授業というのは英司にとっては眠気を誘うものでしか無かった。チャイムで眠りから覚めるというのも少なくは無かった。
(くっそ・・・!なんだってこんなに眠いんだ!)
十分に寝てはいるはずだが、眠気というものは拭えなかった。
(今日はそういう日ってことにして寝るか・・・。バイタルチャージってことで・・・。)
一番最後の授業終了するまで本当に寝てしまった。
「おい、英司。掃除だ。さっさと起きろ。」
初春が起こしてくれた。
「もうそんな時間かよ・・・。おはよう」
英司はアクビをしながらそんなことを言った。
「バカ!寝ぼけてる場合かよ!さっさと起きて、机を運べ!」
英司は言われるがままに起き上がり机を運んだ。
「あと、お前先生にずっとチェックされてたぞ。」
「だろうな。」
ずっと寝ててチェックされないってのはそれはそれでおかしい事ではある。
「留年おめでとうよ。」
初春の最大の皮肉だった。
「よせよ。」
英司も少し笑いながらだった。
帰り道も至って変わった事は無かった。いつも通り自転車で帰路を辿り、家に着いた。
「ただいまぁ~。」
英司が言うと妹の紗季が居るのがわかった。
ほい。と紗季は手に持っていたハンカチを英司に投げた。
「これは・・・俺のハンカチ?なんでお前が持ってんだよ?」
紗季は持っていたコップをテーブルに置きながら
「あんたが帰ってくるちょっと前になんか女の人が来たの。あんたがハンカチ落としてたから届けに来てくれたんだってさ。チョー美人だった!あんたなんかに不釣り合いな位!」
「まぁ、お前よりいい女ってのは確かなのは分かってるよ。んで、名前は聞いたのか?」
恩を受けたのだからせめてお礼はしなくてはならないと英司は思った。
「確か黒木マイだっけ?チョー美人で大人しそうで清楚でどこか品を感じたわぁ~!」
お前とは正反対だな。とは言わなかった。喧嘩になるのは勘弁だった。
明日はこの黒木さんを探す日になりそうだな。と思った。
「んで、なん組だって?」
「そこまで聞いてないわよ。ちゃんとあんたと同じ学校であんたと同じ2年生だったわよ。」
了解。とだけ返した。
今思うとこのハンカチには自分の名前を書いてたのか・・・。無くさずに済んだからまぁいいのかもしれないが、名前を書くというのはちょっと恥ずかしく思えた。