【完全版】パスタで学ぶパラドックス『ザ・フラッシュ』 | 映画のデス・ロード

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【2023年6/27追記あり 完全版】


まずはこれを聞いてほしい!



これは1980年公開の『フラッシュ・ゴードン』のテーマ曲。

QUEENのフレディ・マーキュリーが高らかに歌うのは主人公フラッシュ・ゴードンの勇姿。


「フラッシュ! アア~! 世界(ユニバース)を救う者!!」


曲の話から始めてしまいましたが、今回ご紹介するのは別のフラッシュ


DCコミックス原作の、現行実写化作品最新作にしてDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の最終作?  『ザ・フラッシュ』です。



作品は違えど本作も『フラッシュ・ゴードンのテーマ』を爆音で流したくなるような快作でしたよ!


ベン・アフレック演じる根暗な金持ちバットマン/ブルース・ウェインを中心に、異星人スーパーマン、頼れる姉貴ワンダーウーマン、さかなクンことアクアマン、半人半メカのサイボーグからなるヒーローチーム、ジャスティス・リーグの一員であるフラッシュことバリー・アレン。


光(フラッシュ)の速さで移動できるパワーを持って、今日も赤ちゃんから看護師さん、セラピードッグまで、人命救助に励んでいた。


そんな中、獄中の父親の最高裁判決の時が刻一刻と迫っていた。


というのも、バリーが子供の頃、父親がパスタ用のトマト缶を買いに行った隙に空き巣に入られ、母親が刺殺されてしまい、父親がその濡れ衣を着せられて裁判中だった。

監視カメラの映像も、顔がはっきりと映らないため、証拠不十分とされ、投獄待ったなし状態。


見ず知らずのひ人々はスーパーパワーで救えても、たったひとりの大切な父親を救えないなんて……と、失意のドン底のまま気晴らしにブワーっと走っていたらなんと光の速さを越え、時間の壁を越えてタイムトラベルしてしまったのだ!


そうだこのパワーであの日に戻ってトマト缶を買いに行かせずに済ませれば……と、過去改変を実行!


しかし、こういう行為がことごとく悪い方向へ進むのがアメコミのお約束。


元の時間に戻る途中に謎の黒い影にぶん殴られてそこから追い出されてしまったバリー。


行き着いたのは2013年。


過去改変により幸せそうに暮らす母親と父親と、束の間の、そして何よりも求めていた再会の時を過ごすバリー。


だがそこにはその時間軸を生きる18歳のバリーに遭遇してしまう!


『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にもあったように過去の自分と会ったらパラドックスが起きてしまう!




そしてバリーは忘れていた。

DCEU内の2013年の悲劇を。



そう、ゾッド将軍が攻めてきた年だ!!


この脅威に唯一立ち向かえるスーパーマンを探さなきゃ!


えっ!? いないの!?


それじゃあ頼れるのはバットマン/ブルース・ウェインだ!


あれ!? 僕の知ってるベンアフのウェインさんじゃない!?

てか誰このおじさん!?


大切な人を救いたいという純粋な気持ちが、別の時間軸、別のユニバースを誕生させてしまった!

このままじゃ全ての時間軸がぐちゃぐちゃになって全ユニバースが崩壊する!?


この危機を救うには2人のバリー/フラッシュが協力せねば!


走れ! フラッシュ!

ユニバースを救うんだ!




というわけで、タイムトラベルあり、マルチバース展開あり、過去作とバリバリ繋がりありと、かなり複雑な作りになっているのですが、それでもきちんとわかりやすくかつ何より面白くできているのがすごい。


なんといっても別ユニバースのバットマン(演ずるはマイケル・キートン!)が本作のキーアイテム、パスタを使ってタイムトラベルとマルチバースの仕組みを解説するシーンは、目から鱗のわかりやすい説明でした。


1本のパスタのような時間軸のどこか、つまり過去のある一点を変えればそれに応じて未来が変わる。


かと思ったら、その一点を基準に、パスタを交差させるように、過去も変更され、新たな時間軸を持つ世界線が誕生してしまう。


バリーが謎の影に押し出されたことで交差したパスタは折れ、時間軸が破壊されてしまう。


それが何度も続くと、まっすぐ1本だった時間軸はまるで茹で上がったパスタのように互いが絡み合いぐちゃぐちゃに。


そうなると訪れる未来はただひとつ。


トマトソースがベチャッとかかってパスタの完成!


ではなくて


全マルチバースの崩壊だ!


