今の仕事を始めて早いもので20年近くになる。
私の仕事は忙しい。そして,起こる事件は大体解決できずに塩漬けになっていく。でも,仕事について,自分なりのこだわりを持っている。それは,次も自分に依頼したいと思ってくれるかどうか,今風に言うとCX(カスタマーエクスペリエンス)を大事にしたいということだ。
前にも書いたけれど,仕事でお金をもらっている以上,それが誰かの喜びにつながらなければそこに価値はない。そもそも私は理系大学出身なのに法律関連の部門にいるという異色の経歴だ。でも最近感じるのは,法律や契約書は人間社会のプログラムみたいなものだ。起こりうることを想定して,原則と例外処理を記載していく。どこまで想定外を織り込むかは,そのプログラムを作る思想のようなものだ。ただ,このプログラム,簡単にはデバッグできないし,バグが起こったときには取り返しがつかないことが結構ある。一方,ガバガバな契約書でも何も起こらないこともざらにある。
仕事を進める中で,中途半端な知識で,自領域に注文を付けてくる人と仕事をするのはやりにくい。もちろん,見落としなどもあるから,建設的な意見をいただくのは歓迎すべきことなのだが,説明しても妙なところに固執する人がいる。逆に私は,研究開発部門や生産現場に対して,中途半端な知識で意見しようとは思わないし,疑問に思ったときにはその課題がきちんと見えるまで質問をすることにしている。それが相手への気づきにつながるのであれば,それは仕事として成功だ。餅は餅屋の言葉通り,それぞれの領域をきちんと全うすることこそがプロの仕事だし,それを信頼できないとよいチームは生まれない。
それから,いい大人なのに,人にいろいろなことを決めてもらおうと思っている人と仕事をするのも嫌だ。判断は責任が伴うし孤独なものだ。ただ,判断ができるようになるために,いろいろな知識を広げていく必要があるし,専門家のチームに助けてもらうことこそあれ,判断を他人任せにするなんて自分に能力がない,と言っているようなものだ。こういう人に限って,物事が失敗したときに真っ先に責任を追及してきたりするのだ。
もう今の仕事を始めて20年近くになる。天職だとも思うけれど,ちょっと忙しすぎる。今一度,自分の歩みを振り返る機会を作りたいと思う。