幸田文『季節のかたみ』(講談社文庫)


幸田文さんの随筆と出会ったのは、大学生の時。講師としてバイトしていた塾で。


国語のテキストの中、目にとまった一節があまりに印象的すぎて。


 別れの哀惜、終りの悲嘆に出逢ったとき、人はみがかれると思う。


 私たちの胸には、日常ああ思いこう思う、いわば情念のごみみたいなものが山と積っているが、


 別れや終りはそれを吹きはらってくれる、冷えた風のように私はおもう。


 傷みを伴うけれど、別れとは、いいものである。 

 (「ことしの別れ」)


なんて清らかな感性。


自身を取り巻くものに穏やかな視線を向け、丁寧に紡がれた言葉は


するすると心に入り込んでいく。


それがなんとも心地良いのです。


ストレスフルな生活の中で、本来あるべき心の動きを思い出させてくれる名著。



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