『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でさえ、(解説者が博士であるにせよ)パラドックスについて黒板にチョークでかきかきして説明していたのに、今回はタイムトラベルとパラドックスの仕組みだけでなく、おいしいトマトソースパスタの作り方も勉強できる一石二鳥の解説でした。




⚠️注意⚠️

ここからネタバレ!




ラスト、「映像の世紀~DC実写作品編~」ともいうべき、DC映像化の歴史の総まとめかつ、各々のユニバースの衝突シーン。


ジョージ・リーブス版、クリストファー・リーブ版のスーパーマン、はたまたスーパーガール、さらにさらにビッグサプライズとして、企画が頓挫してしまったニコラス・ケイジ版スーパーマンも登場。


バットマンからはアダム・ウェスト版、さらにはラスト、ジョージ・クルーニーまで出てくるという供給過剰な状況。


これだけでも超ウルトラスーパー豪華なのはわかる。十分わかる。


だけど!


どうせならクリスチャン・ベールのバットマンa.k.aダークナイトや、ロバート・パティンソンヴァル・キルマーのバットマンも出してほしかった!


欲張りなことを言っているのはわかるが、(映像の完成度がどうあれ)結局CGでやっているんだったらカメオ出演全部盛りにしてほしかったなぁ~なんて思っちゃうのがファンの性ってやつですよ。


ちなみに僕は実写では『バットマン フォーエヴァー』が1番好きです。バットマン最高傑作は『レゴ バットマン ザ・ムービー』だと思っています。




とはいえ、ヒーロー活躍シーンでそれぞれのカッコいいテーマ曲をババーンと流すのも潔いし、何よりアガるのでよかったです。


昨今の"リアルなヒーロー像""神話的なヒーロー"を意識しすぎたせいか、ベタな演出過ぎるからみんな照れちゃっているのか、最近そういう演出はなかなかやってくれないんですが(昔の仮面ライダーとかはやってくれる)、DCEUだけでなく、マイケル・キートンバットマンが頑張ったら「パパパパ~パン!」と、ダニー・エルフマンのあのテーマが流れてもう感動しました。



かと思えば、誰もが経験する「愛する大切な人を亡くす」という喪失と、そこからの立ち直りの物語が、この映画の芯として1本通っているので、単なるオールスタームービーやヒーローの大活躍するマンガ映画という枠にとどまらない、だ泣ける大傑作だったと思います。


入場者特典のステッカー。


ここからジェームズ・ガンを筆頭に、新生DCユニバースが始まるようですが、大丈夫かしら?


ラストでベンアフからジョージ・クルーニーにバットマンがバトンタッチするというかなりハチャメチャなオチをやったけど、この先どうなるの!?


まぁ、続編とか無いからって言ってた『ジョーカー』に続編が製作されているし、なんでもアリか!


そういや今回、キートンバットマンがレジェンド級にカッコいいのはもちろんとして、ベンアフバットマンもこれまでのDCEUシリーズで1番クールでよかったと思います。

というのも、まだ日の照っている時間、ってか真っ昼間に戦うバットマンがなんか新鮮でしたね。

それも、紺のマスク&マントにグレーのボディスーツという、コミックと同じ配色のアーマーだったのもよかったし、バット飛行機から出るバット三輪車(前2輪、後ろ1輪のバイク)も、そこからバットマシンガンで攻撃したり、バットマキビシを発射したりするシーンもカッコよかったと思います。

マントで炎を突っ切って空を飛び、装甲車を追跡するシーンとかもよかったですね。

それにブルース・ウェインのときのバリーとの会話。
「過去があるから今があるんだ」って話も、これで見納めかもしれないベンアフバットマンの別れの言葉としてよかったし、「ママの名前が同じで仲直りってなんだよ!」って思ったこともあったりしたけど、実は自分が思っていたよりベンアフバットマンが好きだったのかもしれないな……なんて思ったりもしました。


近所のゲーセンにいた腕の脱臼したベンアフバットマン。

片手でケーブルを、もう片手にファルコーネのバカ息子を掴んでいたらそりゃ腕も脱臼するわ。
来てくれてありがとう! ワンダーウーマン!

2回目観たのでもらえた、入場者特典のキートンバットマンシール。

2回目観て気づいたのが、ベンアフもキートンも、バリーとの別れの言葉が「今日は無理だ。また今度な」といった同じ言葉だったのが、住んでるユニバースが違うし、過ごした時間の長さも違うけど、同じバットマンとしてバリーと友情を築いていたんだろうなぁ……と思って、泣けました。

去り際までクールに決めるニクい男だぜ!
夜の巷をコスプレで徘徊する変質者だなんてもう誰も思わないよ!