秘密がバレる時~源氏と藤壺、落葉の宮、浮舟 | 前世はきっと平安貴族

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歴史大好き!とりわけ平安時代をこよなく愛する私です。
こんなに惹かれる理由はきっと前世で生きていたからにちがいない。
源氏物語ネタをメインに、色々思っている事を書いてゆきます。あらすじとか一切書かずに自分の思いだけを強引に綴ってゆきますので悪しからず〜。

まずはここからいってみよう。

 

 

~源氏と藤壺の秘密~

 

源氏物語の中には「秘密」がいくつか

存在するが、その最たるものは

やはり「冷泉帝出生の秘密」だと思う。

 

何たって源氏が父親の妻に手を出して

妊娠させ、生まれた子をあろうことに

帝位につけてしまったのだから。

 

これはそんじょそこらの秘密とは

スケールのでかさが違う。

 

愛する紫の上に自分の女性遍歴を

ぺらぺら暴露するという口の軽い

アホ源氏も、さすがにこの秘密だけは

隠し通そうとした。

 

したがって読者は「この重大な秘密を

知っているのは私たちだけなのね」と、

ある種の優越感を感じながら

物語を読み進めてゆくわけだ。

 

生まれた子に対面した時の

源氏の君によく似ているね」という

桐壺帝の言葉ハラハラしたり

 

その子が東宮となり、帝として

即位した時も「あらら、本当に

いいのかしら~?」と心配したり

 

野次馬根性または姑根性まるだしで

読者は経過を見守ってきたのだ。

 

しかしこの「永遠に守られる」と

思われた秘密も、バレる日が

やって来た!

 

 

それは藤壺の喪中での出来事。

 

冷泉帝のところに来ていた

「夜居の僧」が、故・藤壺と源氏との

関係をバラしたのだ!

 

そもそも何でこの僧が2人の関係を

知っていたかというと、源氏が須磨に

流される時、哀れに思った藤壺が

「私が代わりにこの不幸を引き受けたい」

ってな事を僧に依頼したからだ。

 

しかもその時「他言は一切無用です」と

藤壺に念を押されていたにも関わらず、

僧は冷泉帝にこの事を喋ってしまった。

 

おい!夜居の僧!

お前自分が何をしたか分かってるのか?

 

 

たしかにこの秘密はあまりにも

罪深いものだった。

神罰をこうむってもおかしくないほどに。

 

それゆえこの僧は、自分1人の胸に

しまっておく事に耐えられなかったの

だろうと推測する。

 

我々読者としては

「あらら~、言っちゃったよ」

と少なからず落胆の思いだ。

 

しかし、冷泉帝の偉いところは

夜居の僧の告白を聞いて瞬時に

母宮と源氏の関係を理解し、かつ

自分が帝位に就いている事への

後ろめたさを持った事である。

 

しかも源氏を責めるどころか

「父君が自分の臣下として存在

している事が不憫でならない」と思い、

後に「准太上天皇」という高い位を

源氏に与えるという孝行ぶり。

 

ここ、私だったら

「え~!自分はてっきり桐壺帝の

息子だと思っていたのに、源氏かよ~!」

「うっわ~、ヤダヤダ!」

「なんか自分の血が穢れたみたい」

「母君も何であんなヤツと・・・!」

って暴れてしまうところだ。

 

しかし物語の中の冷泉帝は、

自分が帝位を継いでいる事への

罪悪感はあまり無いらしい。

 

もし冷泉帝が皇族の血を一滴も

持たない人間との間に生まれたの

だったら、帝位につく事は

国に対する謀反とも言えるほどの

重大犯罪となるだろう。

 

しかし実際は、藤壺はもちろんの事、

臣下に下ったとはいえ源氏も皇族で

ある事には変わりが無いので、

かろうじて皇統を断絶させた事には

ならない。

 

まぁギリギリセーフ!といえば

そうなのかもしれない。

 

ともかくこの重大な秘密は意外な

人物によってバラされた。

 

 

 

~落葉の宮の秘密~

 

かわって今度は落葉の宮。

 

彼女は夫(柏木)の未亡人として

ひっそりと小野の里で暮らして

いたのだが、そこに目をつけたのが

源氏の息子・夕霧。

 

夕霧と結婚する気などさらさら無い

彼女は、病気の母(一条御息所)に

余計な心配をかけたくないので、

度重なる夕霧のアプローチの事を

ひた隠しにしていた。

 

そんな折、一条御息所の病気平癒の

祈祷に通って来ていた阿闍梨が

ポロッと「最近、夕霧様がお宅の

娘さんの元によく来ていらっしゃる

ようですねぇ」などと洩らしたのだ。

 

まるで世間話でもするように

こんな事を言う阿闍梨・・・。

 

そのせいで、激しく動揺した一条

御息所は夕霧の真の気持ちを確かめる

事も叶わぬまま、誤解の苦しみの中で

病状が悪化して絶命に至るのだ。

 

阿闍梨といえば、僧侶の中でも

かなり高い位を持つ僧だというのに

何という口の軽さであろうか。

 

 

 

~浮舟生存の秘密~

 

ラストは浮舟。

 

薫と匂宮との愛に悩み果て、

死を決意して宇治川に身を投じた

彼女だったが、運が良いのか悪いのか

一命を取りとめてしまった。

 

しかしもう二度と俗世に戻りたくない

彼女は、横川の僧都に懇願し出家を

実行する。

 

そして彼女は小野の里で、ひっそりと

余生を暮らしてゆくつもりであった。

 

が!

 

こともあろうにこの横川の僧都が

明石中宮のところに出向いた際、

「素性の知れない若い女人を

助けて、出家の手伝いをした」

などと喋ってしまったから大変!

 

明石の中宮からこの話を聞いた薫は

浮舟生存の事実を知る事となり、

どうにかしてまたヨリを戻そうと

必死に食い下がるのだ。

 

 

ちょっと!

まーた坊さんかよッ!ムカムカ

 

どいつもこいつも余計な事ばっかり

しやがって。

何でみんなこうも口が軽いんだ?

まったく守秘義務も何も

あったもんじゃない。

 

 

 

当時、お坊さんというのは

最高の知識階級であった。

 

識字率も極端に低く、一部の

貴族のみが教養を手にしていた時代、

経典を読んだり加持祈祷が出来る

僧侶いうのは大変なエリートだった。

 

それゆえ人々は、高位のお坊さんの

する事に間違いは無いと信じて

いたのだろう。

 

物語の中でも、僧侶たちの口の

軽さを咎めるような様子は無い。

 

 

たしかに、これらの「秘密」が

ずっとバレなければ物語としても

面白くないだろう。

 

しかし秘密の重大性を考えるに、

果たして誰の口ならば問題なく

暴露出来るだろうか?となると

 

それはきっとお坊さんが

一番の適役だったのだろう

と推理する。

 

「お坊さんの口から言われた事

ならしょうがないわよね」と

読者を納得させられた時代

だったのかな?と思う。

 

 

 

しかし現代なら間違いなく

クソ坊主!」と罵られる

事であろうニヤニヤ