建築資材、人件費の高騰により、物件の維持管理費(電気代や修繕費など)が先んじて増加している。
4. コスト転嫁のタイムラグ
不動産はインフレに強い資産とされるが、J-REITが保有するオフィスや住宅の多くはテナント契約が数年単位で固定されている。そのため、「コスト増はすぐに発生するが、賃料(家賃)の大幅な引き上げには時間がかかる」というタイムラグが生じており、一時的な減配リスクや業績足踏みが嫌気された。
現在の市場のバリュエーション
こうした大幅な下落により、J-REIT市場全体の平均分配金利回りは5.6%超まで上昇している。保有不動産の時価から試算した純資産価値に対して時価総額が下回るNAV倍率も0.8倍前後まで売り込まれており、実物不動産の価値に対して証券市場の評価が極めて割安な状態(過剰反応)にあるとも指摘されている。