歯に衣(きぬ)着せぬ女房たち | 前世はきっと平安貴族

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歴史大好き!とりわけ平安時代をこよなく愛する私です。
こんなに惹かれる理由はきっと前世で生きていたからにちがいない。
源氏物語ネタをメインに、色々思っている事を書いてゆきます。あらすじとか一切書かずに自分の思いだけを強引に綴ってゆきますので悪しからず〜。

前回の「インタビューの部屋」で、

六条御息所を真に追い詰めたのは

お付きの女房たちだったのかも?

という事を書いた。

 

 

実際この時代、女房というのは

頼りにもなるが逆に害になる存在

でもあったのだ。

 

 

女房たちの仕事としては

 

 

身の回りの世話

 

・高貴な女人は

 1人で衣装を着ることも

 できないので、衣装の着脱の

 お手伝い。

 

・女主人の長~い髪を櫛でとかし、

 お手入れをする。

 

・「あれ取って」「これ取って」と

 言われた際にサッと動く。

(この場合、言われる前に動くのが

 本当は望ましい)

 

・その他とにかくお世話に関する

 事はひととおり。

 (なかには用を足した後の

 「おまる」の処理なども

 あったが、これは女房ではなく

 樋洗童(ひすましわらわ)という

 身分の低い少女の担当だった。

 

 

恋文の代筆

 

・殿方から恋文が来た場合、

 すぐに本人が返事を書くのは

 はしたない事とされていた。

 よって、最初のうちは

 女房が代筆をして、勿体ぶる。

 そうして女主人の価値を高めて

 いたのだ。

 

 

退屈させないように気配り

 

・本を読んで聞かせたり、

 絵の解説をしたり、貝合わせや

 香合わせ、囲碁の相手などで

 女主人を楽しませた。

 

・世間で起こっている最新の

 情報や噂話を聞かせる

(ここ後で重要だから覚えておいて!)

 

 

来客の応対

 

・身分の高い人のもとには

 おのれの利益を求めて

 さまざまな人間がやって来る。

 その人たちを失礼の無いように

 取り次ぐ役目をした。

 

 

 

無論、この他にも多岐に渡って

女房の仕事はあったであろう。

 

このように、頼りになるのが

女房という存在だったのだ。

 

 

だったのだ。

 

 

 

・・・だったのだ

 

 

が!

 

 

その反面、女房というのは

なかなか厄介なもので、

時として裏目に出る場合も

あったようだ。

 

 

おかしな男の手引き

 

・女房と男が結託して

 女主人との逢瀬を用意

 する事も少なくなかったようだ。

(源氏物語では藤壺と源氏、

 女三宮と柏木の密通が例)

 

 

仕えている女主人の目の前で

ズケズケと物を言う

 

これよ!

今回一番言いたいのはこの事!

 

 

人の事をあれこれ言うのって

正直ちょっと楽しいわよね?

 

でもさすがに本人のいる所では

言わないのが当たり前でしょ?


ところがこの時代の女房には

そんなマナーは存在しなかった

のだとか。

 

 

例えば自分の仕えている女主人の

家が落ち目になったりすると、

 

「あ~あ、もうこの家も駄目ね」

「早く次の就職先を探さなくちゃ」

 

みたいな事を平然と言うんだって。

 

 

 

これは一体どうした事なのか?

 

 

私なりに考えてみたのだけど

 

・そもそもこの時代は道徳教育が

 されていなかったので、

 言って良い事と悪い事の区別が

 ついていなかった。

 

という事はありそうだ。

 

 

それともうひとつ

 

・女主人のそば近くに侍る女房は

 ある程度身分の高い家の出身なので

 気位も高く、人に気を遣うという

 思考やふるまいに欠けていた。

 

という可能性もありそうだ。

 

 

藤原道長は自身の娘が後宮に

入るに当たって、家柄の良い姫君を

娘の女房にスカウトして、娘の

格上げをはかったそうだ。

 

なので、実際はな~んにも

役に立たないお姫様女房が

近くにいたのかもしれない。

 

 

 

さて、

源氏物語では、明石の上が

我が愛娘を断腸の思いで

紫の上に預ける場面がある。

 

その明石の上から預かった姫君に、

出るはずのない自分のお乳を

そっと含ませる紫の上に対して

女房はあろうことに、

 

 

「どうせならこちらの奥様にお子が

出来たら良うございましたのに」

などと言うのだ。

 

 

何たる無神経!

何たる無礼者!

 

子に恵まれなかった紫の上に

対する思いやりの気持ちなど

全く感じられない。

 


しかしおそらく女房に悪気は

ないのだろう。

 

「私だけはあなたの気持ちを

よ~く分かっているのよ」

 

と、逆に誰よりも味方である

つもりでいるのだ。

 

自分の発した言葉がどれほど

相手の傷口を深め、神経を逆撫で

しているかに気づかない鈍感さ。

 

このような勘違い人間は

現代にもいる。

 

 

 

何で言わせておくの?

 

で、何でこんな女房たちを

のさばらせておくのだろうか?

 

言われっぱなしじゃなくて、

女主人も「何よその態度は!」

なんてピシャリと教育してやれば

いいのに、と思うのだが

どうやら

ひたすらじっと

耐えていたようなふしがある。

 

もし私だったら、即解雇するわぃ!

 

 

 

いやしかし、まてよ・・・

 

 

ただでさえ噂好きの女房たち。

もしも「ちょっといい加減にしてよ」

などと反論しようものなら、その後

どれだけ陰で炎上するか分かった

ものではない。

 

「あそこの女主人にこんな事

 言われたわ!」

「あんな性格だから男にも

 ふられるのよ」

「あ~こうなったらもう全部暴露

 しちゃう!」

 

 

狭いせまい貴族社会、良からぬ噂は

あっという間に広まるだろう。

 

 

挙句の果てに事実とは全く異なる

スキャンダルだけが一人歩きして

取り返しのつかない事態に

発展するのだ。

 

 

そのデメリットの大きさを考えたら

何も言わない事が一番の賢明策なのだ。

 

 

なんかこれって、現代の有名人が

抱えている苦労とそっくりだ。

 

 

六条御息所も、さぞかし女房の

面と向かっての失礼な暴言には

苦しめられた事だろう。

 

 

そうは言っても、女房がいなければ

何も出来ない高貴な身の上・・・

やはりじっと耐えるしかなく、

そのストレスの矛先はひたすら

源氏ひとりに向けられ、やがて

彼女は生霊と化すまでになった。

 

 

な~んて想像しております。

 

 

女房って便利でもあり

案外面倒臭いものだったのよ、

というお話バイバイ